第168話第二回公式イベント開催その2
『やぁやぁ皆! ……………………主任だよ?』
『主任、真面目にお願いします』
イベント開始のアナウンスに誘われて『始まりの街』の噴水広場に出て来れば、もう既にたくさんのプレイヤーの皆さんが集まって来ていますね……UIからでも見れるようですが、上空には愉快な主任さんと真面目な秘書さんが映し出されています。
『いいじゃんいいじゃん! 久しぶりの公式イベントだよ? 一部プレイヤーが我慢できなくて、プレイヤーイベント開催してたみたいだけど』
『良いから早く説明してください』
相変わらず主任さんは陽気な方の様ですね、でもまぁ秘書さんの言うように早く説明しませんとプレイヤーの皆さんが暴動を起こすかも知れませんね。
『ノリが悪くて僕は悲しいよ……まぁいいや!』
『……』
『じゃあプレイヤーの皆はメニューから公式イベントの欄をタップしてね!』
言われた通りにしますと、なにやら色々と出てきましたね……これは質問事項、でしょうか? たくさんありますが、どう関係してくるのでしょう?
『ペア決めに必要だからね? ではじゃんじゃんいっくよー! 所属する国は?』
なるほど、ペア分けとかに使うんですか……とりあえずこれは『新興・バーレンス王国』ですね。……ふふ、『国主:エレン・バーレンス』って書いてありますね?
『次! 所属する陣営と得意な武器は?』
これは……私が自分で選んだ訳ではなく、勝手にAIが判定した結果ですが混沌ですね……武器は短剣カテゴリーの短刀が主な武装になります。
『さらに次! 好きな色と属性は?』
色は黒と紫と赤が好きですね……むむっ、一つまでですか、では黒で……属性は魔術の事ですかね? これは炎ですね、燃やせますし。
『そしてそしてぇ! 好きな食べ物は?』
好きな食べ物ですか……母の手料理とか書いてもダメでしょうし、普通に味噌汁とかにしますかね?
『ち〜な〜み〜に〜? あなたの年齢は?』
年齢はキャラメイクの時に入力したと思いますが……まぁ良いです、高校一年生の十六歳です。
『忘れちゃいけない! 今日の下着の色は?』
…………本当にイベントに関係あるんですかね? 困惑する周囲のプレイヤーの様子を見るに、これ男女関係なく同じ質問をしているようですね……とりあえず黒で。
『身長は? 好きなアニメある?』
…………とりあえず百六十一センチで、好きなアニメは……そうですね、適当にユウさんとマリアさんオススメの『魔法少女マジカル☆リリナ』で入力しましょう。
『てかどこ住み? ラ〇ンやってる?』
「『……』」
…………ここで図らずとも一斉に、周囲のプレイヤーの皆さんとまったく同時に上空を……そこに映し出されるニヤニヤとした顔の主任さんを見上げてしまいます。
『おっほん、ちなみにだけど──』
『はぁ……』
主任さんの後ろで頭に手を当て、深くため息をつく秘書さんの姿に薄々察しはついていますが……一先ず最後まで聞こうではありませんか。
『──今までの質問に意味なんてないよーだ! プププ、皆の必死になって質問の意図を考えようとする顔は最高だったよ!』
「『──』」
『てか告知にペア決めにカルマ値とかは一切考慮されないって書いてたじゃーん!』
…………凄いですね、自分で意識すること無く〝多数派〟……『普通』と同じ感情や意見を持った事なんて初めてではないでしょうか? 確認せずとも恐らくプレイヤーの皆さんは同じ気持ちでしょう……この主任を──
『はい! じゃあ第二回公式イベント──開催ッ!!』
「『──殺す』」
そんな不意の異口同音と共に視界が白く塗り潰されます。
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《あと二十秒でペアをマッチングします》
さて、公式イベントの欄に追加されている説明文
読むに……この白い空間でペアを決めてから、またそれぞれが所属を選んだ国の首都に飛ばされるようですね。
「『バーレンス王国』を選んだプレイヤーの人数は……やはり少ないですね」
一番新しい国なせいなのか一番下の欄にありましたし、どんな国なのかもまったく情報がない所に所属するよりも『エルマーニュ王国』や『ブルフォワー二帝国』のような大国に所属した方が確実ですからね。
《あと五秒でペアをマッチングします》
もうそろそろですね、『バーレンス王国』を選んだプレイヤーの人数は三桁にも届きませんが……その中でどんな方とマッチングするのでしょう? 所属している国のプレイヤーの名前が見れないのが残念でなりませんね。
《あと二秒でペアをマッチングします》
まぁどんな方がペアの相手でもやる事は変わりません、楽しければそれで良いです……邪魔なら殺されないような所で縛って放置していれば良いんですから……そんな事を考えながら目の前に現れる人型の発光体を眺めて、さてどんな方が来たのかと──
「──お前かよッ!!」
「ふふ、ハンネスさんでしたか」
どうやら私のペアはハンネスさんのようですね、嬉しいのですが……しかし残念ですね。ペア同士では殺し合いは出来ません。
「……なんでよりにもよってお前なんだよ」
「さぁ? 上位陣は所属する陣営らしいプレイを出来ないように足を引っ張り合うマッチングがされたのでは?」
「…………あのふざけた主任ならやりそうだな」
特に混沌と秩序の上位同士なら確実にお互いの行動の足を引っ張り合うでしょうしね……多分同じ面子ばかりが報酬を独占しないためのバランス調整の一環ではないでしょうか?
「ともかく、これからよろしくお願いしますね?」
「……なったもんは仕方ねぇしな」
顔を顰めながらも本当に渋々といった様子で頷くハンネスさんを見て、そんなに私とペアを組むのが嫌だったのかと思案します……だとしたら、少しだけ悲しいですね。
「ん」
「? なんですか?」
「握手だよ! 握手! ……これからよろしくな」
「……あぁ、これからよろしくお願いします」
……別に、嫌われている訳ではないようですね? それはなによりです。これからハンネスさんと一緒にイベントを楽しむ訳ですが、どうなりますかね?
「良いか? 俺の目の黒い内は好き勝手させねぇからな?」
「ふふ、全力で足を引っ張ってごらんなさい」
「けっ! よく言うぜ……」
所属する陣営らしいプレイを、ですものね? 私もハンネスさんの邪魔を振り切って好き勝手させて貰いますから、そのつもりでお願いしますね?
《プレイエリアへと戻ります》
そんな表示と共にまた視界が白く染まり始めます。一々転移するのは少しだけ面倒ですが……処理の関係上、これが一番楽なのでしょう。
「では──」
「じゃあ──」
そのまま薄れていくハンネスさんの手を握りながら、笑顔を浮かべて……暫く相棒になる乱暴者に──
「「──
──挨拶します。
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