第11話
部活でのファイティングが終わって興奮冷めやらぬ中、またもネットでフェンシングについて調べてみることしたのである。やはりサーブルはスピード、瞬発力が大切、もちろんリーチの長さも重要、長ければ長いほど速く相手に届くのだから……
そうするとなぜかフェンシング選手がニュースになっていた。読んでみるとなぜかフェンシングの海外のフルーレ代表の選手が自国の大統領の政策が気に入らないからと表彰台の上で国歌を歌うときに座ってそれを拒否したというものであった……本当に最低だと思った。スポーツ選手が政治が気にくわないからといってスポーツの場を利用してそういうったアピールをするなんてアスリートとして最低の行為だと思う。そしてこれもフルーレの選手だという……。
やはりフルーレは絶対やりたくない。またその決心が固くなったのだった。
何が銃社会に問題があるだ、人種差別だ。移民受け入れ反対に抗議するだ?
そんなもん変えたかったら自分が政治家になれば良いだけの話だろ。とはいえ何もしらないくせにスポーツで有名になったからって理由だけで政界入りして政治家気取られるのも迷惑だからそれはそれでやめてほしい話である。とにかく、自国の政治に文句があるなら自分でちゃんと大学や大学院でちゃんと勉強して政治家になれってことだ。スポーツに政治を持ち込むようなのが世界のトップ選手やってフルーレなんて絶対認めたくない!!
とりあえずフルーレはないものとして考えると、残りはエペとサーブルということになる。二つともファイティングを経験してみた感じだと攻撃権とかがなくて相手のどこを突いても有効となるエペが取っつきやすい気がした。
しかし、調べてみるとこのエペという種目は近大五種という競技の五種の中の一つのフェンシングがこれのようである。さらに詳しく見ていくと、自衛官や海外の軍人はこの競技からエペを始めてそのままエペの国内チャンピオンや世界チャンプになった選手もいるということらしい……。
というか近代五種をやるような選手ってぶっちゃけ元々陸上部や水泳部でイマイチ結果残せなかった選手が競技人口が少ないからって理由で転向してくるという時点ですでに余り物感があるのに、そんな選手がついでではじめたフェンシングで一番になれるって時点でどんだけ競技レベル低いんだよ?
そう考えるとエペという種目に対してもかなり興味が薄れていくのであった……そしてその練習として始まっただけなのになぜか独立したフルーレはさらに論外であるが。そうなるとやはり私にはサーブルしかない、そう思たのだ!!
「ということでわたしはサーブル人として頑張りたいと思います!!」
パチパチパチパチ……。
言えた、自分のやりたいことを周りに伝えられてそれで拍手されるということは悪くないな、そう思った。
「じゃあもう一人の新入部員ちゃんの意気込みも聞いてみようかな?」
「川上七海です。種目はまだ決めてないですけど頑張りたいです。あとぎっちょです!」
パチパチパチパチ……。
左利きか~、やっぱりフェンシングでもそういうのって有利なのかなぁ……?
「左利きか~、そういや今この部に天然で左利きは一人もいなかったなぁ……。」
やっぱり左利きは貴重だから有利っぽいみたいだなぁ~
「貴重なのももちろんあるけれど、実際それだけじゃないわよ!!」
ヒエッ……!?
この先輩、私の思考を盗聴してたのかよぅ~!?
「左利きが右利きと戦うことになると、持ち手の関係からまず距離が近くなる、そしてカルトパラードっていう相手の剣を外側から内側へ叩いて攻撃ラインを作るようなやり方での試合が多くなるんだけど、右利きは対左利きでこういった戦いになれてない選手が多いからかそういう戦型にどうしても弱くなっちゃうのよ、
まあこれは左利きが貴重だからこそ起こる優位性。でも、もう一つは違うの!」
「もう一つの利点はね、ボクシングの右利きサウスポースタイルって知ってる?」
「えっ、ボクシングですか!? 右利きなのにサウスポースタイルってどういうことなんですか?」
「右利きサウスポーってのは本来右手が利き腕の選手が右手を前に、左手を後ろにする。まあ右手でジャブを打ちながら左手でストレートを決めるってスタイルね、簡単に言うと」
「それと何の関係があるんですか?」
他の部員もそんな話は知らないみたいで目を丸くしながら聞いていた。
「まあ逆に元々左利きの選手が左手でジャブを打つ左利きオーソドックススタイルっていうのもあって、これはジャブは世界を制するっていう現代ボクシングのジャブで試合を作るスタイルを考えた場合に利き腕でジャブを使うっていうメリットを最大限活用したスタイルなんだけど、右利きサウスポーのメリットはそれだけじゃないの」
なんでこの人ボクシングの話をこんなに長く語っているんだろうか?
ここフェンシング部だったはずだよね……。
「なんでフェンシング部なのに関係ないボクシングの話をこんなに長く熱く力説してるんだこの人、
って顔をしているわねフッフッフ……」
うわぁ、また脳内を覗かれてしまっているみたいだ……怖いよぅ。
「ボクシングの創設者とされる人物は元々フェンシングの選手だったらしくて当時はボクシングでも利き腕をフェンシングで剣を持っている腕のように前に出していたのよ!!」
そっか、ボクシングとフェンシングってわりと近い競技だったんだぁ、そういえばイギリスの有名な推理小説の主人公もフェンシングとボクシングの達人って設定だったような……って何の話してたんだったっけか?
「話が脱線しちゃったわね、右利きサウスポースタイルが有利なのはジャブを利き腕で出せることだけじゃない、もちろん返しのフックが利き手側で出せるからってだけでもない、これなら逆の手でも同じことだからね。それは人間の構造の問題にかかわってくることなのよ。」
人間の構造?
「ギータカちゃん、あんた心臓はどっちについてるの?」
「へっ? それは左側ですかね。」
まあ実際はほとんど真ん中とも聞いたけどどちらかといえば左側のはずだろう。
「そう、左側だよね、ごくまれに右側に心臓がある人もいるらしいけどそれは例外、人間は左側に心臓がある以上心臓が近くにある側の腕を開きにくくなってるの、本能的にね」
へぇーそうなんだぁ……。
「逆に言えば腕を伸ばすとき脇を締めるようになってる、だからこそ体重を乗せたパンチが打てる、打ちやすい構造ってことになるの!」
でも確かフェンシングってちょんってつくかサーブルなら触れるだけでランプがつくわけだし体重を乗せてまで攻撃をする必要はあるのだろうか?
「もちろん、フェンシングで体重を乗せてまで攻撃しないと勝てないなんてことはないわ、でも脇を締めて突くことで攻撃は正確に狙ったところに当たりやすくなるし、なによりリーチを最大限生かすことができるのよ!」
「より遠くの位置から攻撃を当てられるってことですね!!」
左利きの川上さんが答えた。
「そう! 実際の命をかけた戦いをするのなら心臓に近い方の手を相手に伸ばすのは危険だけれどスポーツなら逆になるのよ。」
なるほどなぁ、ただのうんちくかと思ったけど意外に納得させられてしまった……。
「実際、海外でも元々左利きの人間は全体の一割ほどしかいないにも関わらず、フェンシングの世界ランク上位選手はどの種目も半分くらいが左利きで占められているというのは単に珍しいからやりにくいってだけが理由とは考えられないのよね~」
そんなに左利きのフェンシング選手は上に行くほど割合が多くなるのか、わたしも左で剣を持った方が良いのかな、なんて一瞬考えてしまう。
「あの……?」
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