第86話爆発的逃走

さて、王女を担いで逃げますがその前に……。


「メイドさんから遺言です、『元気に健やかに成長されてください』……だそうです」


「っ!」


あらら、さらに泣き始めましたね……うーん、子どもの相手はそんなに上手くないと自分で思うので面倒臭いですね。


「……まぁいいです、行きましょう」


顔を赤くして、涙目になりながらこちらを睨み付けてくる王女を無視して担ぎあげ、そのまま王の執務室から走り抜けます。


「さて、混乱させますよ!」


その一言と共に山田さんたちが城の中で高位魔術を放ちまくり、私も爆薬を周囲にばら撒きます。そこら中に大きな爆発音が響き渡り、壁などをぶち破って色んな部屋へと被害が出る。


「なにごとだ?!」

「急げ!」

「陛下はいずこへ?!」


ここまで騒げばすぐに国王が殺されたことは伝わるでしょうし、ユウさんとマリアさんもこちらに気付くでしょう。


「んー、んん!!」


「少しの間ですから、我慢していてくださいね?」


やはり振動がキツイのか抗議の声を上げる王女を窘めながら、駆け抜けていきます。


「貴様! 止まれ!」

「殿下?!」


途中で遭遇した近衛兵の手足に鋼糸を括りつけ、そのままぶつ切りにして放置しましょう。


「がァァァ?!」

「ぎゃぁあ?!」


時間差で死んでも経験値は入るのか少し気になったのでその実験ですね、合間にステータスを見ながらギリギリレベルアップしないところまでは殺して、調整しながら行きましょう。


「貴様が騒ぎの元凶か?!」

「王女殿下を放せ!」

「ここから一歩も──」


結構な数が一斉に湧いたので特製の爆薬入り鉄球を《流星群》で投擲して吹き飛ばしましょ──


「──久しぶりにやり過ぎましたね」


耳を貫き、身体全体を圧迫するかのような轟音が駆け抜けた後には城の一角が綺麗に吹き飛び、晴れ渡っている大空と向かいの尖塔が見え、瓦礫すら疎らにしかありません。


「……まぁ、丁度いいですかね」


そのまま開けた壁があったところから飛び降りましょうかね。


「舌を噛まないように気を付けてくださいね?」


「っ?! んー! んんーー?!!」


まぁ、口を猿轡しているので大丈夫でしょうが、一応王女に声を掛けておきましょう。


「では飛びますよ!」


「んんー!!」


爆発によって壁や床が吹き飛んだところから一気に跳躍して飛び降り、合間に外壁を蹴ることで落ちる勢いを調節します。次いでに落ちながら周りの外壁や尖塔に向けて爆薬を投擲して、さらなる混乱を呼び寄せましょう。


「……王女のことはいいのでしょうか?」


後続が上から矢の雨を降らせてきたのでそれを防ぎつつ着地しますが……メイドさんが言っていたように後継者争いでもしているのでしょうか? それだとなお都合がいいのでどんどん争ってもらいたいですね。


「とりあえずお返しです」


「っ?! 退避ー!!」


指揮官が気付き、退避を呼びかけるも少し遅いですね。そのまま投げた鉄球は彼らの頭上まで飛んだ後、中身の鉄片を四方に飛ばしながら爆散し、序でに仕込んでいた鋼糸をばら撒き、何人かの近衛兵の身体のどこかを引っ掛けて投げ飛ばします。


「さて、さらに目立ちましょう」


潜入したばかりの頃に寄り道した部屋に第二王子の部屋があり、そこで盗んだ旗を落としていきます。上手くいけば国王の首と王太子の指輪から、さらにお互いに疑心暗鬼になってくれるでしょう。


「……段々増えてきましたね」


城門まで続く前庭を駆け抜けていると、百に届こうかという人数の近衛兵が追いかけてきますね。……ユウさんとマリアさんはなにをしているのでしょうか? 未だに二人からの妨害がありませんが……。


「まぁ、いいです……おや?」


もうすぐというところで目の前の城門の跳ね橋が上がっていってますね? 伝達の早いことで感心です。


「せいっ!」


まぁ、関係ないんですけどね。上がり始めた跳ね橋目掛けて、威力よりも衝撃重視の爆薬を投げ込み、ただの木材になるまで破壊します。


「クソっ! 速すぎる!」


「それではさようなら」


最後に特大の爆薬をこれまた《流星群》で、背後の王城に向けて無差別に二発投げ込みます。


「──」


自分でもビックリするぐらいの身体を叩きつけてくるかのような轟音と衝撃、爆風に身を任せ、さらなる跳躍を以って跳ね橋の向こうの堀まで飛び越え、貴族街の屋敷の上に着地します。


「それではもう少し辛抱して……あら?」


「……」


声をかけようとしたら王女様は気絶しちゃってますね……どこに気絶する要素があったのか謎です。まぁ、持ち運びやすくて便利になったと思えば楽ですね、そのまま王女を背中に糸で縛り付けてから、屋根の上を駆け抜け、逃走を続けます。


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