第66話 騎士団新人リナ・ポートフェン 剣の訓練

 顔合わせの次の日から剣術の訓練に参加させて貰っている。

 騎士団の制服はセドリックのお古を補正し、下にさらしを巻いた。

 初日は剣の持ち方から、始めて貰ったのだが……。

「そっからかよ」って隊員から突っ込みが入ったり、好奇心の目で見られるか邪魔って扱いされたりで中々順調だった。どこが……。


 まぁ、おかし持ってきたり、飲み物持ってきたりしてたからね。

 皆の分も置いてるけど、ほとんど食べない。

 たまに、宰相の執務室で顔見知りになった騎士の方が食べてくれるくらいかな?

 筋肉作るのに糖分って大切なんだけどね。

 訓練に参加し始めてから、体幹トレーニングを始め、筋トレとか走り込みとかしてるので、3ヶ月後くらいにはには少しはマシになってるはず。


 そうこう思ってるうちに、ガキーンって鳴って剣が落ちた。

 相手から思いっきり、打ち付けられたみたい。いやもう、身体中に響く。

 慌てて剣を拾った。手のひら豆つぶれてて痛いけど、平気なふりする。

「そんなへろへろじゃ、怪我するぞ」

「すみません」

 剣を握り直す。力入らないのを、無理矢理してるから結構辛い。

 構え直そうとして、右足首に激痛が走った。ヤッバ、さっき足やっちゃったみたい。


 言えないよなぁ。戦場だったら、敵は待ってくれない。 

 戦場にいったら、皆こんな思いしてるんだよね。って言うか。

 緩いくらいだよ、ここでは死なない。

 戦場だと思ったら痛くても、結構動くね、やるじゃん私。へっぽこだけど。


「何をやってる」

 突然のデカい声に、訓練している皆の動きが止まった。

 私たちが訓練しているところにズカズカ誰か入ってきた。と思ったら抱き上げられた?

「サイラス様? じゃなくて、団長」

「ここの責任者は誰だ」

 怖い顔で、大声出してる。仕事中のこの人って、こんなんなんだ。じゃなくて。

「私です」

 ルーカス・オルグレン隊長がやってきた。


「いつからここは怪我を放置したまま訓練させるようになったんだ」

 そして、私の相手の方を見て

「お前も、新人の足に不具合があるのに気づかなかったのか、馬鹿者」

 お姫様抱っこされてるから、私からもぶち腫れた足が見える。

「だ……大丈夫ですっ。降ろして下さい」

 腕を思いっきり突っぱねて、降りようとする。

「こらっ、暴れるな。危なっ」

 ズルッと、身体が落ちそうになる。とっさに抱え直された。


「このまま、医務室に行くぞ。付いてこい」

 私の相手してた騎士せんぱいとオルグレン隊長が付いてきた。

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