第113話帝都動乱その2

「武雄さんは東、花子さんは西からお願いします」


『『チチチッ!』』


武雄さんチームと花子さんチームにそれぞれ火薬玉と毒煙玉、誘引玉を配備して東西から北を目指して絨毯爆撃をして貰います。外壁の城門上に張り巡らせた糸の結界の最奥部に補給のための火薬玉などを大量に置いてあるので後は勝手にしてくれるでしょう。


「では行きますか!」


これで帝国はたとえ私を殺すなり捕縛するなりして押さえても武雄さんと花子さんをどうにかしない限りは混乱は続き、私一人を狙う意味がなくなりましたね。


「し、消火を急げ──がっ?!」


「援軍を──ぶぇっ?!」


「戦線後退──ぎっ?!」


目につく兵士から先に火薬を取り付けた長針を投擲して頭をぶち抜きながら、貫通した物が爆発する事によって二次被害を生み出す事に成功しましたね、新しい『遊び方』は有用なようですね? 火薬もそこまで入れていないので殺さず、負傷兵に留める事で相手のリソースを削れるのも評価が高いです。


「……ここから届きますかね?」


王城……帝国ですから皇城? 帝城? まぁどちらでも構いませんけどお城に向けてありったけの爆薬を詰め込んだ鉄球を《加速》《回転》《硬化》《増殖》《倍化》を乗せた《流星群》スキルで本気の投擲をします。


「ぬっせいっ!!」


全身のバネを使って思いっ切り振りかぶり、糸の補助も利用して放つ……やや山なりながらも真っ直ぐにお城に向かっていたそれは幾つかは途中で爆発したり、飛距離が足らず落ちてしまったり、あらぬ方向へと向かっていってしまったりしますが概ね予想通りですね。


「……ふふ、さすがに防がれましたか」


お城に着弾する寸前に結界のような物が張られ防がれましたね、皇帝が住む場所ですからそれなりの備えはあるでしょうし予想もしていましたが少しばかり残念ですね……まぁそれによってお城以外に被害が出てますけど。


「それ爆発したら破片なんかが飛散するので、防いだ方が帝都の被害が大きいですよ?」


建物の屋根を飛び移り、隊長や指揮官クラスと見られる兵士さんを糸で捕縛してモンスターの群れに投げ入れながら結界を観察します……どうやら飛散した熱せられた破片や毒ガスなどが帝都、特に貴族街に大量に降り注いだようで、そのあまりの酷い被害につい笑みが溢れます。


「《流星群》というスキル名に似合った実験結果でしたね」


降り注ぐ隕石を爆破すればその破片によってさらなる広範囲に被害が出てしまうように、防いだは良いものの同じような有様ですね。


「武雄さんと花子さんも良い仕事しているみたいですし、どうなりますかね?」


他のプレイヤーの方を見習って私も『戦術知識チート』とやらを試してみましたがどうでしょう? この遅れた文明・文化水準の世界観で『夜間都市空襲』という概念は無かったでしょう? 対空が貧弱過ぎますよ。


「……広場に出ましたね」


さすがに大国の首都だけあってその広場は公園と言った方が良いくらいに広く、しばらく建物はないので飛び降りて進みましょう。


「ママァッー!!」


「だ、誰かぁー!」


公園で憩いのひとときでも過ごしていたのでしょう、まだ逃げ切れていない住民の方々が居られましたが構いません、突っ込みます。


「ママ──ぐぇっ!」


泣いて母親を呼び求めるだけの男の子の襟首を掴んで引き寄せて兵士が放った矢の盾に使い、火薬玉を仕込んでから投げるいつもの黄金パターンをすれば、これまたいつも通りに怒って向かってきてくれます……冷静さを失った相手ほど殺しやすいものはありませんね。


「貴様ァ!」


「このクソアマァ!」


武雄さんと花子さん達の爆撃の重低音をBGMとして作業的に処理していきます……その辺で拾った柱の欠片らしき木片を、兵士さんの斬撃を頭を下げる事で掻い潜りながら、振り切った体勢のままの脇下に殴り付けるようにして刺し貫いて腕を破壊してから首を掴んで引き摺ります。


「仲間を離せ!」


「死ね!」


首を掴んだ兵士を隠れ蓑にして彼らの猛攻を凌ぎながら投擲で背後の神官職と魔術職からヘッドショットで減らしていきます。


「……やはり盾は消耗が早いですね」


「貴様ァ?!」


もうボロボロで使えなくなった盾をその辺に放り投げます……まぁ後衛の処分はだいたい済みましたので大丈夫でしょう、後はなんだか勝手に怒り狂っている前衛担当の兵士さん達を処理するだけですね。


「かひゅっ?!」


「ぶぇっ?!」


「がぼぉっ?!」


すぐ近くにいた兵士の喉を短刀で撫で切り、その背後の兵士さんの下顎を切り落としてからなにやら呪文を唱えようした魔法剣士だと見られる兵士の口に突っ込んで妨害し、背後から突き込まれる槍を横にズレてから掴み取って後押ししてあげればそれは容易に目の前の兵士を貫きます。


「おまっ?!」


「なにしやがる?!」


「……同士討ちしたのはそちらでしょう?」


何を勝手に怒っているのやら……あまりにも可笑しすぎて笑いが漏れてしまうじゃないですか、殺しますよ? 溢れそうになる笑いを堪えながら背後にいる兵士の顔面を肘で殴り、怯んだ彼から槍を奪って周囲を薙ぎ払うようにフルスイングして空間を作り、火薬玉をばら撒きながら棒高跳びのように彼らの後方へと逃れます。


「クソッ! 絶対に逃がすなぁ!」


「生まれてきたことを後悔させて──」


「──《血界》」


彼らのど真ん中で動き回っているうちに張り巡らせた鋼糸を蓮華が蕾から花開く様の逆再生の如く、彼らの関節も身体の向きも何も頓着せずそのまま纏め上げ、ブツ切りにしながら回収します。


「これが本当の赤の広場……なんてね」


…………うーん、自分にダジャレセンスは皆無のようですね! もう二度と言いません! そんな決意をしながら噴水や芝生まで血で赤く染まった公園広場を駆け抜け後にします。


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