第5話 関所・道中手形
土偶に見えた人達が人間だと分かって一段落した時、
門番である土偶1号さんから質問された。
土偶1号さん 「貴方達は海外の方ですか?」
誠 「?」
穂乃花 「え?」
土偶1号さん 「私達ドグウ族を知らないなら海外の方かと。」
誠 「海外ですか?」
土偶2号さん 「違うんですか?」
穂乃花 「え? 私達、日本人ですよ?」
土偶2号さん 「ああ、やはり海外の方だったんですね。」
土偶1号さん 「ようこそ、倭の国へ」
穂乃花 「へ?」
土偶1号さん 「では、あちらで手続きをして下さい。」
そう言って門の中の建物を指さす。
すると穂乃花が誠の耳を引っ張った。
「痛てててて」
そのまま土偶達から少し離れた場所に連れていく。
そして穂乃花が小声で話しかけてきた。
「ねえ、パスポート持ってきてないよ?」
「パスポート?」
「だって海外なんでしょ?」
「ああ、そういうことか。」
「どうすんの?」
「あのさ、倭の国って聞いたことない?」
「え~と、東南アジアの国かな?」
「・・・弥生時代頃の日本の名称だけど・・」
「へ~・・・ん?
えっ! 日本?!」
「そうだよ。」
「じゃあ、パスポートはいらないね!」
「・・たぶんね。」
パスポートがあったとして通用する気がしないのだが・・
パスポートは兎も角として、ここが倭の国だと分かった。
それに遮光器土偶の姿形をした人達・・
此処は自分達がいた21世紀ではなさそうだ・・
タイム・リープしたのだろうか?
それとも全くの別次元だろうか・・
古代の日本に近似しているから日本だと思いたい。
だとするとタイム・リープが有力かもしれない。
タイム・リープしたとしたら何時の時代だろうか・・
倭の国、つまり倭国は弥生時代ということになる。
だけど遮光器土偶の姿形・・縄文時代だよね・・
もしかしたら縄文時代の人は倭の国と名乗っていたのかもしれない。
関所も縄文時代に有った可能性がある。
だとしたら縄文時代に来たというのが有力だろう。
ただ、縄文人(ドグウ族?)が日本語を話したかは疑問だ。
平安時代では大和言葉が使われ現代の言葉とは多少違っていた。
縄文時代なら古代の言葉を使用していた可能性がある。
とりあえず縄文時代に来たと仮定し様子を見よう・・
そう考えていたら、穂乃花が聞いてきた。
「パスポートがいらないなら、何も心配ないよね?」
「・・・」
「どうしたの?」
「入国する許可書が必要なんじゃない?」
「道中手形みたいな物?」
「そう・・そのような物。」
「道中手形か~・・有るけど使えないよね?」
「?」
「ほら、先週、友達とお祭りに行ったって話したでしょ?」
「ああ、そういえば・・」
「その時に、出店で買ったんだ。」
「・・・」
「それを誠に見せようと思って、今日、持ってきたの。」
この様子を見ていた土偶2号さんが声をかけてきた。
土偶2号さん 「あの、どうかしましたか?」
誠 「あ、何でもありません。」
土偶2号さん 「何か困られているように見えましたが?」
まずい・・不審だとみられたら面倒だ・・
あっ、そうだ、
誠 「いや、穂乃花がトイレに行きたいと。」
穂乃花 「え”! な、な、何を言ってるの?!」
土偶2号さん 「トイレ? なんですかそれ?」
誠 「あ、そうか・・えっと、
土偶2号さん 「あ、雪隠ですか、それは大変ですね。」
誠 「そうなんだ、どうしようかと話していたんだ。」
穂乃花 「? 雪隠て何?」
誠 「トイレの古い言い方。」
穂乃花 「!!」
土偶2号さん 「関所の中にあるので、そちらを使って下さい。」
誠 「ありがとう!」
穂乃花 「ちょっと、待った~!!
そうじゃ~ないでしょう!
私、人前でトイレなんて一言も言ってない!」
穂乃花がすごい剣幕で言ってきた。
まさか、穂乃花が怒るとは思わなかった。
誠 「ごめん、悪かった。」
穂乃花 「ほんとうに、もう! デリカシーがないんだから!」
土偶2号さん 「それでは、雪隠に案内しますね。」
穂乃花 「失礼ね! レディに対して!!」
土偶2号さん 「えっ?!」
穂乃花 「だから! トイレなんて言ってない!!」
土偶2号さん 「す、すみません!!」
土偶2号さん、穂乃花の剣幕に押されて、顔を青くしてる。
自業自得だね、まあ、きっかけは俺だけどさ・・
? 土偶2号さん、その目線は助けを求めている?
助けてあげたいんだけど・・無理。
なんとか自力で切り抜けてくれ・・すまん。
すると、土偶1号さんが話しを戻してくれた。
「それでは、関所にお入り下さい。」
あ、やはり関所だったんだ・・
土偶2号さんが、ほっとした顔をして門に先に入る。
そして、こちらに手招きをした。
どうやら土偶2号さんが、案内してくれるようだ。
ともかく入ってみるしかないと覚悟を決め、
関所の門を三人でくぐった。
関所の中を、そのまま進み大きな平屋建ての前まで進む。
その平屋は開け放たれていた。
部屋の中に、やはり遮光器土偶そっくりのドグウ族の人が座っていた。
正座である。
足、痺れないかな・・
この人は、とりあえず土偶3号さんと呼ぼう。
案内してくれた土偶2号さんが、その部屋の土偶3号さんに話しかけた。
「旅人を連れて参りました、シャコウ様」
「うむ。」
「旅のお方は日本という国から来られたようです。」
「そうか、海外の方か。 ご苦労。」
そして、土偶2号さんは門に戻って行った。
土偶3号さんの名前は、シャコウさんというのか・・。
様付けで呼ぶということは偉い人なんだ。
シャコウさんが話しかけてきた。
「よく来られた旅人よ。」
「よろしく願います。」
そう言って穂乃花と二人、頭を下げる。
「それでは道中手形を見せなさい。」
「・・・」
「いかが致した?」
「これで良ければ・・」
そう言って穂乃花がバックからオモチャの道中手形を出した。
穂乃花を止める間もなかった。
まあ、仕方ないか緊張とパニックに近い状態だったからね・・
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