第4話 関所の門番
門に近づきながら、誠は門の両脇の遮光器土偶を観察していた。
なんといえばいいのだろうか?
イギリス王宮の身じろぎ一つしない門を守る近衛兵のように見える。
そう見えるのは等身大の動かない置物のせいかもしれない。
ちょっと威圧感がある。
気のせいだろうが遮光器土偶がこちらを見ているような気がする。
門まであと数歩という所で、突然声がした。
「良く来られた、旅人よ!」
「わっ!」 と、驚いて声を上げる。
「ひっ!!」 と穂乃花が驚いて飛び上がる。
驚いた穂乃花は、腕の中のニャン吉を落としてしまった。
ニャン吉もパニックになり、ススキ野の方にかけていく。
「あ、ニャン吉!」
「まずい!」
と、二人で向きを変えニャン吉を追いかけようとした・・
「済みません、驚かせちゃいましたか?
捕まえるのを手伝います!」
「へっ?」
さっきから誰がしゃべっている? と、後ろを振り向くと・・
遮光器土偶の置物(?)が、こちらに走ってくる。
そして、そのまま追い抜いて、猫を追いかけて行く。
それを穂乃花と俺は立ち止まり、呆然と見つめた。
ニャン吉は、ドスン、ドスンと音を立て追いかけてくるのに気がついたようだ。
その場で伏せてしまい、怖そうに首だけ回して後ろを見る。
遮光器土偶は、走るのを止めゆっくりと近づいてニャン吉を保護した。
そして、向きを変え、穂乃花に近づいてくる。
穂乃花は、ちょっと後ずさった。
しかし、覚悟を決めたようだ。
遮光器土偶にお礼を言ってニャン吉を受け取る。
「あの、ありがとう御座いました・・。」
「いえ、どういたしまして。」
うん、状況はどうあれキチンとお礼を言う穂乃花は偉い。
惚れ直しちゃいそうだ。
それにしても、この遮光器土偶は何だろう?
大きなカエルのような目をしばしばさせて、ニッコリと微笑んでいる。
ぬいぐるみには見えない。
見た目、色などは遮光器土偶そのものだ。
しかし表情が豊かだ。
作り物には見えない・・。
すると背後から別の声がした。
「同僚が驚かせたようで済まない。」
「ひゃぃん!」
穂乃花が変な声を上げた。
しかし、今度はニャン吉は離さなかった。
学習したようである。
誠も、びくっ!と、一瞬なった。
誠は、後ろをゆっくりと振り向いた。
声の方向に、もう一体の遮光器土偶がいた。
そう、門番をしている対のもう一体だ。
「猫は大丈夫ですか?」
「あ・・、はい、大丈夫です。」
「捕まえてくれて、助かりました。」
二人でお礼を言う。
こちらの土偶さん、紛らわしいので土偶2号さんとしよう。
ニャン吉を捕まえてくれた土偶さんは土偶1号さんでいいや。
土偶1号さん 「でも、声をかけただけで驚くなんて思わないよ、普通。」
土偶2号さん 「たしかにな・・」
土偶1号さん 「なんで驚いたの?」
誠 「え~っと、あの、その、貴方達は土偶かと?」
土偶1号さん 「ええ、ドグウ族ですが?」
穂乃花 「だから驚いたんです。」
土偶1,2号さん「なぜ驚くんですか?」
穂乃花 「だから土偶だからです。」
土偶1,2号さん「?」
どうどう巡りである。
しかし穂乃花は気にしなかった。
穂乃花 「よく出来てますね。」
ニッコリと話しかける穂乃花。
土偶1号さん 「何がですか?」
穂乃花 「だって、受付ロボットでしょう?」
土偶1号さん 「ロボット?」
穂乃花 「会話したり、走ったり、凄いです!」
土偶1号さん 「はぁ?、当たり前じゃないですか・・」
穂乃花 「え~!? 私、そんなロボット見たことない。」
土偶1,2号さん 「あの~、そのろぼっとって何ですか?」
穂乃花 「え? ロボットだけど?」
土偶1,2号さん「?」
これも堂々巡りである。
どうも話しがかみ合っていない。
会話から土偶達は、ロボットを知らないようだ。
誠 「あの、ロボットとは機械仕掛けの人形です・・」
土偶1,2号さん「へっ?」
誠 「貴方達がロボットに見えたのですが・・」
土偶1,2号さん 「・・・・」
しばらく唖然とする土偶さん達。
土偶1号さん 「私達は、人間ですけど?」
穂乃花 「ああ、人形ね。」
土偶1号さん 「人形でなく、に・ん・げ・ん です!」
穂乃花 「へ?」
穂乃花は暫く考え込んだ。
そして、何を思ったか、突然、土偶1号さんのホッペタを摘まんだ。
土偶1号さん 「いたたたた! ひたいっ!」
穂乃花 「あ、夢でないみたい・・・」
おぃ! 人のほっぺた抓るのやめようね。
痛そう・・・
自分の頬にしようね、次回からは、ね。
土偶1号さん 「な、何、何をすんですか!」
穂乃花 「ごめん、夢かと・・」
穂乃花のせいで、二人して土偶1号さんにお詫びをすることになった。
土偶二号さんは、どうしていたって?
腹を抱えて笑っていたよ。
穂乃花も俺も土偶ではなく人間だと理解した。
まあ、違和感満載ではあるが・・
まあ、人間だった件はさておいて、この人達、門番だよね?
やはり、ここは関所なんだろうね。
さて、関所を通して貰えるのだろうか・・
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