第129話忘れ物

「さて、この後はどうしましょうか?」


「がぁっ?!」


次の公式イベントまでまだ大分時間がありますからね、その間に自身の強化を図ったりだとか色々とありますが……それよりも次はどう『遊ぼう』かばかり考えてしまいます。


「ぐぅっ!!」


はぁ……帝都での絶対不可侵領域エルサレムさんとハンネスさんとの『遊び』は最高でしたからね、しばらくはこれを超えるものは出てこないのではないのでしょうか? 未だに余韻に浸れる最高の時間でした。


「……フゥー! ……フゥー!」


このまま次のエリアを攻略して新たな『遊び場』を開拓するか……それとも今現在なにやら面白そうな事になっている元帝国の領土で『遊び』尽くすか……悩ましいですね。


「アァァァアア?!!」


なにやら戦争中に帝都が破壊され、皇城も損壊した帝国の国力が落ちたと見て片手の指では足りない数の国と地域が独立を宣言したみたいなんですよね……それでも王国と後に引けなくなっていた帝国は講和など出来ず、二正面どころではなく戦線を抱える事になってしまって……そう考えるととても面白そうですね?


殿下・・はどう思いますか?」


「ふぅー! ふぅー! ……化け物に語る口などっ?!」


ちょっとムカついてしまいましたので殿下の足の親指の爪郭をバナナの皮のように剥いてしまいます。縛られて身動きが出来ない状態では口だけでしか抵抗できないとは言え……女性に向かって化け物は無いと思うんですよね。


「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!」


「うっ臭い……失禁してしまいましたか……」


こんなところまでリアルに描写というか再現しなくても良いと思うんですけど……まぁそれだとリアルな、肌で感じるような『遊び』が出来なくなるので考えものです……バランスが難しいですね。


「げほっ、ごほっ……フェーラを救い出した渡り人が手を引いたと言っていたが?」


「? そうですね、王女様からは手を引きましたよ?」


「……私を殺せば彼女を庇護する者がァっ?!」


とりあえず手慰みに足の踝にどれほど待ち針が刺せるのか挑戦しながら殿下との会話を続けます……やはり男性の方と話すのは慣れませんし、それだけだと退屈してしまいますからね。


「まぁそうですね、伝え聞く限りはこの国の第二王子が王女様を庇護するとは思えませんね」


「そぅ、だ……奴は確実に妹をッ! ふぅ……ふぅ……殺すだろう……ッ!」


七本、八本、九本……結構刺せますね? これは本当の針山みたくなるのではないしょうか? でも……うーん、人間の踝で出来た針山なんて必要ありませんし適当なところで切り落としますか。


「それがどうしたと言うんです? 私関係ありますか?」


「……だから彼女から手を引いた──きょっ?!」


なぜ私が王女様から手を引いた事と殿下で『遊ぶ』ことが結びつくのでしょう? まったく関係がないと思うのですが……もしや『普通』は結びつくものなのでしょうか? とりあえず彼の踝を半分に裂いてから片方だけ切り落とします。


「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!」


「うーん、涙と鼻水に失禁と……大分見苦しいですね」


上を向いて絶叫を上げながら涙と鼻水、はては涎まで出るがままに垂れ流しその股間からは鼻につく刺激臭の液体を漏らすその様はとても一国の王太子には見えませんね。


「はぁ……はぁ……フェーラから手を引いたのなら見逃せ! 彼女を諦めたのなら──」


「──だから私は関係ありませんって」


「ぎゃぁぁあ??!!!」


先ほどから冤罪を擦り付けてくる彼の下唇に余った待ち針を横に沿うように刺します……私はこれでもちゃんと『約束』は守るんですよ? 一度手を引くと言ったら引くのです、それをいつまでも……まるでこちらが『約束』を反故にしたかのように詰るなど心外です。


「私は王女様に手は出しませんよ?」


「も、もう止めてくれ……!!」


「私の関知しない場所で勝手に死んだり生きたりするのは別にどうでも良いです」


王太子の耳を畳んでからそれを待ち針で貫く事で固定しながら彼の疑問に答えます……もう王女様には関わっていないのですから、勝手に死んだところでそれは私の責任ではありません。


「や、止めろ……まだ帝国と講和すら出来ていないんだ……」


「それにですね──」


「今ここで私が死ねば彼女だけでなくこの国まで危うい!」


それに私が直接手を出していないからセーフ……などとくだらない屁理屈を捏ねている訳でもないんですよ? 私は『……とは言っていない』などという不誠実を『約束』の場では絶対に持ち込みません。


「──あなたは最初から殺すつもりでしたよ?」


「あぁ、神よ……」


元々私が王都に出向いたのは目の前で逃げた王太子であるあなたを追うためでしたからね? 何を勘違いしていたのかは知りませんが、そもそもあなたの方が先約・・だったんですよ?


「大丈夫です、今度はちゃんと護衛の方も一緒です」


一度その場を離れこの部屋に入る時に邪魔をした門兵と彼の近くに侍っていた護衛の近衛騎士の死体の近くに寄ってからそれらの首を切り離して持ち運び、倒れ込む王太子の顔の横に並べていきます。


「……れ……に…………め…………ね」


「? なんです? 遺言があるのなら聞きます──」


「──災いあれ! 混沌神に股を開いた売女め! その身を引き裂く苦痛に苛まれながら死ね!」


「……」


あまりの言い様に兵士だった者の首から目玉をくり抜く手を止めます……売女? 股を開く? まぁ罵倒されるのは慣れていますし、彼らからしたら私は敵なので仕方はないのですが……。


「……私はあの男と違って貞操観念は緩くありません」


「黙れ混沌の使者めぇ! お前が! お前がァ! お前が私の目の前に現れてから全てが滅茶苦茶だ!!」


貞潔な乙女に向かってなんて言い草をするのでしょう、私はこれまで男性と交わったことなんて一度も無いと言うのに……まぁまだ高校生なので当たり前と言えば当たり前ですが。


「絶対に許しはしな──」


「──ここまで壊れるともう用済みですね、お疲れ様でした」


ただただこちらを罵倒したり叫んだりするだけの詰まらない反応しか返さなくなった王太子の首をそのまま落とします……とりあえず忘れ物・・・は回収できたので良しとしましょう。


「……おや?」


王太子から何かドロップしましたね、これは……何処かの鍵でしょうか? 重要NPCからのドロップはアレクセイさんやロノウェさん、メイドさんの物から結構役に立つことが判っていますから有難く貰っておきましょう。


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ユニークアイテム

名称:王城地下・宝物殿の鍵

※譲渡不可※


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へぇ……面白そうですね? さっさと行って攻略してから次の『遊び場』を探しましょうかね?


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