第180話第二回公式イベント・collapsing kingdomその12
「おいクソ女、一つ質問いいか?」
「? なんです?」
ポン子さんに二人で乗り、王都を目指して進んでいたところでハンネスさんに声を掛けられます。なにか不審な点でもあったのでしょうか? ……轢き殺せる大きさの敵なら手間はかからないのですが。
「……この後ろに引き連れてる奴らはなんだ?」
口元を引き攣らせたハンネスさんが肩越しに親指で指し示した先には、優しいエレンさんがわざわざ用意してくれていた領兵達が規則正しく……とまではいきませんが並んで歩いています。……訓練期間が一年もありませんでしたからね、練度の程はお察しですし、強さもバラつきがありますので野戦等は無理でしょうね。
「それ、私も気になってました……」
ふむ……確か蘭花、さん? でしたね。彼女もこの領兵達が気になっていた様子ですね。……なぜそんなに怯えた表情なのかは知りませんが。
「彼らはゲリラ兵です」
「「……は?」」
「? 何をそんなに驚いているのですか?」
そんな間抜け面を晒しているのはあなた達二人だけですよ? ヒンヌー教祖さんはどうやらマリアさんの知り合いらしく、先ほどから熱心に遠くの彼女に語り掛けていますし、タピオカマンさんは一人残ったリリィさんを案じている……演技をしていますし。
「ゲリラ兵とか言われてもさっぱりなんですが……」
「? あの領兵達は訓練期間もろくに取れていませんでしたし、練度もバラバラですので野戦には耐えられません」
「あ、そうなんですね……(ボソッ」
数も少ないですし、バカ正直に仮にも大国である『エルマーニュ王国』の国軍や各諸侯軍とぶつけても無駄に人的資源を消費するだけです。……せっかくエレンさんがわざわざ気を利かせて、事前に用意してくれていたというのに……そんな使い方では勿体ないです。
「なので彼らには王都中に散って貰って、好き勝手に暴れて貰った方が良いです……中には元マフィアの構成員だった方も多いですし」
まとまった組織行動が出来ないのであれば、させなければ良いのです。……まぁ、そう上手くいくとは思いませんが、目くらましと肉壁にさえ成ってくれれば良いのです。
「……まぁ理解は出来たけどよ、少ないと言っても千人近くは居るだろ? どう見ても城壁の上から丸見えで、王都の中まで入れるとは思えねぇぞ?」
「……確かに」
ため息をつき、肩を竦めながら呆れたように疑問点を口にするハンネスさんに蘭花さんが同意するように頷きます。……まぁ確かにそうですね、このまま無策に進軍するだけでは確かにすぐ様捕捉され、十分な時間のもと野戦や坊城戦の準備を整えられてしまうでしょう。
「その点は問題ありませんよ」
「……どうやって上から丸見えな状態で、千人近くも王都に侵入させるんだよ?」
「強行突破は……さすがにジェノ──レーナさん一人ならともかく、千人一緒には無理ですよね」
まるで私が詐欺師とでも言うかのように胡散臭そうな目でこちらを見るハンネスさんに、『そこまで変な事を言ったでしょうか?』と首傾げますが……まぁ何かを言いかけた蘭花さんも、よく分からないみたいですね。
「そうですね、上から丸見えなのはどうしようもないですね」
「……だったらどうすんだって言うんだよ?」
「えぇ、ですから──」
純然たる事実を認めつつ、さらに怪訝な顔をするハンネスさんに微笑みながら──目を逸らされてしまいましたね……まぁ良いです、そのまま指を上空へと指し示します。
「──さらに上から行けば良いんですよ」
「…………馬鹿じゃねぇの?」
「わ、わぁ〜……ジェノサイダーって本当にこういう人なんですね〜……」
ハンネスさんも小声で失礼な事を言いますね? 私は少なくとも学ぶ事や、理解する事を放棄していませんので馬鹿ではありませんよ……何故か諦観の表情を浮かべている蘭花さんといい、本当に──
「──あぁ! もうすぐ……もうすぐでございます! 我が愛しの母マリア様! 護るべき幼子であるマリア様! 頼れる年長であるマリア様! そして──崇めるべき平野部の象徴であらせられるマリア様ッ!!」
「「……」」
──ヒンヌー教祖さん、少し五月蝿いです。
▼▼▼▼▼▼▼
「さて、と……このイベントをさらに面白可笑しくする為に動こうかな?」
玲奈ちゃん達が『エルマーニュ王国』方面へと出発して少し経った時刻……周囲に人も居ないため、一時的にロールプレイを解除し、残っていた仕事を全て片付けた後に席を立つ。
「ほんのちょっとだけ工作してから、〝留守番を言いつけられるけども、最終的に親友の事が心配で言っても立っても居られなくなって駆け出すTS娘〟の
ハンネスくんはブチ切れそうだけど、玲奈ちゃんならむしろ喜びそうだし良いでしょ、多分……まぁ許してくれなかったとしても別に僕が楽しければそれで問題ないけどね?
「僕は優しいお兄さんだからね、ヒンヌー教祖くんにも優しく目的を達成する方法だって教えてあげたくらいだし」
傍から見たらゲスい顔をしている自覚はありつつも、それを隠す事も矯正する事もせずに『ベルゼンストック市』に向けてスキップしながら向かう。……こういうアホっぽい仕草って、TS娘っぽいよね?
▼▼▼▼▼▼▼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます