第5話 乙女ゲームの中の現実

 数日たって分かったのは、意外というか数が少ないからか、1年でも2年でも伯爵家以上の身分の方々がハメを外すことは無いと言うこと。

 そもそも、下位貴族に関心を持たない人が多い。

 学園内の出来事は他言無用とはいえ、警戒しているのだろうか。それとも単に相手してない?


 私といえば、最初に絡んできたたちと仲良くなっていた。

 とはいえ、ジークフリートに会いに行くときに強引に誘われるのは、辟易へきえきしている。逃げるためとはいえ、ステキ期間なんて教えるんじゃ無かったかな?



 今は、中庭につくられたカフェテラスにいる。

 私はいつものようになるべくジークフリートの目に入らない端っこに座る。

「リナ嬢は、私といても楽しくないかな?」

 シークフリートは、そう言って少し心配そうに、だけど惜しみない笑顔を向ける。いや、少しは惜しんでくれ。まぶしすぎる。


「とんでもございませんわ。ジークフリート様」

 学園内で王太子殿下という訳にもいかず、名前を呼んだ。

 確か、自分より身分の高い方を名前で呼ぶのは失礼にあたるんだよね。

 でも、この世界の王族にファミリーネームは無い。

 そう思いつつも、無邪気な笑顔を向けた。


「そう?」

 と訊いてきたジークフリートに笑顔だけを返した。それを確認したら、すぐに他のたちと話し出す。なんだかなぁって感じで、心の中でため息をついた。

 そういえば、誰かがため息交じりに言ってたな。

 もうすぐ始まる社交シーズンでデビュタントしてしまったら、王子様たちとの交流も控えないと縁談に差し障りが出てしまう。だから本当に今のうちなんだよね、って。


 誰も天と地ほども離れている身分で自分がお相手になれるとは思ってないんだと。何の地位も権利も無い公妾にはなれるかもしれないけど、側室や、ましてや王妃になんかなれやしない。功績でなった一代限りの男爵家でもなければそんな地位、喜ばない。そんな感じで……。

 女性はデビュタント、男性は卒業後の交流を考えたらステキ期間とはいえ、貴族の枠にはまるしか無いのか。


 そっと、皆のそばを離れる。


 ジークフリートは気づいたようだけど、何も言わない。私は、知らんふりをして中庭を抜けた。

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