第187話第二回公式イベント・collapsing kingdomその18

「《影槍・一式》」


影でできた槍を老人に向けて投擲してから駆ける……鋭利な糸を手繰り寄せ、彼の踏み込みを制限しつつ、次の手を用意します。


「ふん! ​──ぬっ?!」


飛来する槍を上段からの振り下ろしで弾こうとしますが、直前で黒煙を噴き出しながらバラけ、円状に細かく別れた槍を殺到させます。

同時に彼の目線で極小規模の爆発しか起こさない火薬玉を投げ、意識と視界を一瞬だけ逸らしつつ『隠密』スキルを発動します。


「《影槍・二式》」


更に敵の足下から槍衾を大量に生やす事で、足を貫きその場に縫い付ける……直ぐに《一式》は黒煙と共に散らされ、《二式》も横薙ぎの一閃で全てをへし折られますが構いせん。


「《致命の一撃》」


この世界に来て初めての殺人でチュートリアルおじさん相手に使用した『不意打ち』……それを乗せた『始まりの街』で司教を仕留めた《致命の一撃》を使用します。

どちらも『隠密』スキルによって相手が私を直前まで見失っている状態ですので、効果が最大限に引き出されているそれを放つ。


「《流水流転》」


「《影槍・三式》」


パリィスキルである《流水流転》によって《致命の一撃》が逸らされるのを防ぐため、上空から半円状に槍が降り注ぐ《三式》によって対象を逸らす。

狙った通りに敵のスキルは私の短刀ではなく、上空の槍を防ぐ為に軌道修正をします。


「《ゴルゴーンの贄》」


こちらの《致命の一撃》が決まる直前​​​──全身を自ら石化させる事で、私の短刀による首への突きを見事に防がれます。……こんな防御スキルもあるのですね?


「《怪刀乱魔》」


さらに追撃としてデタラメな……恐らく範囲攻撃スキルと思われる攻撃を放って来ますが、全身を石化させた弊害か、先ほどよりも動きが鈍いので回避は少しだけですが容易ですね。

ついでに効くかどうかは分かりませんが、攻撃を避けながら《酸性雨》を放ちましょう……石や銅なら割と効果あると思うのですが、どうでしょう?


「小賢しい! 《龍爪河川》!」


「ふっ!」


……なるほど、石化状態の相手に酸性の攻撃は割と効果があるようですね? 今度からは石化毒からの強酸の組み合わせも使えそうですね。

っと、そんな事を考えている暇はなさそうですね、敵の強烈な上段からの振り下ろし……その連撃を《身躱し脚》の補助を受けつつ避けながら、相手の攻撃によって刻まれた斬撃痕に火薬玉を忍ばせます。


「《龍牙​──」


「ほいっ」


「​──ぬおっ?!」


更なる攻撃スキルを発動しようとした敵対して手榴弾を放り投げ、強烈な爆発と同時に強毒、強酸、粘液等が降り注ぐ……これで残り三つですね。


「……『隠密』」


「……チッ!」


爆発光と爆煙によって相手からの視線が遮られたのと同時に『隠密』スキルを再度発動し、敵の認識外へと出ます。

……ふふ、工夫次第で戦闘中でもローグ系統のスキルも使えますね。


「ペッ! 地を這うフナムシが……んぐっ」


口から毒の影響か、ドス黒い血を吐き捨てながら懐から取り出した……恐らくポーションの類を飲んだ途端に石化が解除されると同時に顔色も心做しか良くなりましたね。……邪魔ですし、盗みますか。


「《予告状》」


「ぬ? ……ほう? まぁ敵の回復手段を奪うのは常套よな」


これから私は三分以内に敵から指定した物を奪わないとペナルティとして、暫くの拘束の状態異常によってAGIが半減します……が、成功すれば敵のMPを何%か減らせます。

……恐らく、犯人を捕まえられなくて意気消沈する警官みたいな感じなのでしょう。運営の遊び心ですね。


「シっ!」


「そこかァ!」


「『隠密』」


「チィッ!」


火薬玉を糸で括り付けたナイフを投擲……それを追い越すスピードで敵の懐に手を伸ばしますが、石化の解除された本来の超スピードと超反応によって失敗に終わります。

ですが彼の目の前でナイフが​──正確にはそれに括り付けられた火薬玉が起爆して敵の視界を奪い、つかさず『隠密』スキルで隠れます。


「なにやら孫におちょくられている気分だわい」


「そうですか?」


「あぁ​──そこじゃ!」


「ぐぅっ!」


おかしいですね? 『歌唱』スキルと『詐称』スキルによって反対方向から私の声が聞こえたはずですのに……普通に対応されてしまいした。

しかも女の子のお腹を強打するなんて……この世界の男性は容赦がないですね? 三田さんが即座に回復してくれたので良いですけれど。


「次はどんな煙か? 他の色もあったりするのか​──」


「《フラッシュ》」


「​──なにやら楽しくなってきたわい」


私の手元を注視していたようですので、そのまま自分の手を起点として『光魔術』の《フラッシュ》を三田さんに使用して貰います。

相手の視線をそれで遮ったら『隠密』スキルを発動し、周囲に張り巡らせた糸を掴んで飛び上がりつつ、上空へと退避します。


「《反響》」


「……煩いのぉ」


今度はこれでどうでしょう? 糸の一部に括り付けておいた鈴を鳴らし、それをスキルを用いる事で他の周囲の糸を介してこの空間の全域に響き渡らせます。

これで小さな足音や物音一つを拾う事も困難でしょう……さらに『消音』スキルも発動させます。


「目の前に居るはずなのに認識できんとは……年甲斐もなくワクワクしてきおる」


「私も楽しいですよ? ……まぁ聞こえてないでしょうけど」


ほぼ意味の無い返事を返しつつ短刀を口に加え、左手に手榴弾、右手に毒針を持ち、上からどんな手にも対応してみせる頼もしい老人耐久性のある玩具を見下ろします。

……いけませんね、口が緩んでいるようです。どうしてもニヤけてしまいます。


「ふふっ……ふぉれはふぉうへふかこれはどうですか?」


相手の返事も待たずにその場から飛び降ります。


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