第120話パワー・ゲームその6
「何をするつもりなのかは知りませんが」
「けっ! 後で泣いても知らねぇぞ?」
さてさて? いったいどんな事をして私を楽しませてくれるのか楽しみですね。そんな会話をしつつ横から突っ込んで大剣を横薙ぎに振るってくるエルさんを姿勢を低くして攻撃を躱しながら胴を大太刀で薙ぎ払います。
「本当に硬いですね……」
「よしっ! レーナさんと王女を殺してトントン、君たちを殺したあとは両国の軍隊を殺してトントンだ」
「……イカレ野郎が」
どうやらエルさんはカルマ値を調整する目処が立ったようですね、こちらもそろそろ全員を殺し切ってしまいましょう。
「《写し影絵》」
大太刀の柄の先から細い影が伸びて二本目の大太刀を形作ります……背後で細い紐のような影で繋がった二刀流ですね、これで『二刀流』スキルの補正も加わるでしょう。
「また珍妙なスキルだねっと!」
突き込まれた槍を左手に持った大太刀を背負うようにして防ぎつつ回すように払う事で弾きながら後衛の魔術師と神官職の女性達に向かって指に挟んでいた爆薬付きの長針を投擲します。
「うっそぉ、両手塞がってるじゃん……」
「エレノアァ! チェリー!」
前方の剣士を《加速》と《加重》のスキルを乗せた右手の大太刀の薙ぎ払いによってたたらを踏ませ、毒煙玉を置いてそのまま直進……絶対不可侵領域のエルさんに突撃します。
「死になさい」
「君が死んで?」
「お前ら物騒だな……」
左右から迫り来る大剣と斧を逆手に持った両方の大太刀の側面で滑らせながら前進する事で凌ぎ、眉間を狙って飛来する矢を右手の大太刀を逆手から順手に持ち替える動作で打ち払います。
「……お前がジェノサイダーだとは思わなかったよ」
「そうですか? 私も──おや?」
左手に持った大太刀でエルさんの大剣を受け止めたハンネスの胴体を切り離そうとしますが後方から追い付いた槍使いと剣士さんによって槍と長剣で挟み、引っ掛けるようにして止められます。これでは振るえませんね。
「影山さん」
「なっ?!」
「ハンネス! すまん、抜けられた!」
まぁ元々影でできてますからね、一旦大太刀を消し去ってからまた再度出現させる事で妨害から抜け出し、予定通りに大太刀を振るいますが……さすがハンネスさんですね、エルさんの猛攻を凌ぎ切ってこちらに対処までするようです。
「《地ならし》!」
「おっと」
「危ないなぁ」
局所的な地震……の様なものを発生させてこちらの体勢を崩しに来ましたので糸で城の壁へと引っ張って貰って回避します。エルさんはそのまま地面に大剣を突き刺して不動を貫いてますね。
「そろそろか……悪いなレーナ、お前の負けだ」
「? いきなり何を言い出すんですか?」
ハンネスさんに向けて糸を射出し、その上を滑り降りる事で突撃しながらいきなり勝利宣言……なんですかね? をしたハンネスさんに問い掛けます、エルさんも首を傾げて気になっているようですね。
「ハッ! お前エピッククエストの勝利条件忘れたのか?」
「そんなもの──」
「──ハンネス! 王女は無事救出したわよ!」
……………………へぇ? いつの間にか王女様が魔術師と神官職の女性達の手によって助けられていますね? 投擲によって仕留めたと勘違いし、確認を怠った私の落ち度ですね、エルさんと一緒に私を殺す事が目的だと勘違いしたのも悪かったです。
「ざまぁ! 後はこのまま逃げ切れば俺たちの勝ちだ!」
「……ハンネス、ここぞとばかりに」
「今までしてやられてたからねぇ、鬱憤溜まってたんでしょ? 僕も少し気分が良いし?」
「でも少しみっともない」
なるほど、彼らは最初からこれが狙いだったんですね? だから今まで積極的な攻勢に出ずに私とエルさんとの戦闘を利用して目を逸らし続けていたと。
「……ふふ、ふふふふ……あっはっははははは!!!」
私とした事がまんまとやられてしまいましたね! 本当に彼らハンネスさん達は私を楽しませるのがお上手です、これは末永いお付き合いを頼まなければなりませんね!
「はぁ……逃がすと思いますか?」
「誰が逃げるって?」
「ん? 僕も景品盗られて追い掛けようと思ってたんだけど……逃げないの?」
このまま逃げ切ればハンネスさん達の勝ちなのに? では王女様というお荷物を抱えてどうやって私とエルさんを倒すと言うのでしょう?
「言ったろ? てめぇらぶっ倒すって……お前ら王女様は任せたぞ! コイツらは纏めて俺が食い殺す!」
「それはまた……」
「大きく出たね、後輩」
「お前先輩かよ……」
なんともまぁ大胆な宣言ですね? エルさん……九条弥彦さんが先輩だったという事実に驚いているハンネスさんがどうやってこちらを倒すつもりなのか、実に気になりますね。
「花子さん! 武雄さん! 王女様ごと彼らを殺してしまいなさい!」
「あの虫ジェノサイダーのかよ……」
「ケリン、無駄口叩いてないで俺らは護衛だ」
さて、花子さんと武雄さんによるあの数の暴力を以てしてもハンネスさんが抜けただけの彼らのパーティーの進軍速度を遅らせる程度が関の山でしょう、さっさとハンネスさんを殺して──
「──だから行かせねぇよ『抑強扶弱・ONE FOR ALL』」
へぇ……ハンネスさんのスキルの効果でしょうか? いきなりステータスが上昇しましたね、私とエルさんを纏めて斧の一振りで吹き飛ばしてしまいました。
「王女は助けるしお前らは倒す! 『神前宣告・俺は暴虐に屈さず従わず』!」
遥か彼方から飛来してくる雷を纏った矢を弾きながらハンネスさんへと突貫します……左手の大太刀でエルさんの大剣を受け流して逸らしながら、右手の大太刀で首を狙いますが、斧で弾かれます。
「『神前宣告・俺は武器折れ四肢捥げようと諦めず』!」
====================
種族:聖人
名前:ハンネスLv.81《+30》
カルマ値:202《極善》
クラス:
状態:
HERO《混沌に属する者に対する与ダメージ上昇:極大》
ONE FOR ALL《護るべき対象と救うべき対象が多いほど全ステータス上昇:最大75%》
神前宣告:不屈英雄《STR上昇:極大・VIT上昇:極大・混沌に属する者に対する与ダメージ上昇:極大・誰かを護る時全ステータス上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》
====================
ははぁ、これはこれは……完全に正義の味方ですね? しかも強化のされ方や私に対する与ダメージがエグい事になってそうです。
「……お前ら覚悟しろよ?」
「なるほどねぇ……『神前宣告・僕はそれを受け入れる』」
おや、
「『神前宣告・僕はそれを拒絶する』」
====================
種族:超人
名前:絶対不可侵領域Lv.72《+30》
カルマ値:0《不可侵》
クラス:覇王 セカンドクラス:魔元帥 サードクラス:不動王
状態:神気憑依・ルーシェン《STR上昇:極大・VIT上昇:極大》
我が栄光《STR上昇:特大・AGI上昇:特大・混沌陣営を敵に回すごとに攻撃力上昇:極大・秩序陣営を敵に回すごとに攻撃力上昇:極大》
不可侵領域《STR上昇:特大・AGI上昇:特大・混沌陣営を敵に回すごとに素早さ上昇:極大・秩序陣営を敵に回すごとに素早さ上昇:極大》
神前宣告:永世中立《STR上昇:極大・VIT上昇:極大・自身のカルマ値からかけ離れた相手からの被ダメージ減少:極大・自身のカルマ値からかけ離れた相手に対する与ダメージ上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》
====================
「「
「……仕方ありませんね『神前宣告・ここは私の庭であなたは玩具』」
これ、あの不細工な神の前で宣誓しているのかと思うと怖気が走るんですよね……別に今は居ないんですけどなんか嫌です。
「『神前宣告・楯突くな黙りなさい』」
====================
種族:魔人
名前:レーナLv.69《+30》
カルマ値:-321《極悪》
クラス:破滅女王 セカンドクラス:魔王 サードクラス:人間魔薬
状態:神気憑依・影山さん《STR上昇:極大・AGI上昇:極大》
虐殺器官《STR上昇:特大・AGI上昇:特大・人類種に対する与ダメージ上昇:極大・秩序に属する者に対する与ダメージ上昇:極大》
狂騒凶薬《STR上昇:特大・AGI上昇:特大・INT上昇:特大・VIT減少:特大・猛毒状態の時HP回復・猛毒状態:常時HP減少:2%/5s》
神前宣告:極悪令嬢《STR上昇:極大・AGI上昇:極大・人類種に対する与ダメージ:極大・自身よりもカルマ値が上であるほど与ダメージ上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》
====================
「さて、では──」
「そんじゃまぁ──」
「準備も整ったところで──」
右手の大太刀を縦に構えて左手の大太刀を前方へと突き出します。ハンネスさんとエルさんも同じく武器を担ぎ構えましたね。
「「「──死ね」」」
そして三人同時に中心へ向けて駆け出します。
▼▼▼▼▼▼▼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます