第10話 リナの(ゲームでの)過去の話

「団長が訊きたい事は、なんとなく想像が付くのですが。もう面倒くさいので、私の話が聞きたいという人たちを集めて頂けますか?」

「はぁ? 面倒くさいって……。まぁ、いいや。了解」

 そう言って、サイラスは行動に移してくれた。


 元々予定されていた、グルタニカ王国の使節団の城下町の視察。

 宰相を案内役に近衛騎士団が護衛に就いて行く、その日に合わせて召集しようという事になった。

 



 そして当日。

 会議に使う部屋には、結構な人数が集まっていた。

 楕円形のテーブルの席にそれぞれ着いている。


 国王陛下にジークフリート殿下、クランベリー公爵、アボット侯爵、ホールデン侯爵、そしてうちの父。

 まぁ、この辺は外交の場に立っているメンバーなので、知らないと困るってところだろう。

 後は、アラン殿下とサイラス、クリフォード、セドリック……次世代組だわ。


「さて、お集りの皆様。私の事を調べ直しているとは思いますが。リナ・クランベリーとしても、リナ・ポートフェンとしても、グルタニカ王国に関わった事は一切ありません」

 私は立ちあがって、まず最初に言った事がこの言葉だった。

「そうであろうな。領地でも、学園に入ってからもそういう形跡は一切ない。何よりも、私たち家族が知らないはずがない」

 私の横に座っていた父、クラレンス・ポートフェン宮廷魔道士長がそう言う。

 ちなみに反対側の私の横は夫であるセドリックだ。


「特に学園に入学してからは、我が国の王位継承権争いを治めるのに奔走しておったからな」

 国王陛下も同意して言った。

「リナは、生まれる前のことだと言っています」

 セドリックも私から聞いたことを言った。

 どんなに調べても私とグルタニカ王国との関係なんて、出てきようが無いのよね。

 だって、領地に居たのなんて、15歳になるまでだよ。

 学園入学後の私の行動は、今集まっているメンバーならみんなが知っている。


「そなたの言う事を信用するとして。グルタニカ王国の情勢をどれだけ把握しているのかね」

 国王陛下が率直に訊いてきた。


 どういったら良いのだろう。

 セドリックには前世という言い方をしたのだけど、キースやフランシス殿下の年齢を考えたら、私の情報は3~4年前というところだ。

「転生時の条件がどういうものか分からないのですが、私がもっている情報は3~4年前のものです。ですから、情報が古い部分もありますし、推測も入ると思いますが」

 私はそう前置きをして本題に入った。

「今、グルタニカは同じ軍事大国であるポステニア王国との戦いの最中のはずです。彼の国との戦いは長く、なんの意味も無く他国を相手にしている余裕は無い。それなのに今使節団を寄こしているのは、近隣諸国と国交を回復している我が国を無視できなくなったので、とりあえず友好を結んでおこうと考えてのことだと思います」

「という事は、今の強気な交渉で良いという事ですかな。向こうが友好を結びたいというのなら」

 私の言葉を受けて、外交の責任者であるアボット侯爵が言う。


「あちらの戦争が終結するまで、ですけどね。終結してしまえば、手のひらを返してきますよ。まず、こちらから友好の為に送った姫は処刑されてしまいます」

 私がそう言った途端、室内がザワッとした。

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