第65話 隊長たちとの初顔合わせ

 クランベリー公との交渉成立の2日後。

 王宮のクランベリー公の執務室にいた。今まで、入った執務室の中で中で一番の広さだ。


 なんでも、隊長クラスが集まることが多いので、この広さがいるらしい。

 今日は、約束の私がお世話になる隊の隊長たちとの対面である。

 服は……どうしようと思ったのだけど、どれを着てもお子様になるので学園の制服を着てきた。

 どうみても15歳にすら見えないんですけどね。あっ、もう16歳になったのか。いや、幼い美少女アバター選んでた自分の所為だけど。


 今更、なんでこんなことを気にするかと言うと。

 このままだと多分、絶対こんな奴の指揮で俺たち動くのかって。俺たちに死ねというのかって思われる。

 彼らも、仕事に関係無ければ優しいんだけどね。


「リナ嬢。そろそろ、部屋に入れてもかまわんかね」

「大丈夫です。お願いします」

 クランベリー公の前で弱気になってはいけない。しゃきっとしないと。

「失礼致します」

 セドリックと後2名入ってきた。

「こちらはリナ・ポートフェン殿だ。将来、近衛騎士団、騎士団双方の参謀を担う一員として、私が育てていきたいと思っている人物だ。まずは司令官見習いとして貴殿ら3部隊の有事時の指揮を任せたい。とはいえ、まだ王立学園の卒業まで1年を残す学生だ。色々教えてやって欲しい」


「はっ」

 3人が騎士の礼を執った。

「それでは各自、自己紹介したまえ」

「近衛騎士団第3部隊隊長 アイザック・マーティンソンであります」

 赤毛の短髪で、3人の中で一番温厚そうな顔をしてる。

「騎士団第5部隊隊長 セドリック・クランベリーであります。自分の部隊は、諜報を主としております」

「騎士団第7部隊隊長 ルーカス・オルグレンであります。実戦部隊であります」

 茶色い髪が金髪に近くなってる、体力ありそう。


 さっ、リナ嬢もと促されて。

 私は、ふぁっと微笑んだ。

「わたくし、リナ・ポートフェンと申します。皆様よろしくお願いしますわ」

 多分、令嬢としては完璧。司令官としては最悪の、令嬢としての礼をとった。だよ。

 セドリック以外は、微妙な顔したもんね。鬼上司の前だもの、よく頑張ったよ。

 でも、何考えたんだか、よく分かった。

 こいつら、このままだったら絶対私に協力なんかしない。断言できる。


 セドリックを残し、2人が出て行った後、クランベリー公に言った。

「私、ちょっと地に落ちますわ」

「ほう?」

「ほう? じゃぁ無いでしょう。あんな紹介して煽っておいて」

「それに乗って、さらに煽ってなかったかね」

 それは、そうなんだけどね。

 でもまぁ、お陰で覚悟が決まったよ。


「彼らと一緒に訓練できる段取りくんでもらえます?」

「お嬢さんには、過酷じゃぁ無いかね」

 突き落とした本人がよく言う。

「過酷だろうが地獄だろうが、這い上がってくるしか無いでしょう。このままじゃ、いつまで経っても使い物になりません」

「彼らがかね?」

、です」

 私は、む~っと膨れた感じでクランベリー公を見た。クランベリー公の方は無表情だ。

 セドリックは口出をせずただいるだけの存在になっている。まぁ、私の護衛として残っているのだろうから、妥当な態度だ。


「わかった。段取りを付けよう。剣は扱った事無いのだったな。馬は乗れるかね」

「自在には乗れません」

 全くの初心者じゃ無いけど、田舎は馬が無いと移動できないから。

 ただ、その程度だ。騎士のように、自在に操って戦ったりは出来無い。

「承知した」



 護衛のセドリックと一緒に、私は執務室を退出した。

「リナちゃん。さすがにアレは親父にも想定外だったと思うけどね」

「セドリック様だって何も言わなかったじゃないですか」

「俺がリナちゃんの立場でも同じ事言ってたからかな。言うこと聞いたふりだけされても困るもんな」

「うん。それでセドリック様、お願いがあるんですけど」

「言わなくても分かる、あんたの過保護部隊抑えとく」


 過保護部隊……なるほどそんな名前付けてたんだ。笑える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る