第15話 これが温泉旅館?
縄文時代にも温泉あったんだ・・・
まあ確かに日本は火山の国だから、縄文時代に温泉が湧き出ていても不思議ではない。
『温泉でよろしいですか?』
籠にそう聞かれ、二人で頷く。
『了解しました。』
籠がそう答えるとユックリと籠は走り始めた。
景色がユックリと流れたと思ったら、目の前の景色が一瞬歪んだ。
なにが起きた? と思ったら・・
『温泉に着きました。 降りますか?』
「えっ? もう着いたの?」
『? ええ、そうですが?』
慌てて外の景色を見ると、先ほどと明らかに違う景色だった。
呆気にとられていると再度、籠から聞かれる。
『降りますか?』
「あ、・・、はい、下ります。」
『ご乗車ありがとうございました。』
そう籠が答えたか思ったら、穂乃花とニャン吉共々籠の外に居た。
足下に昇降の籠はない。
そして・・籠は居なくなっていた・・・。
呆気にとられ周りを慌てて見回した。
目の前には、縄文式住居が1件のみある。
縄文式住居を中心に半径100m位だろうか、芝生のように綺麗に草が短く刈られている。
誠達は、その芝生もどきの草の中に立っていた。
縄文式住居の後方は大きな湖があり、その湖の奥は森、さらにはるか彼方に雪をたたえた山々が聳え立つ。
見たことの無い山々だ・・
縄文式住居の左手は、ススキの野原ではるか彼方に海が見える。
微かに海鳥の鳴き声が風に乗って聞こえてくる。
右手には、やはりススキ野が広がり、はるか彼方に山々が同じように聳えていた。
後方を振り返ってみる。
やはりススキ野が広がり、遙か彼方に山々が聳えている。
弥生式住居の周りには道はない。
恐らくだが、籠以外で来られない場所なのだろう。
だとすると籠は道に沿って走っているわけではなさそうだ。
おそらく道なき道でも籠は行くことができるのだろう・・。
空を見上げると、はるか上空に
やがて諦めて森の中に戻っていった。
やはりどこを見ても籠はいない。
二人を下ろした後、直ぐに戻ってしまったのだろう。
関所で聞いたとおり、料金の支払いは気がつかないうちに行われたようだ。
それにしても籠自体、どのように動いているのか理解できない・・
やはり現代の方が遅れていると見た方が良いのだろうか・・
「ねえ誠さん、目の前の縄文式住居が温泉なのかな?」
「たぶん、そうだろうね・・他に何もないから・・。」
二人して顔を見合わす。
「でもさ、穂乃花、温泉に見える?」
「ううん・・そうは見えない。だって4,5人入れば満杯の住居だよ。」
「やはり、そう見えるよね・・」
「でもさ、この住居の屋根の横にある穴から、温泉の湯気のようなものが出ているね・・」
「うん・・、それに少し温泉の臭いがしているよね。」
そういって誠は縄文式住居の玄関と思われる真っ暗な入り口に向った。
穂乃花は躊躇したあと、誠の後を追う。
誠は真っ暗な入り口の1m位手前で止まって中を覗こうとした・・
しかし、入り口の中は何も見えない。
自分達の背中に太陽がある。それにも関わらず正面にある入り口は戸も無いのに中が見えない。
あたかも差し込んだ太陽の光が、暗闇に吸収されてなくなったかのようだ。
ここを入るとなると、ちょっと勇気がいる。
入り口の周りを見渡すと、入り口の上に看板らしきものが有った。
「温泉旅館て書いてあるな・・ん?」
誠は看板の文字に釘付けになった。
「穂乃花、入り口の看板、読める?」
「え? ええ・・読めるけど・・」
「何て書いてある?」
「温泉旅館・・それが何か?」
「本当に?」
「え?」
そう言って穂乃花は、看板を読み返そうとした。
「あ!・・」
そう、看板を見た瞬間、象形文字が見える。
しかし次の瞬間、漢字で”温泉旅館”と書き換えが起こったのだ。
二人して顔を見合わせる。
そういえば関所で木簡には文字を書かず、思念を書いているとか言っていたよな・・
こういう事なのか・・
「不思議だよな・・文字が変化して一瞬で読める文字に変化する。」
「・・・うん。」
「まあ、なんだ・・今は、その・・あまり考えないでおこうか・・」
「うん・・」
自分で穂乃花に気がつくようにさせて言うのもなんだが、わからないものは分からない。不思議なものは不思議だ。
それをウダウダ考えても始まらない。そういうものだと思おう・・
それにしても[温泉旅館]と書かれてもね・・
普通旅館名が書かれているよね・・・
紅葉旅館とか、紅葉館とかさ・・そしてそれに添えて温泉旅館とか書くだろうに、ここはそうではないのか・・
まあ、温泉旅館が一軒だけだから、なのだろうか・・
「穂乃花、入ってみよう。」
「え! 入るの?」
「うん、ここに立っていてもしかたないし、周りに何も無いから入るしかないだろう?」
「それは・・それはそうだけど・・」
穂乃花は困惑気味な顔をして入るのを渋る。
先ほどの籠で、俺が消えた恐怖心がまだあるのだろう。
「穂乃花、ニャン吉を寄越して。」
「え? ええ。」
俺はニャン吉を肩に乗せた。
ニャン吉は心得たもので、前足を左肩に、後ろ足を右肩に乗せ、首の後ろに巻き付く。まるでマフラーのように肩に乗った。
「穂乃花、手をつなごう。」
「え・・、あ、うん!」
穂乃花は躊躇しながらも、最後は元気な返事となって、うれしそうに手を握ってきた。
「じゃあ、入るよ?」
「・・うん・・」
すこし穂乃花は緊張しているようだ。
穂乃花を引っ張るような感じで、真っ暗な入り口に足を踏み入れた。
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