第30話北の地下通路その5

「ダメだこの人……」


そんな失礼極まりない言葉とともに支援をかけて彼​──ユウさんは下がっていきます。

どれどれ、強化の具合は……と。


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名前:レーナ 性別:女

種族:人間Lv.40

状態:憑依影山さん

付与STR上昇・中

付与VIT上昇・中

付与AGI上昇・中

付与切断強化・中

付与命中率上昇・中

カルマ値:-181《悪》

クラス:暗殺者 セカンドクラス:テイマー


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おお、素晴らしい強化具合じゃないですか。別に無くても構いませんけど時間短縮して損はないですからね、助かります。


「仲間じゃなかったんじゃねぇのかよ?! 」


「……どっちでもいい、彼は敵」


ユウさんに向かってくる矢を弾きながら毒針を投擲、これだけ数がいるのですから一人くらい新作の毒薬を喰らってくれませんかね?

そのまま投擲を続けつつ突撃します。すぐさま前衛が前に出て後衛が下がりますが、関係ありません。

左右から長剣と斧が迫ります。振るわれる長剣を躱し、斧は短刀の柄で下からかち上げから横を通り抜け槍使いに短刀を振るい​──防御の姿勢を取ったところで神官の女の子に鉄片を投擲して頭をぶち抜きます。


「しまっ! 」


驚いた槍使いを他所にすぐさま反転して背後から斧使いと剣士を襲い、ユウさんを襲わせないよう牽制しつつ脇下からまた投擲​──もちろん今度は金属音と共に防がれますが、足止めが目的なので構いません。

重いために構えなおすのに他よりも時間がかかる斧使いを捨て置き、剣士に向かって短刀による突きを放ち、利き手を貫きます。剣道で言う小手ですね。


「ぐぅっ! 」


長剣を落とした剣士の首を刎ね飛ばしてから最初の位置に戻り、《聖壁》と《風壁》を発動してもらいます。


「《爆裂火炎》」


間を置かずして魔術師から放たれた魔術を防ぎ、再度突っ込み斧使いを強襲​──


「そう何度もやられるかぁ!! 《大地律動》!!」


​──強烈なエフェクトを伴い地面に叩き付けられた斧から放射状に地面が陥没し、隆起し、それに足を取られたところに槍が迫ります。


「《旋風三連》!! 」


それを麻布さんと井上さんに引っ張ってもらってから後方に避け、牽制の鉄片と毒針を後衛に複数投げ付けます。


「《炎壁》! 」

「《雷雲剛矢》! 」


魔術で防がれさらに反撃を貰いますが、それをこちらも「《爆炎四刃》」にて打ち落とし、迫る斧を弾き、槍を吹き飛ばしてから斧使いの首へ捩じ込みます。


「がふぅっ?! 」


そのまま首のない胴体を火薬玉を仕込んで後衛に投げ飛ばします。何発か不発に終わりさほどの効果は見込めなくても、牽制にはなります。


「フッ! 」


復活した槍使いの一撃を頭を下げて躱し、短刀の柄で横から殴り付けて体勢を崩します。

すぐさま脇腹に回し蹴りを放ち、すぐ側の壁に打ち付けてから後衛に再突撃します。


「っ! 《熱線》! 」

「《キラーショット》! 」


後衛からの妨害を壁を走ることで回避しながら近づき、すぐさま次の矢を番える弓使いに鉄球を投岩スキルの「《流星》」で頭をぶち抜き、魔術師のお姉さんに自由落下と共に短刀を振り下ろし頭を左右に分断します。


「ハハッ、マジかよ……」


立ち上がってきた槍使いに向けて再度反転突撃します。


「……もう俺一人じゃねぇかよ! 」


叫びながらこちらと同様に突撃をしてくる槍使いの顔に向かって、砂粒を投げるのと一緒に《突風》を発動してもらい目潰しします。


「ぐうっ! 」


そのまま槍を短刀の柄でかち上げてから腹を蹴り飛ばし、地面に引き倒してから秘技・くるみ割り​──小学生時代にお尻を触ってきた男子に使用して問題になった技​──を放ちます。


「​──ぅあ?! 」


『パキャン』という間抜けな音とビックリしたような顔に泡を吹いて槍使いはリスポーンしていきます。


《既存のスキルのレベルが上がりました》

《カルマ値が下降しました》


「……終わりましたね」


「………鬼だこの人」


何故か内股になっているユウさんの下へと戻っていき、『ベルゼンストック市』への道を急ぎます。


▼▼▼▼▼▼▼


「ねぇ、なにしてるの? 」


未だに内股気味のユウさんが尋ねてきましたので答えておきましょう。


「通路に自作の爆薬を仕込んでいます」


「……なんで? もう出口はすぐそこだよ? 」


「ここはもうすぐ上が海ですから、爆破したら海水がなだれ込んでくるでしょう? 毎回出会ってすぐバトルなのは疲れるので他のプレイヤーが辿り着く時間稼ぎをするんですよ」


そうやって会話に応じながら階段から上がってすぐの通路に満遍なく爆薬を仕掛けていきます、天井だけでなく地面や壁にも仕掛けていきます。


「……そんなことして大丈夫なの? 」


「別にここを通らないと行けないわけでもないですし、そもそもここでは海水は水晶になるのでしょう? またすぐ通れるようになりますよ」


「そ、ソウデスカ……」


「よし、終わりました! 」


会話をしながら続けていた作業が終わりましたので爆破しましょう、それはもう盛大に。


「では、我々はここを出ますよ。時間経過で爆発しますのであと3分です」


「あ、ハイ」


遠い目をしたユウさんを連れて長かった地下通路をようやく抜け出ます。

んん〜〜、大体1週間ぶりぐらいですか? 外の空気が美味しいですし青空は眩しいです。まぁ、リアルでいくらでも堪能してましたけどね。


そうして感慨に耽っていると背後の地下通路出口から盛大な爆発音と共に左手側にある海で海水が大きく吹き上がり、その後すぐに渦潮が発生します。


《カルマ値が下降しました》


「どうやら成功のようですね」


「……ソウダネ」


さて、そのまま少し西に向かえば『ベルゼンストック市』です。


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