第118話パワー・ゲームその4
「影山さん、伸ばしてください」
武器である短刀に影を纏わせてリーチを伸ばし、光を全て吸い込んだブラックホールのような漆黒の大太刀へと変質させます。いい加減短刀で大剣と打ち合うのは大変ですからね、懐に潜り込むまでが難しいです。
「リーチの有利が無くなっちゃった」
「ご心配なく、ちゃんと『刀術』スキルと『太刀術』スキルも取っています」
「抜かり無くて結構」
大太刀を縦に構えて駆け抜け、こちらに弾丸のように突撃してくる
「切れ味すごいね」
「あなたもよくそんな姿で素早く動けますね」
本当は頭から左右に断ち切るつもりだったんですがね……横に倒れるようにして避けながらこちらの左脚を切断されてしまいましたね、全身を鎧に覆われ鉄の塊のような物ですのに意外と素早いです。私が左脚を糸で縫合しながら回復し、彼も左腕をくっつけます。
「っらぁ!」
「シッ!」
彼がこちらを足場である渡り廊下ごと叩き潰す勢いで袈裟斬りに振るう大剣を膝を曲げ、背を反らす事で避けながら腰を捻って縦に構えた大太刀を首目掛けて振るいます。
「『鉄壁要塞』」
「……硬いですね」
首を狙った一撃は彼が防御スキルらしきものを発動したために鎧を浅く傷付けるだけに終わりましたね。反撃を避けるためその場を飛び退き──
「──《雷雷轟轟》」
「がっ?!」
ビックリですね、素早いなんてものじゃない不自然で無理がある挙動で振り返った彼に雷を纏った打撃を貰ってしまい吹き飛ばされてしまいました。動きがまるで機械で人間のそれではありませんでしたね。
「……普通殴り飛ばされながら人の腹を斬る?」
「げほっ、ごほっ……斬る余地があったので」
「本当に最高だね君は」
「あなたも中々楽しいですよ」
大剣を片手に破壊された城の支柱を持ち上げた彼に薄く微笑みながら応答します。これまでどちらも攻撃は与えられていますが決定打に欠けますね、どうもあと一つ変化が欲しいです。
「「──さっさと死ねばいいのに」」
彼が城の支柱を投げてくるのでそれを片っ端から大太刀で斬り捨てていきます。大剣で城を解体する勢いで破壊して、残弾を補給しどんどん投げてくるのを峰で弾き、左右に断ち切りながら城の壁を疾走して登っていきます。
「ふっ!」
「シッ!」
飛んでくる支柱の幾つかを火薬玉を投擲する事で迎撃しながら、それらに紛れてロケットのように跳躍した彼を城の壁を蹴ることで落下し迎え撃ちます。相手と視線が交差し、『絶対殺す』という殺意を乗せて大太刀を──
「──勝手に盛り上がってんじゃねぇメインディッシュ共」
「おや、お久しぶりですハンネスさん」
「知り合い? いきなり危ないなぁ」
横から斧が迫ってきたのですぐさま背後の壁へと糸を伸ばして引き寄せ、回避します。イベント以来ですかね、彼らのパーティーと対峙するのは……どうやらここまで私を追ってきたようです。
「……危ねぇのはてめぇらの頭だろ」
「同感」
「「? ……??」」
「……コイツらマジか」
頭が危ない……先ほどから弓使いがこちらを狙っているという事でしょうか? わざわざ宣言するという事はそれだけ自信があるのでしょうか? とても楽しみですね。
「『身体昇華・不倒大地』『精神支柱・不変蛮勇』『御仏憑依・地天』」
「『身体昇華・完全燃焼』『精神鼓舞・勇猛果敢』『御仏憑依・火天』」
「『身体昇華・流転蒼飆』『自由精神・永久旅路』『御仏憑依・風天』」
「『身体昇華・無貌雷鳴』『精神一極・静謐狙撃』『御仏憑依・帝釈天』」
「《呼応共鳴・慈母献身》《付与全体化》《神聖守護》《神聖攻勢》《リジェネ・エクスヒール》《防疫》」
「《呼応共鳴・火灼憤怒》《付与全体化》《炎熱守護》《炎熱攻勢》《反響詠唱》」
強化付与を重ね掛けしながら連携してくる彼らを
「今度こそてめぇをぶっ倒す!」
「やってみなさい」
「あ、彼女は僕のだから」
「あぁ?! 殺すぞサイコ野郎!」
城の上を走り回りながら間合いを測ります……全身鎧の大剣に斧、長剣使いに槍使い、後方には弓使いに魔術師と神官職……見事に前衛、中衛、後衛とバランスが取れていますね? 三つ巴の様相を呈していますので一度に相手する訳ではありませんが中々大変そうです。
「よく考えてみれば各陣営のトップ揃い踏みだね?」
「……確かにケリンの言う通りだな」
あー、確かにこの前のイベントのランキングとかを加味すればここには秩序、中立、混沌のトップ達が相対している事になりますね? こんな事あるんですね、楽しいです!
「……全員殺します」
「えーと、レーナを殺して王女を殺せばトントンだけど……彼らを殺した場合は……?」
「……ねぇ、もう帰りたいんだけど?」
「……言うな、ケリン」
どう立ち回れば彼ら全員を殺し切れるのか、そんな事をワクワクしながら考えながら、姿勢を低くしてから大太刀を背中に担ぐように両手で構えます。
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