久喜〜上野
フランケンシュタインはそこまで強くなかった。僕はカレー屋さんからトレンチナイフを手に入れた。
専用に作られたトレンチナイフは、塹壕の劣悪な環境下でも確実に使えるよう、工夫が凝らされている。泥や血などで汚れていても滑りにくいグリップを備えており、特徴的なナックルダスター状のフィンガーガードを備えるものがよく知られている。ナックル状のガードは確実にナイフを保持できる上に、拳で殴りつけるように攻撃することも可能にしている。狭い空間でも取り回しが良いように刃渡りが短いものが多く、それでいて殺傷力を落とさないように刺突によって深い傷を与えやすいダガー状の刃を持つものが多い。
このナイフもダガー状になってる。
着剣小銃と共に持ち歩く副武装という性格上、携帯性を向上させるためにも小型のものが多く、折りたたみ式のものもある。狭い塹壕内で屈んでいても咄嗟に取り出しやすいよう、シース(鞘)を脛の横などに取り付けて携帯することもある。
血のついたナイフなんか気持ち悪いのでゴミ箱に捨てた。
CoCo壱番屋を出て駅に戻った。
突然、夜になった。怪奇現象だ。
時間を自由自在に操る腕時計とかあるのか?
火の気のないところに、提灯または松明のような怪火が一列になって現れ、ついたり消えたり、一度消えた火が別の場所に現れたりするもので、正体を突き止めに行っても必ず途中で消えてしまうという。また、現れる
時期は春から秋にかけてで、特に蒸し暑い夏、どんよりとして天気の変わり目に現れやすいという。
今日は7月3日、そりゃあ暑いはずだ。
数え切れないほどの火の玉が、行列をなして現れた。
炎の色は緑色。
僕はトレンチナイフで狐火を斬りつけたがなんの効果もなかった。
そのとき、ヒョロッとしたオッサンが狐火を蹴り殺してくれた。
「助けていただいてありがとうございます」
「いや」
「強いですね?」
「幽霊だからな?」
「冗談がうまいな〜」
「冗談じゃないけど」
オッサンは空を飛んでどこかに行ってしまった。
嘘だろ?まるでSF映画だ。
列車がやって来た。運良く座席に座れた。ボックス席だ。夜景が見える。ゲップをした。カレー臭い。
『狐火は蹴り殺す』とボールペンでメモ帳に書き込んだ。
腹が痛くなってきた。トイレに向かうが入っている。クソ!ガマンできねーや!僕は新白岡駅で降りてトイレに駆け込んだ。
💩「やぁ、ヒロシ?久しぶりだな?」
ビックリした!ウンコがしゃべった。
「どこかで聞いた声だな?貴様はユーイチじゃないか?」
大島ユーイチ、中3のときに校庭に突如やって来た戦車に体当りして死んだ友達だ。
「地獄に落ちてウンコに成り下がったか?」
💩「地獄に落ちるようなことしてないぞ?」
「俺の消しゴムパクったじゃん?テストんとき大変だったんだぞ?間違いあっても治せないじゃん?」
💩「そのくらい閻魔の野郎許せよ」
「フランケンシュタインとかゾンビじゃなくてよかったじゃん?アイツら殺されるからな?ついさっき、フランケンシュタイン倒した」
💩「そりゃあおめでとう」
「流さないでよ?下水んなかメチャクチャ臭い」
💩「おめぇが言うなよ?」
コンコン!ノックの音がした。
「今出ます」
ユーイチを流してトイレから出た。オッサンが不審そうに僕を見てる。
「イヤ、何でもないんです」
ホームで列車を待った。
先月、日本年金機構の甘糟智也って人間がが101万人分の情報が流出した。
僕は梶孝之って人間から甘糟を始末するよう命令されていた。期限は7月10日までだ。
梶ってのは多分偽名だろう。
梶の父親は新幹線のトイレで焼身自殺を図っている。
『イッキの仕業だ』
梶はこのまえ喫茶店で言っていた。縊鬼と書いてイッキと読む。人に取り憑いて自殺させる妖怪だ。冥界の人間は30歳になるまでに自分が死んだ方法と同じ手段で地球の人間を始末しないと永久に冥界に住まないといけないことになる。
冥界の人間はイッキとなって地球に降り立ち殺戮を行う。
列車がやって来た。うんざりした。満員だ。吊り革につかまる。発射のベルが響き、列車が動き出す。
祖父母の家はアメ横の近くにある。
古びた家で、ときどきネズミが出る。
「お母さんは元気か?」
祖父の知念圭が言った。娘を『お母さん』と呼ぶ祖父を鼻で笑った。
「うん、元気だよ?お祖母ちゃんは?」
「買い物に出てるよ?」
祖父はタイムマシンを使って大正2年に行ったことがあるそうだ。9月1日、午前11時58分に関東大震災が起きた。9万9399人の人間が亡くなり、4万3500人の人間が行方不明になったそうだ。
「僕もタイムマシンに乗ってみたいな?」
「あんときは故障して驚いた。本当はバブル時代に行くつもりだったんだ」
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