第75話 リナちゃんは下町に行きたい 翡翠と貴族御一行様

 忙しさが一段落した頃、私も夕飯貰えた。

 賄定食にソーセージもおまけで付いた。

 フォークでつついたら転がったので、手でつまんで食べる。

 お行儀悪いかな?


「助かったよ。慣れてんだねぇ」

「うん。前もやったことあるし」

「明日からも来てくれたら嬉しいけど……無理かねぇ」

「う~ん。探しもんしてて、たまたまここに来ただけだから。でも、また食い詰めたらここに来て良い?」

「もちろんだよぉ」

 ソーセージ食べて油が付いた指舐めてたら。


「よう、お疲れ」

 って、だいぶ前に接客したおにいさんがやってきた。まぁ、レジの横だしね。

「さっきの。まだいたんだ」

「ひでーな。これやろうと思ったのに。ここじゃ、無いだろう? こういうの」

 袋に入った……なんだろう? 私は、袋の中をのぞいてみた。

 翡翠? 周りの金の細工もすごいんだけど。


「きれいだな。高そう……。こんなのもらえないよ」

「たいしたもんじゃないさ。失くさず持っててくれたら良いよ」

 へ? っと思ってたら、耳元で「お姫ひいさん」って言われた。

 なんか、遠くでガタンって音した気がするけど、

 気のせいって事にしておこう。


 違う国の……人だよね。浅黒い肌、黒の短髪の潮の香りがするおにいさん。

「じゃ、馳走さん」

「ありがとうございました」

 何でも無い風に、そのおにいさんはお金払って出て行った。

 私も、思ったより多く給金もらえた。

「少し色付けといたからね。次ぎも働くんなら、うち選んどくれよ」

「わーい。ありがとう」




 外に出ると、私と市場調査をするはずだった。お貴族様一行が……。

 いや、私も貴族令嬢のはずなんだけどね。

 とりあえず、お店からは離れることにした。


 四人で乗ってきた馬車に乗る。

 今日は私も王宮に用意して貰った部屋に泊まる予定だったから。

 乗ってすぐ、みんなに謝った。

「すみません。お腹すいて、お金無いので働いてました」

 ウソは言ってない。


「心配したんですよ」

「セドリック抑えるのに大変だったかな」

 クリフォードとフィルは、無事だったんだからもういいよ、って感じになってくれたけど。

 セドリックは、プイってそっぽ向いてる。


「それで、どうしていなくなったんですか?」

「お貴族様御一行では、まともな調査出来ないと思ったのですが。説得できないから、黙っていなくなるなんて子どもみたいな事して……」

 いや、本当に、私はバカだよ。心配されないって思ってた。

 護衛の二人は、私に何かあったら処罰される可能性もあるのに。


「まぁ、子どもだしな。年齢的には」

 フィルが言う。多分、セドリックに聞かせてるんだと思う。

「そうですね。16歳は十分子どもです。ねぇ、セドリック」

「許したら、こいつまた絶対同じ事する」

 クリフォードが、ちょっと厳しい顔になった。

「それは本当に、子どもに対する怒りなんでしょうね」

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