第10話

 うわ……つい大声で叫んじゃった……恥ずかしすぎる……。


その声があまりに大きすぎたためかファイティング(試合形式の電気審判器を使用した練習)を行っていた


部員全員がそれを止めて一瞬静まり返った……。


ヤバイ、怒られるかも……?


……パチパチパチパチパチパチパチパチvvパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ………


そしてなぜか謎の拍手が起こり始めた……。


888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888888


拍手はまだ鳴りやまない、ただただ恥ずかしいだけなのに……。


「よく言った!」


「それでこそ我が部員だな!」


「これは大物新人だわ」


「良い声してるわぁ……」


え、なんか褒められてる……!?


「いやぁ、うちもさあ、フルーレばっかやってる部員ばっかりで種目を頑張ってくれる子が欲しかったのよ、全国選抜も最近種目が始まったし団体でも結果出したいから……」


「はぁ……?」


「今までは新入生にはまずフルーレから始めてもらうことになってたんだけど今年からは本人がやりたい種目を最初からやっていこうって顧問の先生も言ってたからぜひエペだけじゃなくサーブルもやってみよっか!」


そうして先輩と私はサーブルの用具を取りに倉庫へ行った……。


キンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキンキンキンキンキンキキンキンキキキキキキン……。


ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!


パイヨォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


体育館の大きく響く音の中、暗く静かな体育倉庫でガサゴソと防具を漁る先輩、そしてそれを見る私……。


なにやらかなり奥の方まで探しているようだ。


「最近までサーブルやってる選手、うちの部には全然いなくてねぇ、エペはいたんだけどねぇ……」


「はぁ……?」


「そういえばギータカちゃん、あんたあと何センチ身長伸びそう?」


「えー、は、はい?」


「えぇ……もうそんなに伸びないと思いますけど……どうしてですか?」


先輩はため息をつきながらこういった。


「そう、さっきも言ったようにエペもサーブルもフルーレと違って体格ゲーのようなところがあってね、日本人はどうしても欧米人に身長やリーチ差、パワーで圧倒されるからいくら技を磨いても力で押し切られちゃって負けるってことが多々あるのよねぇー……」


「でも、エペは攻撃権とかそういうのないって聞いたのでわかりますけどサーブルは攻撃権があるんだからフルーレと同じように技で何とかなるんじゃないんですか?」


「そう言いたいところなんだけどサーブルは相手の手までを攻撃できることからカウンターがフルーレより入りやすいのよ、スピードも速いからはっきり言って攻撃権なんてあってないようなものだわ!」


キンキンキキンキンキッキンキキンキンキンキンキキッキーンキンキンキキキンキンキンキン!


「それじゃあ日本人の体格じゃいくら頑張ったってエペやサーブルでは……?」


「残念ながら今までの日本人の結果がそう示してることになるわね……ギータカちゃんは165㎝くらいでしょ?」


「164㎝です。」


オゥパイヨォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


「女子のエペとサーブルで一番身長の低い世界チャンピオンや五輪金メダリストでもギータカちゃんより10以上㎝は高いかな、知ってる限り……男子はさらにそれよりもう10㎝ちょっと高いってとこ」


「そんなもんなんですか……」


「そんなもんなのよ!!」


ぴぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!


「アタック、トッシェポワン。サンクアゼロ(5対0)、サ・フィニ!!」


何も教えられないまま初めてサーブルでファイティングというものを体験したがこれは本当に瞬殺されてしまった。


いや、昨日やったエペも瞬殺は瞬殺だったのだけれどサーブルは動きというか展開が速すぎるせいか本当に瞬殺されたという気分である。


「どう、これがサーブルよ?」


「いやぁ、何が何だかわからないうちに負けちゃいました~」


「最初はそんなもんよ、とにかくスピードが命、手の速さと何より足の速さそれがサーブルなのよ!」







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