第26話北の地下通路

さて、クーデターから4日経った今日いよいよ攻略再開です。

思えばまともにこのゲームのストーリーや本筋を無視してきてましたからね、ここらで真面目に攻略しましょう。

目指すは地下墳墓のボスの間の奥から行ける地下通路を通ってから内海を挟んだ向こう側の陸地にある『ベルゼンストック市』です。


「……内海の下を通る地下通路なんて、この文明レベルでどうやって作ったんでしょうね? 」


ゲームにリアルさを求めても仕方ないのですが、他の要素があまりに現実に酷似しているので気になるんですよね…………設定なんかを調べたらちゃんとした理由は出てきそうですが。


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地下墳墓のボスの間から奥へ行き、『ベルゼンストック市』に行くための地下通路に入ってから三日が経ち、今日も5時間近く経過しています。


「うーん……」


やはり上に海があるからか湿気がすごいですね、ここでは火薬玉の効力も弱そうです。


「まぁ、それならそれで他にやりようはあるのですが……」


ジメジメして薄暗いですし、なによりどこからか水が漏れてたまにぬかるんで歩きづらいですよね……『歩行』スキルを取得しておいて本当に良かったです。戦闘中にバランス崩したら目も当てられません。


散発的に襲ってくるワイルドバット​──デカい蝙蝠​──とどこからか紛れ込んだのでしょうか? シースネーク​──水魔術を放ってくる大蛇​──などを斬り捨てながら進んでいますが全然進んでる気がしませんね。


「……また下り階段ですか」


さっきからずっと降り続けているんですよね。途中で登り続けることになるのではないかと思いますが、降りてもまったく周囲の景色も変わらず、空気が重くなるばかりでうんざりします。


「……おや? 」


通算5回目の下り階段を降りて、変わらぬ景色を半ば諦めながら確信していたところで、ガラッと雰囲気が変わりましたね?

天井は高く周囲を珊瑚と蒼い水晶で埋めつくし、柔らかい光を放っているため見通しもいいです。


「なにより空気が美味しいです」


ゲームなのに空気が美味しいというのもおかしな話ですが…………それはともかく、やっと生じた変化に内心ウキウキとしているとそれが視界に飛び込んできました。


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BOSSエネミー

種族:海神の尖兵Lv.35

状態:普通


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なにやら三又の槍を握り、こちらを睨みつけてくる魚の配分が多めの半魚人、モンスターでいうサハギンなどが近い緑色の鱗のモンスターですね。


「……そうですよね、ボスですよね」


ずっと同じような景色からいきなりガラッと変わったのですから予想して然るべきでした。しかしながら理解はできても、先ほどまでのワクワク感がなくなったことには納得はできません。

その不満を半ば八つ当たり気味にぶつけるようにして、長さ20cmほどの毒針を数本投擲して先制攻撃します。


『ジャっ! 』


手にしていた三又の槍でほとんど弾かれましたが、二本ほど肩に刺さりましたね、まぁそれもあんまり痛痒を感じさせてなさそうですけど。


「フッ! 」

『ジジっ! 』


接近し逆手に持った短刀を上から振り下ろすと、槍の石突で弾かれるがそのまま柄で顎を殴り付ける。


『グァッ! 』


そのまま足払いを掛け、後ろへと倒れ込んだ相手の腹に肘を振り下ろし、膝で腰を蹴り上げてまた一時的に浮いたところで回し蹴りで吹き飛ばします。ついでに毒針の投擲で追撃もしましょう。


『ジィイッ!! 』


立ち上がり、憤怒の形相で相手が槍を下段に構え突進してくるのをあえて前進し、短刀を添えることで薙ぎ払いを阻止しながら相手に接近します。

しかし相手はそれをさせまいと槍を戻す挙動をしたので、その場で静止し、槍の穂先に短刀を引っ掛けそのまま強引に引き寄せます。


『ジィッ?! 』


前のめりになった相手の水月につま先をめり込ませ、手首を左手で掴みとりそのまま吹き飛ぶのを押さえ、顔面に右拳を二、三回叩き込みながら股間を蹴り上げます。


『​──っ?!?!! 』


…………どうやら雄だったようですね。そのままもう一回蹴り上げてから短刀で斬りつけますが、寸前で回避され水魔術の《水刃》を放たれたので距離をとり、同時にガラス片を投擲します。


『ジジィッ?! 』


予想通り、全体的に青っぽく柔らかい光が水晶に反射されるこの場では咄嗟に小さなガラス片を視認することができず、片目を潰すことに成功します。

毒針を再度投擲しながら突っ込んでいき、近づくの阻止せんと放たれる槍の一撃を膝を曲げスウェーバックで避けます。

目の前をスレスレで通り抜けていく槍を見ながら滑り、そのまま相手の股下を脚を斬りつけながら通り抜けていきます。


『ジャアッ?! 』


全体的に濡れてるこの場はよく滑るので利用できますが、今後気をつけようと半ば思考しつつすぐさま反転し、うなじから首を刺し貫きます​──が、前に転がることで避けられます。


『ググゥ……』


さすがにこちらを警戒し睨み据える相手に向かって通常の煙玉を投げ付けて視界を奪い、『空蹴』スキルで空を駆け、死角である頭上から落下攻撃を敢行します。


『ジィッ?! 』


寸前に気付かれましたがもう遅いです、そのまま相手の額に短刀が呑み込まれていきます。ダメ押しでそのまま体重を掛けて地面に叩き付けておきましょう。


『ジ……イィ…………』


…………まだ少し息があったようなので短刀を倒し、捻りを加えます。


《レベルが上がりました》

《スキルポイントを獲得しました》

《既存のスキルのレベルが上がりました》

《水鏡の間のボス討伐報酬としてSPを5獲得しました》


毒が効いてくる前に倒せましたね、手間がないですが新作の毒の効果が分からずじまいでした、残念です。

それにどうやら初攻略ではないようです。別に構いませんが、他のプレイヤーの方と途中で遭遇する可能性がありそうですね。


「とりあえず少し休憩してから先に進みましょう」


ボスを倒したあと安全地帯となったその場で一旦ログアウトします。

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