第11話 グルタニカ王国の情勢とイングラデシア王国の現実

「そんな……、友好の為の婚姻で出した姫を?」

 ジークフリート殿下もアラン殿下もショックが隠せないようだった。

 王室の子どもたちは、母親が違っていても仲が良いから。


「今のグルタニカ王国の国王は良い人なのですが、事実上国政を担っているのは、アンセルム王太子殿下なので。あの方は、戦闘狂で国を大きくすることしか考えていませんから」

 私の言葉に、みんな考え込んでしまった。

 友好を結んでもいつ裏切られるかもしれない。

 そうなると対応が難しい。


「今、戦争が起きたとしたら」

 クランベリー公爵がボソッと言う。

 とても、軍人らしい発言だけど……。

「奇跡が起きても勝てませんよ。何の落ち度もない使節団を処刑なんかしたら、大義名分が出来て、短期決戦全振りでこちらに仕掛けてきます」

 イヤな予感はこれだ。アンセルム殿下がこれを狙っていたのだとしたら……。


 こっちはやっと平民向けの兵士の養成所が出来たばかりだ。

 彼らが使いものになるのは、大甘に見積もっても5年先。

 対外戦にまで持って行けるのには、10年以上先になるだろう。

 つまり、その前に外国と戦争にでもなったら、この国は終わる。

 戦争慣れしたグルタニカ王国と、なんて論外である。


 だいたい、『乙女ゲーム内のなんちゃって騎士団VS戦闘戦略ゲームのガチ系軍隊』なんて、誰が戦わせようと思うものか。


 そう言えば、向こうのゲーム。

 ゲームの性質上、仕方が無いのだろうけど……。

 ずっと同じ国と戦争しているよね。

 あの戦争って、現実では終わるのかな?


「心配せぬとも戦争を起こそうとは思っておらぬよ。他国への信用もあるからな」

 そう国王陛下が明言した。

「他にリナに聞いておきたい事はあるかな?」

 

 私から得た情報で、個人の些末的な疑問は吹き飛んだようだった。

 前世だろうが何だろうが関係ない。

 さっさと対策会議を開きたいのだろう。


「無いならこれで」

 お開きにする宣言を国王陛下が言った。

「国王陛下」

 私は手をあげて言う。

 ずっとイヤな予感がしているから。

「もしも、交渉の結果。私が相手国に行くことになってしまったら、私を処刑して首を差し出してください」

「リナ?」

 国王陛下が思わず、訊き返している。

「ああ。どうせ、向こうに連れて行かれたら私は処刑されるでしょうし。その前に自白剤使われるのもイヤだなと思って」

 なんだかみんなが固まっているけど、セドリックが訊いてきた。

「リナちゃん? なんで、向こうの国に自白剤なんてものがあるのかな?」

 セドリック、かなり動揺しているね。

 国王陛下の前なのに、ちゃん呼びしている。

「え? 私が作ったから?」


 その場にいた、全員が脱力した。

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