第4話
通路の壁面を触ると、ハイライトされていた扉が音もなく開く。いや、これはホログラムだったのか? しゃがんで入ると低くなっていたのはそこだけで、すぐに通路になっていた。ドレイクが体の幅を無視してチュルンとついてくる。
現実であれば通路の高さは3m程だろうか。幅は先程の通路よりだいぶ狭い。天井部が等しく発光して照らしている。そしてその先には……コンテナ! すなわち宝箱!
走り寄りながら【トラップ発見】を起動。結果、グリーン。隠し通路に隠されている関係上、再度トラップを仕掛けるような意地悪はしないのだろう。
円筒を倒した形のそのコンテナは、タッチすると圧縮空気の音をたてながら上部が後方にスライドして開く。
光の粒子が立ち上り、おれの身体に吸い込まれると、複数の獲得SE。
ログを読む。まずはポイント。今日のノルマのおおそ四半分ほど。やった!
次にエピック級の『未鑑定の騎兵銃<カービン>』。現ステータスで装備可能。追加効果に期待だ。
続いては同じくエピック級の『未鑑定の片手剣』。これは装備不可。つまり今装備しているものより何段か高性能ということだ。
そして……
「『未開封のクリプトグラム』……?」
聞いたことのないアイテムだ。種別すらわからない。しかも、未開封? 未鑑定ではなく?
思わず詳細を調べる操作をすると、『開封』されて目の前に便箋のような平べったいアイテムが出現し、一瞬の後、画面が砂嵐状に乱れる。
青紫色のざあざあと乱舞する描点が溢れ出し、それが形を変え集まるように文字になり、おれのヘッドマウントディスプレイ全面に表示された。
全感覚投入型仮想現実機器基礎理論
「……は?」
思わず声が漏れる。現実の声が。
潮が引くように画面が正常に戻り、封筒は再び粒子化してインベントリに収まる。『開封されたクリプトグラム』。なるほど。
それと交代するように、後ろから破壊的な轟音。こちらはゲーム内。いつも思うが左右のヘッドホンで四方の方向が分かるのはどういう仕組みなんだ?
振り向くとそこには、ひび割れる壁。ありえないことだ。それは破壊不可オブジェクトじゃないのか? そんなおれの考えをあざ笑うように壁が砕け散り、今日のメインターゲットであるところの『マシナリー・リーダー』が現れた。
赤い目。戦闘モード。戦う準備満タン。
……本来であれば、部屋に侵入し、ワンテンポ後にこちらに気がついたときになる状態。
重ねて、ありえないことだ。
こうして戦いの火蓋が――チュドォォォォン!!――おい空気読め!
グレネードの爆風を背に、おれは『マシナリー・リーダー』へとダッシュした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます