第132話宝物殿
「……着いてしまいましたね」
あれから山田さん達と平和的かつ賑やかに会話を楽しみつつ敵MOBを鎧袖一触で薙ぎ払って進んでいると宝物殿へと続く鍵の掛けられた扉に行き当たってしまいました……まだ合体ロボットさんをテイムしていないと言うのに。
「まぁ後でゆっくりと探しましょう」
もしかしたらユウさんの言っていたレアMOBでしたか? というものに会えるかも知れませんし、それが私のお眼鏡にかなう合体ロボットさんの可能性もありますからね。
「……結構SFチックですね」
宝物殿の鍵を使って扉を開ければ何を測るためなのかわからない測定器らしき物や配管や配線の束、明るく明滅するモニターばかりですね? 一度文明が滅んだあとのファンタジー世界という設定なのでしょうか、現代とは少し似ているようで技術様式が違う気もしますね。
『侵入者に告ぐ、これよ──攻撃は許可されていない』
部屋の真ん中に雑に放置されていた金属や機械の廃棄された山だと思っていた物がいきなり動き出して喋ったものですから、即座に大太刀を振り抜き抜刀術にて攻撃したのですが弾かれてしまいましたし注意されてしまいました……釈然としません。
『この場に於いて力とは知である、知なき者に力を振るう権利はない』
「……謎解き、ですかね?」
謎を解かねば先には進めないみたいなギミックですかね、ステータスのゴリ押しだけでは詰まらないという運営の意図が透けて見えますがマンネリ予防に良いでしょう……別に珍しい訳ではありませんし。
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クエストNo.00521
ユニーククエスト:古代頭脳の問い掛け
依頼者:オールマイティ・ゴーレム
依頼内容:暇を持て余した古代の兵器のランダムに出題される問い掛けを一問解くごとに攻撃が可能となる。彼を満足させるか撃破せよ。
報酬:宝物殿の宝
注意:ユニーククエストはその成否に関わらず一人につき一回までしか受注出来ず、受け直す事も何度も受ける事も出来ません。
受注しますか? Yes / No
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あぁなるほど、それで攻撃が弾かれたのですね……一体どんな不思議な力でと野暮な事は聞かないでおいてあげましょう、この前マリアさんに見せられた運営の生放送の切り取りで『ある女性プレイヤーに泣かされている』とか言っていましたからね。とりあえずYesを押しておきます。
『では第一問。白パンと黒パンを合わせて総額百十G。白パンは 黒パンよりも百G高い。では、黒パンの値段は?』
「五Gですね」
『正解で──まだ言い終わっておらん』
答えを言うのと同時に真っ二つに切り裂きますがやはり生物ではないので死にませんね、他に動力部があるのでしょうか……少なくともちゃんとAIが備わっていて感情とかはあるようですね、こちらを非難するような目線を感じます。
『第二問。ある日、午前中に雪が降り始めた。雪はつねに一定のペースで降る。除雪車が正午ぴったりに動き出し、一時間で二マイルの除雪を完了し、さらに一時間で一マイルの除雪を完了した。雪はいつ降り始めた?』
「午前の十一時二十三分」
『正解で──まだ言い終わっておらん』
仕方ないじゃないですか現役高校生に微分積分を使えば簡単に解けてしまうような問題を出すそちらが悪いのですよ、もっと古代頭脳らしい難問を期待していたのですが……まぁさすがにゲームバランスの問題でしょうかね? ちょっとしたミニゲームだと思えば良いですか。
『第三問。ある──なにをしている?』
「思ったよりも謎解きが詰まらないので」
『古代頭脳の問い掛け』という大袈裟なタイトルを付けておいて蓋を開けてみればこの程度ですからね……なのでとりあえずオールマイティ・ゴーレム以外のモニターなどを破壊してみましょう。
『警告。直ちにその蛮行を辞めよ』
「あなた自身には攻撃できなくとも他は大丈夫みたいですね、そして──」
『──ッ?!』
そのまま振り返ってオールマイティ・ゴーレムさんの左腕と思われるパーツを切り飛ばします……驚愕に目元のライトを点滅させ絶句している彼に『これがユウさんの言っていた裏技ですか』と納得します。
『……なぜ腕が切り飛ばされた?』
「それは私が攻撃したからです、こんな風に」
再度彼に大太刀を振りかぶり、その胴体を上下に寸断します……説明文には『ランダムに出題される問い掛け』とありましたからね、彼の疑問や質問にちゃんと嘘偽りなく答えれば良いだけです……多分これが正攻法だと思いますけどね、人によっては絶対にクリアできないクエストになってしまいますから。
『なぜお前が攻撃できる?』
「それがルールだからです」
剥き出しになった彼の内部に大太刀を突き込み掻き回すようにして内部をズタズタにします、激しくスパークしながらのたうち回る彼の頭だと思われる場所を踏み付け
「さて……私の軍門に降りますか?」
『……了』
彼がボスではなく量産型でしたので《テイム》を発動すれば私が望む
「……なんですか、それ」
『私はここから動くことが出来ない、テイムされたのはこの個体だ』
そう言って渡されたのは手のひらサイズのキューブですね、看破すればこれもオールマイティ・ゴーレムみたいです。どうやら別の個体が他のプレイヤーの相手をするのではなく、私の相手を別の個体がするようですね……まぁ従魔になった途端に『問い掛けに答えなければダメージを受けない』みたいな能力が無くなられても不自然ですから仕方ありませんけれど。
「はぁ、謎解きといいコレといい……あなたにはガッカリです」
『……』
まぁゲームですから偶にはこういう面白くない部分があっても仕方ありませんけれど……これはないですよね、多分運営の方もゲームバランスに苦心したんでしょうけど慣れない事なら手を出さなければ良いと思いますが……後はこのオールマイティ・ゴーレムさんの性能次第ですかね。
「では、さようなら──」
『……』
「──永遠に」
『ッ?!』
そのまま仕込んで置いた爆薬を一斉に起爆させながらその場を王太子の死体から剥ぎ取っておいた『転移の羽』で退避します……確か最後に本拠地として設定していたのはムーンライト・ファミリーの支部にあるエレンさんの執務室近くでしたかね、本拠地に設定している場所に即座に飛べるのは良いのですが量産できませんかね?
『……二度と来るな』
転移する直前に爆音と一緒にそのような言葉を聞き流しながら私の身体はエフェクトの光に包まれてその場から消えます。
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