第3話 目指せ、ノーマルエンド
このゲーム、私が持っているゲームの中でも簡単単純ハッピーエンドだったはず。
バッドエンドは避けてたので思い出せないけど、攻略対象を誰もゲット出来ず卒業して田舎の領地に帰るノーマルエンドを目指したい。
後々VRゲームになる予定の試験的に発売したゲームで、お値段も安い。
攻略対象も2人と少ない。
その代わり、主人公のアバター設定が出来て、そのアバターによって攻略キャラたちの性格や受け答えが変わってくるというもの。
ネットのコメント欄には、何人も攻略キャラがいるみたいだとか、好みのキャラから変えれないとか、結構高評価であふれていた。
ゲームの内容はしっかり説明書に書いてあって、現実の世界で言うところの中世の欧州を模した感じらしい。
なんちゃって中世欧州だから、色々突っ込みどころ満載だけど、気にしてたら楽しめない。
王都にある貴族階級の15才から18才までのご子息、ご令嬢の皆様が集まる、学園シミュレーションものだ。
15才から18才の間に2年間通えば良いので女性は15才男性は17才になる年齢から通う事が多いらしい。同学年でも年齢がまちまちなのだ。
ちなみに、攻略対象者は2人とも入学時17才で主人公は15才。
主人公は、今シーズン社交界デビューの予定。
この学園にいる間は、王族だろうが下位貴族だろうが、身分の格差は無い。
学園外の社交界でも、ある程度までだったら社交場での失敗は見逃してもらえるステキ期間なのだ。
学校の目的は、様々な階級の方々と交流を持ち、見聞を広げるというものらしい。勉強は、ある意味飾りなのだ、多分。
攻略キャラは、第1王子で王太子のジークフリート。王子様のテンプレって感じで金髪碧眼の美形キャラ。
もう一人は、第二王子のアラン。濃いめの茶色の瞳と癖毛の弟キャラだ。
「シンデレラ・サクセスストーリー」というタイトルから察するように、主人公の身分は子爵令嬢と低い。だが、ハッピーエンドではどちらのルートでも王妃までのし上がる。
ゲームでは、ライバル令嬢に勝って学園内でカップル成立ってところで終わる。
そしてエンディングロールで、国王と王妃になって国を平和に導きましたと、2人がお城を背に仲睦まじく並び立っているスチルが出てくるだけ。
途中経過が全く分からない。
ゲームしてたときは、気にならなかったけど……常識で考えてどちらと結ばれても王妃になりましたエンド、しかも、子爵令嬢が。ないわ~。
すっ飛ばした途中が怖すぎるんですけど……。
ここまでが、前世の記憶。
ここからは、さっき頭に入ってきた記憶なんだけど。
この世界の私は、片田舎の平和な子爵領で父親と兄2人に溺愛されて育っている。
母親は、幼い頃に既に他界していて止める人がいなかったのだろうか。
この世に、悪意があることすら隠されて、下位貴族の令嬢としてというか、奥方として困らない程度の教育しかされてない。
上の兄は成人してもう少し遠方の領土を任されている。下の兄はこの学園の2年生。
そういえば、昨晩の夜会の取り巻きの中にもいたっけ。
いや、あの夜会で王太子のパートナーにならないとゲームが始まらないとはいえ、現実的にはやらかした感が半端ない。
身分以前に、婚約者がいる男性のパートナーって人としてどうよって感じがする。なんか、ゲーム通りに進めたら、あっという間に人生詰んじゃいそうだな。
さて、どうするか……。
この世界の私は、超世間知らずの甘ったれお嬢だけど、中身は世間ずれ、悪意まみれ上等の30代喪女なんだよね~。
もう一度、鏡を見る。
権力もチート能力も無い。私の武器はこの容姿と私の前世での経験。いや、生きてるかもしれないけど。
順応力高すぎないか? もっと焦ったり泣いたりするもんじゃないか? と、言うなかれ。それやって何か改善する?
私の経験じゃ、事態が悪化したことはあっても、改善したことは一度も無い。
っていうか、不測の事態で泣いて立ちすくむような可愛い性格してたら30代でバリバリトップの営業ウーマンなんてやってない。
泣くのは万策尽きたときでも遅くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。