第130話宝物殿への道

「……結構暗いですね?」


堂々と城の地下の宝物殿まで徒歩で来ましたが……『暗視』スキルがあっても結構キツイ暗さですね、これは光が無いどころか何らかの作用によって射し込む光という光を吸収しているのではと勘繰ってしまうほどですね。


「うーん、まぁ何とかなりますかね?」


王城へと続く背後を振り返り、これまでの道中邪魔してきた兵士さんたちの死体から流れる血と陽光が出入口から漏れ出ているのを確認しますが……ある程度進んだところでピッタリと光が途切れているのが面白いですね、帰りにまた観察するとして先へと進みます。


『ピガガガガガガガ』


「……ここの敵はゴーレムですか」


まぁ割と古く、この様な暗すぎて人間の視界では活動が困難なこの場所を警備するのには最適なのでしょうが……困りましたね、井上さんの膂力に任せてぶん殴って破壊するのでも良いのですが短刀では相性が悪すぎます。


「……仕方ありません──『神気憑依・影山さん』」


まぁ暗いですから影は豊富にありますし、途中で陽光などに照らされる心配もありません。影山さんを憑依させるのに最適な環境と言えるでしょう、『神気憑依』スキルが活きてきますね……そのまま短刀に影を纏わせ大太刀を創り出します、ハンネスさんと絶対不可侵領域エルサレムさんの二人と楽しく『遊んだ』時以来ですね。


『ピガガガ──ガガガガ』


「おや? ……あぁ、生物ではありませんでしたね」


首……と思われる場所を刎ね飛ばしたのにも関わらず、即座に動き出すゴーレムに首を傾げますが……そういえば生物では無かったのだと思い至り、そのまま独力では動けないくらいに細切れに寸断すれば活動を停止してくれました、念の為に関節は全て切り落としています。


「……割と手間が掛かりますね」


今まではほとんどが人間が相手でしたし、彼らは急所を突けば大体一撃で終わらせる事が出来ましたから余計にそう感じられますね、何か良いスキルなどで補えないものでしょうか?


「これは……良さそうですね?」


スキルポイントはまだ余っていますので新しく取得できる中でこの状況にマッチするスキルを探していると『看破』スキルの派生で『弱所看破』スキルという物があったのでこれを取得します。どうやら相手の弱点をなんとなく把握できたり、色が着いたりするようですね。


『『ピガガガガガガガ』』


「……まぁまだ低レベルですからね、こんなものですか」


スキルを取得してから先へと進めば丁度良く敵が道を塞ぎ、今度は三体ものゴーレムが現れましたので早速『弱所看破』スキルを使いますが……見事にバラバラの部位を指し示していますね、まだ低レベルなので仕方ありませんが使っていく内にレベルが上がれば解消されますかね?


「とりあえず壊しましょう」


振るわれる腕を肘裏から切断し、返す刀で脳天から胴体の半ばまで切り裂けばスパークを放ちながらショートします……このゴーレムは岩で出来た人形というよりロボットみたいな感じですかね? この宝物殿への道のりも余り人の出入りも無いようですし古代遺跡の上に王城を建てたとかそんな歴史がありそうですね、後でユウさんに教えてあげましょう。王太子をさっさと殺してしまったのは失敗だったかも知れませんね、ここの情報を搾り取っておけば良かったです。


「……む?」


『ピガー! ピガー!』


『ピーガガガ!』


胴体を半ばまで引き裂いたゴーレムにさらに大太刀を突き込む事で後方のゴーレムの中心を貫き、そのまま振り上げる事で断ち切りますが……スパークを放ちながらも彼らは自らの形を組み換えながら他の仲間たちと繋がっていきますが、これはもしや……?


「……変形に合体もするのですか、ますますロボットですね」


私割とこういう合体ロボットとか大好きなんですよね、自分でもほんの少し口角が上がり目が輝いているのが判ります……好き過ぎてつい人間でも組み換えたり、繋ぎ合わせたりと試してしまうんですよね、人間はまた違った趣があって良いのですけれど。


「まぁ、壊すんですけどね」


『ピガガ──』


合体ロボットは壊れるまでが合体ロボットですからね、母もよく『最後は壊れなきゃ合体ロボットじゃない!』と興奮しながら膝の上に乗せた私に教えてくれたものです。合体ロボットとはまずはそれぞれの特色を活かして単体で戦いますが大抵はそれでは勝てず、満を持して合体します……この時『最初から全力出せよ』とか言ってはいけません、その後に苦戦して処々損壊するべし……というのが母の持論でしたね。


「……手頃な合体ロボ──ゴーレムでもテイムしますかね」


そうですね、そうしましょう。手頃な合体ロボット……ではなくてゴーレムをテイムしましょう、中々に面白そうですし、それで『遊べば』母も喜ぶでしょう……いえ、羨ましがって涙ぐむでしょうか?


「そうと決まれば良さげな合体ロボットを探しましょう」


合体ロボットの残骸を解体して素材を剥ぎ取った後は探索を再開しつつ、お眼鏡にかなう合体ロボットを探して宝物殿への道を彷徨います……どうか良い出会いを、と期待しながら。


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