第101話邂逅
そろそろ帝国軍も王都に到着するくらいですかね? 当初は一週間だと思っていたのですが、全然来ませんね……あれからユウさんの検証に付き合って準備してとしていたら半月が過ぎてしまいましたし、そろそろ来ても良い頃だと思いますが。
「相変わらず王太子と第二王子は協力できないようですね」
未だに足の引っ張り合いで軍の纏まりがありませんし第一王女の宣戦布告でさらに王都……というより王国全体が混乱していますね、こんなんじゃ直ぐに帝国に呑み込まれちゃいますよ?
「……まぁその時は私が帝国軍を間引けば──」
『──愉しそうだね?』
ここからさらに面白くするにはどうするかと思案していると突然周囲の景色が暗いワインレッド一色になり、背後から幼い女の子の声が聞こえてきます。
「……」
『クフフ、いきなりね、刺してくるなんてね、やっぱりね、面白いね?』
ふむ……私はこの方を振り向きざまに刺し殺そうかと思ったのですがいつの間にか逆さまに宙吊りになっていますね? 私の片足を掴んでいるのは目と鼻と口が不規則に浮いたり沈んだりしている肉塊のようで切り刻んでも抜け出せそうにありませんね……。
「……それで? あなたはどちら様で?」
『私? 私の名前はね、ファニィって言うんだよね、知ってるよね? 何回かね、呼び掛けてたしね』
「……なるほど」
声や名前からして可愛い幼女あたりを想像していたのですが……このおそらく純朴神ファニィと思われる方は全然可愛くありませんね? 全体的に巨大ですが不自然に顔だけ縦に長く全体の四割くらいを占めるでしょう。
『会えてね、嬉しいよね?』
「どうでしょう? 微妙ですね……」
こちらをしゃがんで覗き込み、頬に手を突いて『コテンッ』と音が聞こえてきそうな感じで首を傾げますが……まず全裸の禿だるまですし、瞳は全て艶々とした黒のみで鼻は鷲のように高く、唇はカサカサで前歯が欠けています……はっきり言って不快なほど醜いです、甲高い幼女の声なのがさらに腹立ちますね。
『あのねあのね、私ね、いつもね、あなたのことをね、見てたんだよね?』
「……そうですか」
さて、この状況どうしましょうかね? 神々はどうやらゲームの管理AIも兼務しているみたいですしさすがに殺せないでしょう、少なくとも神を殺すのに現時点のレベルやスキルではダメージすら通らないかも知れませんね。
『特にね、今回のはね、いいよね! 王国とね、もしかしたらね、帝国までね、混沌にね、染められるかもね!』
「……染める?」
なにやら知らないゲームの要素があるらしいですね? 王国と帝国を混沌に染めるとはどういう意味でしょう?
『この調子でね、いけばね、私たちのね、領土がね、増えるよね!』
「あー、会話というより一方的に喋っている感じですね?」
まぁ聞く限り陣取り合戦のような感じでしょうか? これは完全な想像ですが一定の地域の治安などを悪くするか良くするかで特定の陣営に呑み込まれるんでしょうかね?
『あー、今からね、楽しみだね? 君はね、これからね、どうやってね、王国とね、帝国をね、堕とすんだろうね?』
「……さぁ?」
こちらを上から覗き込みながら汚く喉を震わせ笑う……その不快な容姿とは裏腹に響き渡る笑い声は透き通った鈴の音のようで違和感が強烈ですね。
『……すごいね! 君のね、カルマ値がね、マイナス三百をね、下回ってるね! ここまでね、低いね、人の子はね、何百年ぶりだろうね?!』
……あ、本当ですね? 軍隊を壊滅させたりメイドさんを殺したり、王城を襲撃したり宣戦布告したりで忙しくて確認してませんでしたが確かに下回ってますね?
『君にはね、愛しき主神もね、期待しているからね? 加護をね、あげるね?』
「……微妙に嬉しくないですね?」
これが想像通りの小さな女の子であるならばなんとも思わなかったのですが、この不快な見た目の神から加護を貰っても複雑ですね……有用であるならば構いませんが。
『じゃあね、またね、いつもね、見てるからね?』
「……おっと」
いきなり場面が切り替わるようにして元の場所に戻りましたね、一回転して着地をします。
「……もう居ませんね?」
本当に突然現れましたし、会話もせず一方的でしたね……なにかフラグでも立てたんでしょうか?
《カルマ値が下降しました》
《新しく神意宣告スキルを獲得しました》
《新しく神気憑依スキルを獲得しました》
《新しく称号:純朴神の加護を獲得しました》
《新しく称号:汚濁斑の卑神の注目を獲得しました》
《新しく称号:超越者を獲得しました》
《新しく選択可能なクラスがあります》
《一定の条件を満たしたため進化が可能です》
《一定の条件を満たしたため従魔たちの進化が可能です》
……おおう、なんかいっぱい通知が来ましたね? 混沌神に邂逅しただけでカルマ値は下がるのかとか本当に加護を貰ったとかは置いておいてなにやら気になるものが多いですね?
「……あー、なるほど」
これは有用どころじゃありませんね、素晴らしいです感謝しなくては……もっと面白いことができそうで楽しみです。
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