虫
9月3日
僕はイジメに遭って学校をサボった。慶子、それから祖父母と福岡に遊びに行くことになった。
慶子は白黒のボーダーTシャツとワイドパンツ、ベレー帽、赤いバック……フレンチマリンスタイルだ。チークはハート型のピンク色だ。祖母は何をとち狂ったのか、薄いピンク色のフェミニンスカート姿だった。
「気持ち悪い」
祖父は苦笑いをしている。
僕はブルージーンズにブラックの無地のTシャツだ。
「ヒロシも少しはオシャレしたらどうだ?」
祖父が着替えなどをリュックサックにしまいながら言った。
「したいんだけど母さんったらお小遣いくれないんだ」
「買ってやろうか?」
「いいよ、悪いから」
クラウン・マジェスタはタイムスリップだけでなく空を飛ぶことができる。あっという間に博多に到着した。
博多駅前の川端うどんに入った。昆布やかつお、うるめなどを使ったダシはコクがあった。えび天や肉をトッピングしてチュルチュル。慶子はサイドメニューのかしわを食べていた。
昼食を終えて4人は天神地下街にやって来た。1番街〜12番街まである。
「コイツの上には渡辺通りがあるんだ」
祖父が教えてくれた。
「詳しいね?」
「よく来てるからな」
8番街にある石積みの広場に来るとサソリが現れた。
「キャッ!」
慶子がビクビクしている。
「コイツはヤエヤマサソリじゃないか、毒はないから平気だ」
祖父は昆虫に詳しい。ファーブルも顔負けだ。八重山諸島に棲んでおり、単為生殖といってメスしか存在しない。交尾することなく1匹だけで増える。
僕はまだ交尾をしたことがなかった。
おもむろに慶子を見た。
西11番街にあるサンマルクカフェにやって来た。店に入ろうとするとデザートヘアリースコーピオンが襲いかかってきた。
「そいつには弱い毒があるから気をつけろ」
祖父が言った。
テンガロンハットをかぶった青年が殺虫剤でデザートヘアリーを倒してくれた。
「大丈夫でしたか?」
「助けていただいてありがとう」
僕たちは頭を下げた。
「名前を教えてもらってもいい?」
祖母は青年にほの字のようだ。
「名乗るほどの者ではございません」
木枯し紋次郎か?アンタは。
青年は去っていった。
カフェで休憩することにした。
コーヒーはコクがあって美味かった。
「さっきのサソリはアメリカやメキシコに棲んでいる、コオロギやゴキブリを餌にする」
祖父がウンチクを垂れ流す。
「誰かがワザと放し飼いにしたんじゃ?」
「ヒロシ、それはどーゆー……?」
慶子が顔を覗き込んできた。
「テロかも知れないってことさ」
冒険したい 1万以内 短編 完結させること 鷹山トシキ @1982
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