第19話 進学先
小学6年生に進級した俺は、中学校への進学を考える必要がある時期にきていた。というのも、芸能事務所に所属している俺が普通の公立もしくは私立の中学校に進学しても大丈夫なのかどうか。
そういう事を事務所の人に相談してみたら、芸能人向けの学校が有るらしいということを教えてもらった。
その学校の名前は堀出学園という。中高一貫校で、タラントコースと呼ばれる才能を認められた俳優や歌手、あるいはプロスポーツ選手にアイドルなどの現在活躍している、もしくは将来活躍する予定のある人のために設置された進学コースが有るらしい。
ちなみに
その学園では芸能活動を円滑にする為のサポートが充実しているらしくて、仕事の都合に合わせて授業時間を調整してくれたり、長期に渡って平日の通学が困難となるような場合にも週末や夏休み冬休みの長期休暇を利用した補習をしてくれる等して、芸能活動を行いながらでも学業を疎かにせず兼業する事が可能な環境らしい。
その中学校に進学するべきかどうか。進路についてを悩んでいると、事務所の人が気を利かせてくれて更に詳しい説明を両親と交えて行ってくれるという。
わざわざ両親にも訪問予定日を確認、調整して自宅へと説明しにやって来てくれた堀出学園の先生。
「息子の為にわざわざお越しいただき、ありがとうございます」
「いえ、我が堀出学園も賢人くんの優秀さは確認していますので、ぜひとも堀出学園に入学して頂きたいと考えています」
父さんと40代ぐらいの男の先生、
「早速ですが、堀出学園のシステムについて改めてご両親にも説明させて頂きます」
そう言って、テーブルの上に広げた入学案内のパンフレットを駆使して堀出学園について説明をしてくれる。
芸能活動をしている人のサポートがとても充実しているということ。それから学園は芸能事務所とも直接やり取りするシステムが構築されていて、仕事の実情について学園の人が知れるように、そして学園での生徒としての学生生活の状況を事務所の人が知れるなど、情報共有を密にして活動しやすくしているらしい。
だから、芸能活動も普通の中学校へ通う時に比べて自由に出来るという。
学園の建物も芸能人など注目を集める人だからと考慮して建てられているらしい。例えば、学園の周りを囲む塀を高くして内部を外から見えにくくしたり、学園内には多数の監視カメラを設置して、登下校中も教員が監視するなどをしてセキュリティーも万全に整えているとのこと。
マスコミや報道関係者から守ってくれる、有名人が勉強するのには良い環境が整えられているという。
「それから、堀出学園ではタラントコースの他にも育英コースという、いわゆる学業での特待生を迎えるコース。進学・進路選択コースという通常の公立高校と同じような扱いで設置されているコースもあります」
芸能人以外の普通の一般人が学園に通っているらしい。その人達に混ざって、学園では芸能活動だけでなく学業でも力を入れて取り組むことを奨励しているという。
「中高一貫校という事で、大学入試について不安視されるかもしれませんが安心して下さい。堀出学園は、かつてタラントコースから東大に合格した学生も居るくらいですから」
それだけサポートしてもらって一般の人とも混じって勉強が出来るのなら、芸能人という違いは関係なく学業にも専念できるのだろう。
「一つ注意して頂きたいのが、堀出学園は全寮制なのです」
芸能界を生き抜くために「自立」と「社会性」を学生のうちから学ぶ事を目的に、タラントコースに入学する人は寮生活を義務付けられているという。
学園に入学したら、親元から離れて規則正しい寮生活をすること。それにより子供でも自分のことを自分でやって、自らの発言から行動まで責任を持つように、心身をたくましく鍛えようという考えらしい。
俺としては、早めに親元を離れる経験が出来るのはありがたい。別に両親が嫌いな訳ではなく、今の生活が苦しいというわけでもないけれど、自分の持つ秘密によって一緒に生活している時、ふと申し訳無さを感じる時もあったから。
ただ、母さんの表情は険しくて反対だ! という感情が読み取れる。口には出していないけれど。父さんは、……どうだろう。
「賢人くんは、既にダンサーとして活躍していらっしゃいます。また、所属するアビリティズ事務所における評価も高いようですので、いずれアイドルとしてデビューをなさる可能性もあるかと思われます」
だからこそ、ぜひとも堀出学園への入学をオススメしますと北垣先生は俺と両親に力強く言って話を締めくくった。
堀出学園についての説明が終わると、帰っていった北垣先生を見送り今度は俺と父さん、母さんが集まって家族会議が始まる。
「父さんは、堀出学園に入学するのはとても良い事だと思うぞ。寮生活で離れ離れになるのは寂しいが、自分のやりたい事をするのにはとても良い環境だと思う」
そう言う父さんは、堀出学園への入学を賛成してくれるというスタンス。
「お母さんは、……反対したい。まだ中学生なのに、こんなに早くに離れて生活するだなんて」
やはり母さんは、寮生活になるからと反対する意見のようだ。
「最後にどうするか、決めるのは賢人。おまえだ」
「もちろん、賢人が決めた事なら全力で支援するから。あなたのしたいように」
父さん母さんから、どうするか最終判断を問われる。どちらの意見も尊重したいけれど、俺の心は既にどうしたいか決まっていた。
「俺、堀出学園のタラントコースに入学するよ」
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