第172話第二回公式イベント・collapsing kingdomその4

「フッ!」


「がひゅっ?!」


右手で毒針を投擲して道を塞ぐ衛兵の眼球を貫きながら、飛来する投擲ナイフを左手に逆手に持つ短刀で弾いてすぐ側まで接近していた方の喉へと飛ばします。


「絶対に通すな! メイルリー伯爵をお守りしろ!」


「……今は国王だ!」


「……そうだった!」


独立したばかりの国が多いので仕方がないのかも知れませんが、滑稽なコントを目の前でされるのは御遠慮願いたいですね……そのまま彼らの首を刎ねてしまいます。


「ひ、ヒィイ!!」


「あ、こら! 逃げるな!」


首を刎ねた衛兵二人の死体の腰から剣を抜き去り、逃亡を図った方の後頭部と、後方からこちらを狙い撃とうとしていた弓兵へと投げ飛ばします。……大声を上げて逃げても、良い的になるだけですのに不思議ですね?


「た、助けてくれぇ!」


「ちょっとお静かに」


「モガっ?!」


糸で縛って引き摺っていた大臣が少し騒がしいので背後から迫っていた短剣使いの腕を切断し、それを口に突っ込んでおきましょう。あぁ吐き出してはダメですよ? ちゃんと口に含んでてくださいね。


「……化け物め」


「……聞き飽きました」


上段から振り下ろされる長剣を左手に持つ短刀で受け流しながら右手で《貫手》を発動し、相手の喉を貫きながら途中で指を曲げて、首の内側に引っ掛けながら掌で顎を支えるように掴み、左手の指の間に取り出した火薬玉を鎧の隙間に放り込んでから投槍の要領で後衛に投げ付けます。


「……オノレェ! 戦いの作法も知らん野蛮人がぁ!」


「? そのような条約とかありましたっけ?」


なにやら少しばかり理解出来ない理由で憤っていますが……所詮『紳士協定』でしかない『宣戦布告』は行ったのですから、どう戦闘を行おうが良いと思うのですが? ……ユウさんなら色々と知ってますかね? いや、エレンさんの方が詳しそうですね、国王ですし。


「……まぁ今はいいですか」


とりあえず怒りん坊さんの目を引き裂き、蹲ったところで顎を蹴り上げて後方から流れてくる矢の盾にしてから、だらしなく開いた口に爆薬を詰め込んでから回し蹴りで後方に蹴飛ばしましょう。……そもそも戦っている相手の目の前で立ち止まり、悠長に怒るなど……どういう意図があるのでょう?


「あ、あぁ……」


「おや、先ほどの爆発で生き残りですか」


ふむ……どうやら戦いの作法がどうのと言っていた方が自分の身体を丸める事で爆発の威力を抑え、他のタンク職が身を呈して他の仲間を庇った……というところですかね? 作法の人は他にもスキルを使ってそうですね、次からは気を付けましょう。


「まぁいいです、ではさっさと死んで──なんのつもりですかハンネスさん?」


「……殺す必要はない」


お目当ての国王を担いで来たハンネスさんが振り上げた短刀を斧で弾きます……仕事が早いのは構わないのですが、早速足を引っ張って来ましたか……。


「俺らの目的は要人を借りる事だろ?」


「えぇ、それと所属する陣営らしい行動……ですね?」


そう考えれば私の行動も、私の行動を止めるハンネスさんも間違ってはいませんね……同じペアになってしまったので、この衝突は確定されていた事です……少し遅いくらいでしたね。


「あぁ、まったくもってその通りだ……だからよ」


「……?」


そこでハンネスさんが不敵な笑みを浮かべます、悪戯好きでヤンチャな男の子みたいな表情をする彼ですが……何か面白い事でも思い付いたのでしょうか?


「ここから先は殺人禁止な」


「……何を言うかと思えば」


「まぁ最後まで聞けって」


殺人禁止など、こちらが一方的に割りを食うだけだと思うのですが? ……ですがまぁ、最後まで聞けと言うのなら聞きましょう。


「俺が禁止するのは殺人だけだ・・・・・


「……あぁなるほど、そういう事ですか」


殺さずに所属する陣営らしい行いを、という事ですか……それであるならば、私から殺人を防いだ形になるハンネスさんも、相手で薬品の実験などが出来る私もそれぞれが所属する陣営らしい行いを出来ますね。


「まさか出来ないとか言わないよな?」


「まさか、そちらこそ力み過ぎて殺さないようにして下さいね?」


「あぁ、『約束』だからな?」


「えぇ、『約束』です」


薄ら笑いを浮かべるハンネスさんと指切りをします。




「あぁ、『約束』だからな?」


「えぇ、『約束』です」


目の前の薄ら笑いを浮かべるレーナと指切りをする……確かに殺人だけ・・・・を禁止すれば俺もコイツも、どちらもが所属する陣営らしい行動を取れる……とでも思っているのか? 殺人を見過ごしても、惨たらしい拷問などを見過ごしても本質的には一緒で、何も変わりはしない……ぜってぇ邪魔してやんよ。


「『約束』、ちゃんと守ってくださいね?」


「あぁ、もちろんだ」


コイツは中学時代から『約束』を破った事はねぇ……なんの信条かは知らねぇが、今回はそれを利用させて貰う。このイベント中は不殺を貫く奴の『遊び』さえ邪魔すれば良い──




「『約束』、ちゃんと守ってくださいね?」


「あぁ、もちろんだ」


──とか思っていそうですね? 『約束』をしたからには殺しは致しませんが、それはNPCに限った話・・・・・・・・です……ハンネスさんが私の『遊び』の邪魔をすると言うのなら……躊躇はしませんよ?


「指切りです」


「指切りだな」


ハンネスさんの邪魔を掻い潜りながら『遊ぶ』方法なんて幾らでもありますし、むしろこういうのを縛りプレイと言うのでしょう? むしろ少し楽しみなくらいですよ……そしてなによりも、邪魔をするハンネスさんと『遊ぶ』事が一番嬉しいです、今回のイベントではペアになってしまいましたからね──




「指切りです」


「指切りだな」


──とかコイツの事だから思ってんだろうな……コイツの意識を全部……とまでは行かなくとも、その殆どを俺に向けさせる事で、さらなる被害を抑える。……殺人の禁止だけで安心し、放っておいたらコイツは何をしでかすかまったく見当も付けられん。……だからまぁ、良く言えば自己犠牲の精神、悪く言えば詐欺だ、これは。……でもコイツも薄々こちらの思惑に気付いてて乗って来やがるし、俺は悪くねぇ。お互いに利がある提案だし、誰も悲しまない。……だからよ──


ふふ、楽しく乗って差しなりますね上げます?」


あぁ、楽しく後悔すなりそうだんなよ


──一緒に『遊んで』やるから、ちったぁ元気出せよ?


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