第2話 穂乃花の視点
朝早く、私は目覚めると、
よしっ!と気合いを入れて起き上がる。
今日は誠とデートだ。
誠は忙しくて週末しか会えない。
今日は目一杯、幸せにしたるんだ!
5日ぶりに誠と会えるんだもん。
そう思い、デートに期待し、ワクワク、ソワソワ、ニヤニヤしていた。
そして時間通り、誠が家まで車で迎えに来てくれた。
そこで誠から今日の予定を聞いたんだけど・・・
え? 何? なんなの!
デート先が古墳?
なぜ? 何故に古墳なの!
ロマンスがあると思う?
ああ、古代のロマンすか・・
いやいやいや、そうじゃないでしょ!
ああもう! もう少し夢のある、感動させる場所を考えてよ!
そう思っていると、
誠がさらに話しを続けた。
「ニャン吉は人が多い所はだめだろう?
その古墳の公園は人が少ないから、ニャン吉を抱いて歩けると思うよ?」
「あ、ニャン吉のこと考えてくれたの?」
「ああ、だってニャン吉も連れていきたいだろう?」
「うん、ありがとう!」
「おれもニャン吉は可愛いしね。」
「うふっ! でしょ? うちの子が一番かわいいんだ。」
「そうだね・・。
ニャン吉を、肩に載せて歩くとさ、
首筋にあたる毛が柔らかくて気持ちいいよね。」
「うん!」
「でも、肩に時々爪を立てるんだよね~、
それが結構痛いんだけどさ、
「にゃ! ウニャ!」
それに答えるかのように、腕の中のニャン吉が口を挟む。
誠はニャン吉のタイミングのよい合いの手に驚いていた。
「え? お前、人の言っていることが分かるのか?」
どう見てもニャン吉が肯定したように見え可笑しくなった。
「あははは!
「まじかよ・・。」
「うん!」
「人の言葉が、分かるんだ・・・」
誠は真剣な顔でそう言って、納得した顔をする。
え? ちょっ! ちょっと待った~!
納得すんなー!
人の言葉なんてわかる分けないじゃん!・・
いや、無いと思うよ?
たまに、そう思うことはあるけどさ・・
猫又じゃあるまいし?
えっ! まさか・・・
尻尾を確認する。
うん、ニャン吉の尻尾は1本にしか見えない。
それから、猫又と言えばお酒か・・
うん、ニャン吉はお酒飲まない。
二日酔いの姿、見たことないもん。
ということで、お酒も問題なし!
それから、行灯・・
夜中に行灯の油を舐めるかだけど、これは問題ない。
だって、うちに行灯なんてないからね!
LED照明だもん。
猫又と怪談の猫がごちゃ混ぜの穂乃花ではあったが、
猫又で無いことを自分に納得させた。
誠は穂乃花に公園の話しを続けた。
「公園は芝生が綺麗だし、展望もいいんだ。」
「そうなの?」
「ああ、だから行こうよ。」
「うん、分かった。」
そして公園に行ってみた。
確かに人が少なく、安心してニャン吉を抱いて散歩できる。
よし、ニャン吉を抱っこして散歩しようっと。 ふふふ。
そうそう、公園で猫を連れ歩いても大丈夫みたい。
公園によっては、立札でワンちゃんはお断りと書いてある。
けど、ニャンの記載は見たことがない。
ワンちゃんと違って飼い猫は屋外でトイレをしないからかな?
実際、公園を連れ歩いて注意されたり、嫌みをいわれたことはないんだ♪。
ニャンの散歩を不思議な目で見られるけどね。
そういえば、ニャン吉を小型犬と間違えた人がいたよね。
通り過ぎてから「えっ?猫?猫だよね?」と、彼氏に確認した子がいたもん。
その後、ニャン吉を見ながら「可愛いな~!」って、言ってくれたんだ。
ふふふふふ。
なぜ皆さん、猫を連れて公園を散歩しないんだろうね?
ただ、ニャン同伴といえば困ることもある。
ペットと泊まれる宿はニャンはだめな所が多い。
あるいは制限が多い。
たぶん、柱などで爪とぎをするからだろうな~・・
ニャン吉は爪とぎ器を持っていけば大丈夫なんだけどね。
まあ、そう言ったところで相手はされないよね・・・残念。
話しが逸れてしまった。
公園の遊歩道を、ニャン吉を腕に抱え、誠と一周する。
公園は見晴らしが良く、優しい風が吹いていた。
公園の芝生も気持ちいい。
ニャン吉を歩かせてもいいかもしれない。
この公園に来てよかった。
と、思っていたのだが・・・
「なあ、古墳の中に入ってみよう。」
な、な、なんですと!
古墳はお墓ですよ?
せっかく安寧な場所に永眠している人の家に土足で入るですか!
化けてでてきちゃいますよ?! 怖いですよ! お化けさんは!
そう言おうとしたのだが・・
誠は古墳に向かって、どんどん歩いて行っちゃうんだもの。
慌てて腕を掴んで、ついていったわよ、ふん!
本当に子供みたいなんだから! 女性心理を学びなさいよ!
そして誠と一緒に渋々と古墳の中へ。
古墳に入ったとたんに、誠がふらついた。
あれっ、大丈夫?
そう声をかけようとしたら、私も立ちくらみが・・・
貧血を起こしたにしてはおかしい?!
そう思いながら、思わず膝をついた。
その時、つい、ニャン吉を抱いていた手を緩めてしまった。
するとニャン吉が腕から飛び降り、外に飛び出した。
ニャン吉!
追いかけて捕まえないと!
そう思ったが立ちくらみでふらつく。
誠にニャン吉を捕まえて!と叫ぶ。
誠はすぐにニャン吉を追いかけて古墳の外へ飛び出した。
私も、ふらつく足でニャン吉と誠の後を追って、外へ飛び出た。
すると出口から少し離れた所で誠が背を向けて突っ立っている。
何か、呆然としているように見える。
あれ? どうしたの?
ニャン吉は?
と、声をかけようとして唖然とした。
景色がおかしい。
公園じゃない?
あれ、あれれれ・・・何これ?
突然、誠が焦った顔で、こちらを振り向いた。
そして、私を見つけるとホットした顔になる。
あ! 私を探していたのかな?
私のこと、そんなに心配した? うふふふふ。
嬉しさがこみ上げる。
そして、誠の腕の中のニャン吉を見つけた。
よかった~・・・ニャン吉を捕まえてくれたんだ。
誠にお礼を・・と、誠を見る・・
誠は唖然としていた。
あれ?
ほわ~ぃ? 何故?
どうして唖然としているの?
????
あれ?
見ているのは私の後ろ?
いや、私の後ろより、誠の後ろの景色は何?!
関所のような建物と塀があるんですけど!
確か、古墳に入る前は、こんな景色では無かった。
見晴らしがよく長野市が一望できた・・・
そこに、塀が建っている?
塀の向こうに行くには、この門を潜り関所みたいな所を通らないといけない?
え~・・と・・・
あ! 分かった!
展望台なんだ!
関所に見えるのは、料金所だ!
展望台は有料なんだ。
・・・
・・・・え~っ、と、
ちょ・・ちょっとだけ設定に無理があるか、な・・・
展望台、数分で建てられるわけないよね・・
たぶん、だけど、設定に無理があるかな~・・。
え~と・・・
では、目の前の関所もどきは、なぜ突然に現れたのかな・・
分かった!
誠のサプライズなんだ!
私を驚かすための。
誠、グッジョブ!
私、驚いた!
驚いたから、してやったりって顔、して・・
ねぇ、呆然とした顔、じゃなくて、ね?
そう自分に言い聞かせ、
私は誠を見るしかなかった・・。
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