第13話暗躍
さて、学校から帰ってきて諸々の用事を済ませてログインです。あれから数日が経っています、続きがしたくて堪らなかったんですよね。
「おはようございます、少し出てきますね」
「え、えぇ……」
宿屋の主人に挨拶しますが、こちらを怯えるように見るばかりです。一応返してはくれましたが………。
初日に泊まろうとした時拒否されたんですよね。だから指を2本ほど落としただけなんですけど、完全に怖がらせてしまったようです……今後の課題ですね。
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さて、宿屋から出たら隠密系スキルをフル稼働させます。一応私は指名手配されてる身ですからね。
今日はそのまま街をぶらつこうと思います、もしもの時のための逃走経路確保と『遊び』のためです。
改めて街を見渡すと近世東欧のような街並みでした、ワルシャワやブカレスト辺りを想像してくれれば丁度いいですかね? 領主の館はチラッと見た限りロシアっぽかったです、なぜでしょう?
異国情緒あふれる街並みを眺めながら歩きます。隠密系スキルを全開にしながら、従魔達にも警戒してもらいます。
観察する限りでは初日のような活気はなく住人たちの顔も暗いですね、そしてなにより衛兵たちが物々しい……二人一組ならまだわかるんですが、見掛けると必ず四人一組で行動してるんですよね、しかも見廻りの頻度が高い──確実に私のせいですね。
人目を避けるようにして路地裏に入っていきます。初日はやめときましたが、やはり道順覚えてマップに記録しておいた方がいいですからね。少なくとも損はしません。
路地裏に入って少しすると、表の眩い感じがなくなり完全にアウトローな雰囲気です、こういうのワクワクしますね!
そのままキョロキョロしながら歩いていると──
「おうおう、嬢ちゃん迷子かぁ? 」
「おじちゃんたちが道案内してあげようか? 」
「俺たちやっさしー! 」
──チンピラに絡まれました、デブ、ノッポ、チビの3人組です。最悪です。路地裏の雰囲気に浮き立って隠密と索敵が疎かになっていましたか、反省です……。
「何か言えよ」
「ビビってんじゃね? 」
「おじちゃんたち怖くないか──」
まぁ、丁度いいですし今日の予定は変更です。
そのままデブの首を落として、残りの2人の両脚を逃げられないように切断します。
「『あ? 』」
そのままチビの頭を踏み付けて、ノッポさんの顎を掴み壁に押し付けます。
「ぎゃああああ!! 」
今ごろ状況把握ができて痛みに叫んでますね、チビさんは頭を踏み付けてるので聞き取りづらいです。
「少し五月蝿いです」
ガキャという間抜けな音と共にそのままノッポさんの顎を外し、またガコンっという音とともに顎をつけ直します。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!! 」
少しだけ静かになったところで尋問開始です。
「あなたに聞きたいことがあるのですが」
「わ、わかった! なんでも言う! だから助けてくれ! 」
「それは良かったです、ではここ最近変わったことはありますか? 」
「………す、数日前に表の方で大事件が起きたらしくて、失業者が裏側に溢れてどこも治安が悪くなっちまった! 」
「なるほど」
どうやら私が暴れた影響で、始まりの街では失業者などで溢れ、表だけでなく裏社会の治安まで悪くなっているようですね。
「他にはありますか? 」
「……そういった余所者を集めて新興組織のヤガン・ファミリーが勢力を拡大し始めて、ここら一帯を仕切ってるムーンライト・ファミリーに喧嘩を売り始めて、それに対して報復に出てって感じで抗争が増えてる」
なるほど、裏社会は裏社会で大変なんですねぇ〜、まぁそれは別にいいです。
「では最後に1つ、そのムーンライト・ファミリーの所まで案内してください」
「っ! 待ってくれ! それはできねぇ! お前みたいなのを案内したら殺されちまう! 」
「……そうですか、それは残念です」
どうやら案内してくれないみたいなのでコレはもう要りませんね、顎を掴んで固定し口の中に油をドンドン詰め込みます。
「〜〜っ! ガブッ! 」
そのまま松明を食べさせて上げて着火します、人間篝火の完成ですね! 目からも火を吹いてるのが芸術点高いです、さすかノッポさんです。
「さてチビさん、あなたは今ここで殺されるのと後で殺されるのどっちがいいですか? というよりどちらに殺されたいですか? 」
そう言って足を退けてあげます。
「わ、わ"が"っ"た"! 案内す"る"か"ら"〜"」
うわっ、涙と鼻水で汚いです。靴を地面に擦り付けて拭いておきます。
言質はとったので、物干し竿をチビさんの襟首に引っ掛けそのまま移動します。
「どちらですか? 」
「あ"っ"ち"」
いい加減に泣き止んでくれませんかね? 目が見えないと道案内できないでしょうから潰せませんけど、鼻ぐらいは削いでおくべきですかね?
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「兄貴! またヤガン・ファミリーの連中でさぁ! 今度は魔薬ですぜ! 」
「またか! これで何件目だ?! 」
クソッ! ツイてねぇ! アジトの隠れ蓑としての表の酒場で飲んでいたところにこの部下の報告だ。
この前にここら辺を仕切る幹部に昇進したばっかだってのに、昇進した2日目に表の方で大事件が起きて、一気に裏社会の住民が増えた……。
それだけならまだしも、その余所者を吸収したヤガンの野郎が勢力拡大してこちらに喧嘩売りやがった! 破門されたんだから大人しくしてろってのに!
「それで、被害は? 」
「廃人になったのが数名と、こちらの組員に重軽傷者が十数人でさぁ」
魔薬が絡んでるにしては被害は少ない方か......それよりも問題なのは──
「それよりも、これを機にコチラ側に領主から捜査の手が伸びる恐れがありやすぜ」
「……わかってる」
ったく、次から次へと……割と大きな国が魔薬で国民丸ごと滅んだ経緯から大陸条約で禁止されてるってのに、そんな物に手を出したらこちらまで危ねぇじゃねぇか。
「今回はさすがに見逃せねぇ、俺も上に掛け合ってヤガンの野郎を潰す許可を──」
「──こんばんはー? お邪魔しますね? 」
「──誰だ? 」
バンッ! という扉を開く大きな音共に声が掛けられる。
ったく誰だ? 女なんか呼んだ奴は? ここは売春宿じゃねぇんだぞ? 振り返りつつ文句を言おうとして──
「っ! 兄貴! ロランの野郎が!! 」
振り返った先には美しい女が居た。しかしながらその手には両脚を失い、鼻を縫い付けられ、両目を穿たれた変わり果てた姿のロランが襟首を掴まれていた。
一緒にいたダンとノスリの姿が見えないが…………望みは薄いな。
「てめぇ、ヤガンのとこのもんか? 」
「? 違いますよ? 」
なに? てっきり遂にカチコミに来たかと思ったんだがな?
「じゃあ領主の手先か? それとも他のファミリーのまわし者か? 」
「どちらも違いますけど……」
「じゃあどこの誰でなにが目的なんだ!! 」
クソっ! 落ち着け俺、部下がやられて腹が立つのはわかるが冷静になれ……普通に考えて成人男性3人を1人で殺せる女は異常だ、相手の出方をよく見ろ。そして隙を見てこの場にいる全員で掛かるんだ……そこまで考えてから、周りの部下に目配せをする。それぞれ頷きや目礼が返ってきた。
「私はですね、ムーンライト・ファミリー? っていうところのボスに用がありまして」
「そいつは運がよかったな、ここのボスは俺だ」
「そうですか? そうは見えませんけどね……」
ここのボスは俺だ、嘘は言ってない。仮に看破を使われても大丈夫なはずだ。
「あぁそうなんだよ、話なら奥で聞くからついてこい」
「……まぁいいですか」
腑に落ちない様子で女が馬鹿正直についてくる──間抜けめ、そのまま酒場の中心よりコチラに来た時がお前の最期だ。痛めつけて背後関係を洗いざらい吐かせたあとは売春宿に売り払ってやる。
女に背を向けある程度進んだところで、部下にだけわかるように合図を出す。
「死に晒せ! 」
「覚悟しろ! 」
「3人の仇! 」
それによって周りで待機してきた部下が一斉に女に襲いかかる。
「運も悪ければ頭も悪い、素直についてくる方が悪いんだ──」
──振り返りつつそう言う俺が目にしたのは3人の部下の首が飛び、5人の部下の腕が落とされ、さらに3人の部下の喉に持っていたものだと思われる武器がそれぞれ生え、2人が店外に投げ飛ばされたところだった。
「──本当にツイてない」
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