第12話

 川上さんがなぜかおびえながら手を挙げた。


「どうしたの、ななみん?」


また勝手に名前呼び、というか愛称それなのか……?


まあそれは良いとして……


「わたしは左利きなので心臓に近い側の手を伸ばすということは事故で刺さったりしたら死ぬ可能性は右利きの選手よりも高いということになるのでしょうか?」


……たしかにスポーツとはいえ鉄製の剣なんだし間違って刺さったら心臓にまで達するってことじゃないか! やっぱり左で剣持つなんて絶対やめとこう……。


死にたくないもん!!


「フフッ……」


おいおいおい……新入部員が真剣に質問してるのに何笑ってんだ、この先輩は……?


命に関わる問題なんだぞ!


「大丈夫よ、今のフェンシングで命に関わるような事故は世界中で毎日のように行われてるファイティングや試合で


もほとんど起きていないから!」


「ほとんどってことは全く起きていないわけではないんですね?」


「たしかに完全に無いとは言えない。けどそういうわずかな事故はちゃんとプロテクターを着用していなかったり安全管理に問題があったということがほとんどでそこんところはうちの部は徹底的に厳しくしているから大丈夫よ! 実際スポーツ保険の額は他のスポーツと比べてもかなり安い方だし、ちゃんとしてれば野球やサッカーやラグビーにアメフトどころか卓球部よりも安全だからね!!」


よかったぁ……ってか卓球部でも死亡事故とかあるのかよ!?


「そういえばフェンシングの防具や剣っていくらぐらいするんですか?」


「とっても良い質問ね、ちょうどいま説明しようと思ってたところなの!!」


先輩は自前のマスクや剣をこっちに集めて手を取って説明を始めた……


「まずはこのマスク、試合用と練習に使ってる二つがあるんだけど練習に使ってるのは2万円弱くらいね」


やっぱりそこそこ高いんだな~


「でもさっきも言ったようにこれはファイティングでも今はほとんど使ってないわ、安全基準があるんだけどこれは試合用の5分の1程度の強度しかないの」


ということは試合用のものはさらに高いのか……!?


「試合用のは1600ニュートンの力に耐えるものでないとダメなの、たまに小さいな地方のオープン大会とかだと練習用ので大丈夫なのもあるけどうちは安全性に最新の注意を払ってるってこともあって基本仕様は禁止してるわね、試合用のものはメーカーによっても違うけど5万円前後が実売価格かな」


ご、五万……マスクだけでそんなにもかかるのか!!


「てことでここからは試合用の防具についてだけ説明するけどまずはユニフォームね、上と下でわかれてるけど上のジャケットは5万円前後、下のニッカーは3万円前後でプロテクターも1万円は超えるわね、まあ防弾チョッキと同じ素材で作られてるものと考えたら安い方でしょ?」


「あとフルーレやサーブルはメタルジャケットが必要ね、フルーレなら安いのなら1万円前後、サーブルだとその倍くらいかかるかな、それにコードが3千円前後、あとサーブルはグローブのところに付けるカフが5千円くらいからあるよ」


「剣はどうなんですか?」


「剣も安いものから高いものまでピンキリだけど大きな大会でも使える電気剣はマレージングっていう合金でできているもので一番安いサーブル剣でも2万円以上、高いエペ剣だと4万円前後くらいかな、一本で」


かなりの出費になりそうだな……お年玉で買えるだろうか? 


「あとは剣やコードにメタルジャケットは試合に出るには予備が必要だから×2~4以上で計算してみてね!」


ファァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッー!!


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