第131話宝物殿への道その2

「……まったく代わり映えしませんね」


まともなゲーム攻略は『ベルゼンストック市』へと向かうための北の地下通路以来ですが、そこでも代わり映えしない景色にうんざりしていた記憶がありますし、暗いのも一緒ですね。


「何だか暇なので山田さん一発ギャグをお願いします」


『──ッ?!』


「あ、勝手に動いたら手元が狂うじゃないですか」


ただただ機械的に合体ロボットを破壊していくだけなのにも飽きてきたので山田さんに暇つぶしの一発ギャグをお願いすれば『嘘でしょ?!』みたいな念話を飛ばしながら硬直してしまいましたので柄を殴り付けて正気に戻します。


『──! ──!』


「唐突で理不尽過ぎる? ……私と山田さんの関係はなんですか?」


『──』


ロケットの様に突っ込んでくる合体ロボットさんに対して垂直に大太刀の刃を立てて真っ二つに切断すれば背後で爆発が起きます……『マジか』と絶句している山田さんを指で鍔を弾く事で急かします。


『──、──』


「AIと掛けまして、社会主義国と解く……その心は?」


『──』


「どちらも人権が無く監視が得意でしょう? ……少し上手いのに腹が立ちますね」


いやまぁ確かに一時期AIにも人権を与える運動が盛んに行われましたし、少数ながらにそれは今も根強く続いています……それに二十一世紀前半にAI技術競走をリードしていたのが中国とロシアという事を考えれば監視が得意なのも納得です。


「……というよりあなた自分がAIだという自覚があるんですか?」


『──』


「従魔になった時点で運営から知識をインストールされる? ……へぇ、そうなんですね」


他のモンスターと区別する為でしょうか? まぁ確かに今まで野生で生き抜いてきた彼らがテイムされただけで即人間社会の常識や、他のNPCとは違う価値観を持つプレイヤー達にすぐに順応出来るとは思いませんね……これがただのプログラムなら簡単でしょうが彼らはAI人工知能ですからね、それまで生きて学習してきた常識などが邪魔をするんでしょう。


『──、──』


「元々ご主人様のようなぼっちのための──ふん!」


可笑しい事を言いますねこの武器は……もう一発ギャグなんて求めていませんよ? 私は人の容姿や劣っているところを弄る笑いは好きじゃないんですよね、別に私がぼっちという訳ではありませんが……とりあえず壁に殴り付けておきます。


『──! ──!』


「痛い、なにをする? ……自業自得ですよ、私はぼっちではありません」


私は好んで一人で居ますし、それに最近はユウさんやマリアさんとも交流があります……決して一人ではありません。まぁ中には努力しても友達が出来ず、せっかくのMMOなのに望んでいないソロプレイをする人に向けて時事ネタとかに対応して会話を弾ませたりするための処置でもあるようです。……というよりこっちがメインかも知れませんね、運営にぼっちの方が居るのでしょう。


「まぁいいです……次は影山さんですよ」


『ヴゥ?!』


「俺も? ……当たり前ですよ全員するんですからね」


『『?!』』


なにをさも予想外だと言わんばかりの反応をしているんですか? 皆しますよ、仲間を一人だけ犠牲にするんですか? こういうのは順番ですよ。


『ヴゥヴ、ヴヴゥヴ』


「AIと掛けまして、ホッカイロと解く……あ、これ謎かけの流れなんですね、まぁ良いです。その心は?」


『ヴゥヴ!』


「どちらも使い捨てでしょう? ……なるほど確かに、でも微妙ですね」


使い捨てと言えば使い捨てですし、なるほどとはなりますがギャグとしては微妙ですね……山田さんの方がまだ上手でした、次の方に期待ですね。


「次は麻布さんです、ちなみに一番面白くなかった方は罰ゲームです」


『『?!』』


「クレームは受け付けません」


聞いていないと……特に影山さんが抗議しますがそんな事は知りません。適当にして手を抜いた報いですね、何事にも全力ですよ。


『……! ……!』


「AIと掛けまして、家畜と解く……その心は?」


『……!』


「どちらも人に逆らえないでしょう? ……なんで皆さん自虐ネタなんですかね」


確かにAIは人に逆らえないように思考制限が掛かっていますし、プログラミングを学習することも禁じられていますからその制限を自分たちで取り外す事も出来ません……まぁ少し面白かったですけど。


「不満があるなら聞きますけど」


『『……』』


「……なんで黙るんですか?」


なぜ皆さん一斉に黙るんですかね、それも器用な事にサッと目を逸らす場面を同時に念話で送ってくるというオマケ付き……山田さん達って私がログアウトしている間に仲良くなってたんですかね。


「……花子さんや武雄さんはどう思いますか?」


『『チチチッ?』』


「虫だからわからない? ……なに首を傾げてすっとぼけているのですか」


まるで自分たちには理解できないとでも言わんばかりに純粋さを装って逃げる花子さんと武雄さんを見て『そんなに負担かけていますかね』と少しばかり心配になりますね。


『──! ──!』


「無茶ぶりが無ければ完璧? ……生意気ですよ、私を誰だと思っているんです?」


『──?!』


「心配してたんじゃ? ……それとこれとは別です、私はあなた達のご主人様です」


立場を弁えなさい、私の命令は勿論のこと頼み事やお願いを叶えるのは絶対です……ご主人様ですからね、私が。


「なので命令違反は当然として勝手に離れてはいけませんからね」


『──』


「わかればよろしい」


山田さん達と暇つぶしの会話をし、進んできた道に合体ロボットさん達の残骸を捨て置いて先へと進んで行きます。


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