第76話 リナちゃんは下町に行きたい 明日の報告の打ち合わせ 

 セドリックは別に何でも無いって顔をしているけど。

「あ……あの。クリフォード様、私は大丈夫ですから……すみません」

 いや、何に対する怒りか分かってしまった。

 とりあえず、仕事の話を済まそう。


「これ、異国の宝石だそうです」

 あの男から貰ったものを皆に見せた。

「今日、たまたま港に船が着いたって言ってました」

 そう言いながら、袋をセドリックに渡した。

「緑の……何の石?」

「翡翠だと思います。透明度が高くて紫色が少し入っているので、少し高いものかも知れません」

 高いと言っても、前世では100万もしなかったはずだ。知らないだけかも知れないけど。

 まぁ、安いものは何千円かで買える。


「どうしてそんなもの貰ってるんだよ」

 セドリックが訊いてくる。いや、だから仕事ビジネスモードになろうよ。

「分かりません。ただ、翡翠の価値はものによってピンキリなので。そしてこれが贋作にせものだとしても、私には、見抜ける目がありません。どちらにしろ、こちらは明日宰相様に提出する予定でしたので、明日までセドリック様が管理して下さってかまいませんよ」

 セドリックたちと接触した後、相手の認識が変わったかもって言うのは、所詮わたしの推論だ。


「何か耳打ちされてたようだか?」

 フィルが聞いてくる。今のうちに不安要素は払拭してくれるようだ。

 って言うか、セドリック、この二人の前でどんな態度でいたんだよ。

「おひいさんと言われました。料理を持って行ったときは、ボウズ扱いで、その直後、貴方方に出会っているので……。事実はここまでです」

 これだけで充分だろう。


「クリフォード様。明日、宰相様への報告時に出来れば、両団長にも同席して頂きたいのですが」

「手配はしますが。何か懸念材料でも?」

「はい。騎士団の力を借りることになるかも知れません。それと、ベネディクト・アボット候爵様にお会いしたいので、早急に場を設けて頂きたいのですが。その場合、他の護衛は連れて行けないので、クリフォード様にご同席頂けると助かります」

「私は、護衛にはならないと思いますが。その、立場的に」

「私が、ご当主様にお会いするときの肩書きは『国王代理』です。国王からの書簡を携えての会談になります。そして話し合う内容は国家機密に関わるので、宰相クラス以上の方でないと参加できません」

 参加資格は、次期宰相の座が決まってる、クリフォードまで。


 サイラス子飼いのフィルがこの場にいる以上、立場は明確にしないといけない。 

 そして、これが私に言えるギリギリだ。

「承知しました。できる限りはやく会談の場を設けましょう」

「ありがとうございます」

 クリフォードは、意識を仕事ビジネスモードに切り替えてスケジュールの確認に入っている。

 とりあえず、仕事の話はここまでだ。


 アボット侯爵に会うまでに、もう少し足場固めたかったけど。

 そのうち、なんて悠長なこと言ってられなくなったな。

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