アラン王子殿下の憂鬱 3
僕たちの問題なのに、派閥の問題に僕たちはあまり関われない。
へたに動いて、僕たちに何かあると、責任を取る奴が出てくるからだ。
そうしているうちに、リナがクランベリー公に接触し騎士団に入ったと聞いた。
もうセドリックも卒業した春休みのこと。
どうも、セドリックもリナに口止めされたみたいで、こっちに情報を一切渡さなかったからな。
実際、セドリックがいなくなったら、情報が入ってこない。
そんな中、リナが我が妹フイリッシアの護衛を、2週間だけするという情報が入った。
第4部隊の隊長は、過激派だけど良識を持ち合わせてる。
宰相あたりが、頼んだのだろう。
「ネイト・オールストンです。リナ・ポートフェンを連れて参りました」
隊長の後ろから入ってきたリナは僕を見るなりゲッて顔した。何、それ?
「リナ? 女性みたいな名前だね」
いや、偽名とか使えよ。まぁ、とっさの時に反応できないからなんだろうけど……。
オールストンがリナに質問に答えるように促している。
オールストンは本当に教育係に向いてるよね。でも、悪いけど横やり入れさせて貰うよ。
リナに近づき、髪に手を差し入れて耳元でささやく。
「頼む。言うことを聞いて」
え? って顔してるね。
「可愛い子連れてきたね、オールストン。僕、この子気に入っちゃった」
「お戯れを、まだほんの子どもでございます。ここに通うのも2週間程度のもの、どうかお見逃し下さい」
まぁ、上司が部下を庇う定番のセリフだね。
だって、これ夜伽命令ってとれるもの。
ってなんで、オールストンの後ろに隠れるかなぁ。
「お兄様。私の護衛よ。取らないで」
もう、フイリッシアからも、言われちゃったじゃないか。
「ああ……妹のフイリッシアだよ。今年12歳になるんだ」
「リナ・ポートフェンと申します。短い間ですが、華のように可憐な姫君に使える事が出来て、光栄に思います」
リナが妹の前に跪いて、その手の甲に口づけをしている。
おい。
「誰が教えたんだよ。そんな礼の仕方」
つい、素が出てしまったじゃないか。
「え? サイラス・ホールデン様…ですが」
あいつか……。まぁ、いいや。フイリッシアが真っ赤になっているうちに、気を取り直して側に寄る。
「君、本当に面白いよね。とりあえず僕の部屋に行こうか。確かめたいこともあるし」
声に甘さをまぜる。リナがじっとこっちを見てる。
「命令だよ」
無防備な唇を指でなぞった。キスを催促するように……。
少しおびえを含んだ目でオールストンを見てる。
リナ、それ逆効果だから。あいつは、怯えてる子どもを差し出すようなマネは……自分の身を盾にしても、絶対にしない。
「アラン王子殿下。私の部下です。それ以上は」
「なに? 逆らうの?」
リナもまずさに気付いたようだ。
「隊長。私は大丈夫です。アラン王子殿下、命令に従います」
その怯えは演技だよね、リナ。
適当な理由を付けて護衛を押しつけてきた。
そろそろ、ジークも来てる頃だし。
ジークは、リナに会うなり手のひらを確認してた。
「で、なんで騎士団の新人やってるんだよ。養成学校も出てないのに。ものすごい特例だよね。しかも近衛なんて、順調にいっても後10年はなれないだろ?」
そういうことを言ってたら、なんとクランベリー公から司令官見習いという肩書きを付けられていた。16歳の女の子になんていう肩書き付けてるんだ。
「交渉の結果なんで、こっちにも収穫はあるんです」
「どんな? っていうか、すごいな。交渉したんだ……」
ジークが感心している。うん。あんた、まだ許して貰えてないもんな。
「私が動くときに、近衛を含めた騎士団と主立った貴族の抑え込みとの交換条件なんで」
ん? 私が動く時?
「あんまり、聞きたくないけど。聞いて良いかな?」
ジークフリートが恐る恐る訊いている。僕は聞きたくない。
「何のために?」
「え? ホールデン侯爵家にケンカ売るため?」
うん。そんな気はしてたよ。ってか、多分そうだろうと思ったよ。
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