第4話 初めての学園の教室 イベント回避に努めます

 昨日、あれからずっと鏡とにらめっこして表情のチェックしていた。

 マリアからは気味悪がられたけど、ある意味自分の慣れ親しんだ顔じゃ無いんで、どんな表情しているのか覚えておく必要があるのだ。


 新入生歓迎の夜会の時のことは、王太子の気まぐれで、何も無ければ良いけど。

 ゲーム通りだと好感度アップのイベントがまたある。

 回避不可の夜会イベントと違ってこのイベントでは逃げ道があるはず。

 おとなしく目立たずを貫いたら帰れるはず、多分。

 無事2年後に、お家に帰るためにも頑張らなければ……。


 朝、マリアに制服に着替えさせてもらって……身分差が出ないようにモスグリーンのシンプルな丈の長い、ワンピースとドレスの中間のような制服だ。ちなみに男子はスーツのような制服……学園の教室に向かう。

 さあ、甘ったれで無知で、善良な少女を演じよう。……無理か、でも頑張る。


 今日から授業が始まるので教室に入ると、4~5人で固まってしゃべってた女の子たちがこちらにやってくる。


 教室の前の方ではジークフリートとアラン。少し離れてジークフリートの婚約者、乙女ゲームでの悪役公爵令嬢のエイリーン・マクレガーが席に着いている。

 後はクラスメイトがぱらぱらと、まだみんなそろって無い様子。

 そういうことに気をとられてたらこちらにやってきた女の子たちに声をかけられた。

 

 ゲームと同じだったら下位貴族のご令嬢たちのはず。

「リナ・ポートフェン様。夜会では、ずいぶんお楽しみだったようね」

 もったいぶった言い方をする。

「はぁ」

 それに対し、私はキョトンとしてみせる。何のことか分かりませんって。


 その様子に相手はイラついたようだった。

 意地悪そうな表情。自分の感情を隠そうともしない、いかにも……って感じ。

 一人の女の子を複数人で囲むだけでも、周りからどう見られるのか、気づかないのかね。まぁ、夜会でやらかした私に言われたくないでしょうが。


 チラッと横目で見たら、案の定王子たちがガン見してるよ。

「貴女、もう少し立場わきまえた方が良いんじゃないかしら」

「立場……」

 ギリギリ身分って言ってないか……。

 うつむいて見せる。泣いてるように見えたのか、王子たちが席を立ってやってくる。

「この学園の中で、立場……身分差のことを言うのは御法度ですわよね」

 ややうつむき加減で上目遣いにそう言うと、囲んでいた女の子たちがギクってなった。


 中心人物らしい女の子の手を両手でとって、私の顔のところまで上げ、祈るようなポーズで訴えてみる。

「下位貴族の私たちが、王子様方にお近づきになれる機会なんて、今しか無いんですよぉ」

 意地悪そうな顔が、ハッとなるのが見えた。よし、後もう一押し。


「せっかくの不敬罪が成り立たないステキ期間じゃないですかぁ。皆様もお近づきになれば良いのに」

 元々、貴族の令嬢なんて少しでも良い縁談をと、夜会お茶会と奔走する肉食女子だ。しかも、私に嫉妬して王子たちがいるにもかかわらず詰め寄るという頭の持ち主。

 ちょっと示唆するだけで、こっちにやって来ようとしてた王子たちを取り囲んだ。


 ジークフリートとアランは、私を助けようとしてやって来たはずなのに、自分たちが餌食になるとは思ってなかったようで、わたわたしている。

 うん、ハッキリ笑顔が引き攣ってるよ。

 タスケテクレテアリガトウゴザイマス……ゲームのセリフを脳内で棒読みしちゃった。


 いや、本当……なんか、ごめん。

 でも、好感度上げるような接触するイベントはキャンセルの方向でお願いします。

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