ファンタジー? いいえ、理不尽です。
■
「ふむ……ここか」
髪の毛が焔の様に揺らめき、高温でその体表に陽炎が発生する。
ネビュラシオン四天王が一人・イフリート
彼はただ一人でとある場所へとやってきていた。
「――おい、何をしている? ここはコスプレ会場じゃないぞ」
そんなイフリートに声をかけたのは、イフリートがいる目の前の施設に所属する人物だ。
「コスプレ、か……まったく嘆かわしい。目の前の状況も正しく把握できないとはな」
イフリートの態度に苛ついた表情を見せたその人物は、面倒ごとを起こしたくないのか平静を装う。
「何を言っている? さっさと立ち去れ――熱っ!?」
警告しようと接近し、そこでようやくイフリートの周囲が異常に高温であることに気が付いたようだ。
「――自衛隊に関しては殺すことは許可されている。
逃げるなら追わぬが、邪魔立てするなら骨すら残さず焼き尽くそう」
その言葉と共に、イフリートは炎を解放する。
一二:三〇 イフリート、関東某所自衛隊基地 襲撃開始
■
イフリートの襲撃と同時刻、ライオットとその部下の精鋭の怪人の総勢10名がいた。
「なんだ、あれ?」
「コスプレ?」
「いや、撮影じゃないのか?」
「なんかのゲリライベントか?」
明らかに普通じゃない風貌の10人の姿を見ても、その場から誰も逃げようとはしない。
むしろイベントの一環だと思っているのだろう。
「平和ボケしているな、本当に」
苦虫を嚙み潰したような表情でつぶやくライオット
獅子の顔がそう歪むと、マスクだと思っていた者たちがその様子をスマホのカメラで撮影して歓声をあげた。
「ボス、どうします?」
「放っておけ。一般人には手を出さないルールだ。
ひとまずはこの施設を占拠する。
お前らもわかっているな?」
「当然です。この局が潰れたら俺たちの娯楽が大惨事ですから。でもアニメとかどうでもいいですよね」
「ええ、まったくもってその通り。
とりあえずどうでもいいスポーツ局は潰して良いですよね? あれで大事なアニメの放送時間がズレるんです」
「は? テメェぶっ殺すぞ。今のリーグ戦の熱狂がわからねぇのか? アニメなんてガキの見るもんだろ」
「は? 今のアニメはちゃんとした大人の娯楽だっつうの。だいたい、たかがボールを投げて打っての何が楽しいんだよ馬鹿じぇねぇの?」
「あ?」「あ?」
スポーツ派とアニメ派のしょうもない争いを繰り広げる犬頭と猿頭の怪人。
犬猿の仲をこんなところで再現しなくても……
「やかましい、さっさと行くぞ!!」
「「「「はいっ!」」」」
同時刻 ライオット 関東某所 日本最大規模TV局 襲撃開始
■
さてさてさてさて……僕、ゲイザー改め、菊池斗真は、ひとまず先ほどのショッピングモールにフォラスに送り届けてもらった。
トイレから出るとショッピングモールの中は人気がなかった。
外からサイレンの音が聞こえることから、おそらく警察が外に集まっているのだろうし、窓の外を見ると救急車も見えた。
今回の騒動で怪我をした人が運ばれているのが見える。
まぁ、死人は出てないのは確認済みなので別に興味はない。
「……さて……どうしたものか」
息をひそめて目を凝らすと、先ほどのグラトニーが出現した場所にあのマスコットが見える。
そしてグラトニーが明けた穴の近くにずっといて様子をうかがっているようだ。
フォラスの話では、あの穴は地下駐車場まで貫通しており、そこに日向萌香と上司……柴野奈月がいるらしい。
「まったく……やり過ぎなんだよ、フォラスもグラトニーも」
元々は僕がボロを出したのが原因であるが、魔法少女たちが動けなくなっては今回の作戦の根底を揺るがしかねない。
「はぁ……どうにか二人を復活させるためには……まぁ、日向萌香は大丈夫っぽんだけど……上司がなぁ……色々こじらせてるからなぁ……」
基本的にモブムーブに徹する僕としては、過剰な励ましは絶対にできない。
さりげなく立ち直るきっかけを与えられればそれがベスト
だって彼女たちは一人じゃない、五人+αなわけで、あとはそっちに任せておけば親密度も深まって一石二鳥。
「……いや、そもそも菊池斗真としては柴野奈月とは会ったことが無いんだから、励ますのは変か。
っていうか、日向萌香が立ち直れば向こうが勝手に何とかするよね、彼女の性格なら、うん、そうだ、それでいいや」
無理に柴野奈月を励ます必要はない。そう思うとなんか気楽になった。
「よっしゃ、悩んでても時間の無駄だ。
当たって砕けろ、だ。どうせモブだし誰も気にしないさ」
というわけで、菊池斗真、いっきまーす。
■
「う、ひっく……!」
「…………」
「……二人とも、ひとまずこの場から移動するポム。
警察がすぐにここにくるポム」
地下駐車場で動かなくなってしまった二人にそう声をかけるパロンだが、当の魔法少女二人はその場で座り込んだまま動かない。
すでに二人の服装は魔法少女のそれではなく、私服姿になっていた。エナジーの制御が出来なくなっているという証拠である。
そんな二人を見てどうすべきかとパロンが悩んでいると、人の声が聞こえてきた。
「おーい!」
誰か来たのかと思ってその場でぬいぐるみの振りをするパロン。
「日向さーん! どこにいるのー、日向さーん!!」
「っ!?」
聞こえてきた声にパロンは驚きに息を呑む。
「え……なんかここ臭っ……溶けてる? 溶けてない? え、大丈夫これ?」
能天気な声が地下駐車場にまで聞こえたのか、それまで俯いていた日向萌香は顔を上げた。
「……菊池先輩?」
「……え」
「うわ、なにこれ、欠陥工事……って……え、日向さん!?
え、大丈夫、もしかしてここから落ちたの!?」
人形の振りをしているパロンのすぐ近くで穴を覗き込む菊池斗真は、そこから見える日向萌香を見て取り乱す。
「……せ、先輩……無事、だったんですか?」
「いや、何があったの?
僕ちょっと……その、トイレにこもってて今出てきたんだけど、外には警察出てるしモール内は人がいないし……しかもなんか床とか壁溶けてるし……って、そうじゃない。
日向さんと……えっと、そっちの子も大丈夫? 怪我はしてない? 救急車外に来てるからすぐに隊員さん呼んで来るよ!」
「あ、いえ、私も……奈月ちゃんも大丈夫です」
「いや、大丈夫だったらそんなところで座り込まないでしょ!
とにかく今からそっち行くからちょっと待ってて!
えっと、確か下に行く階段があっちに会ったはずだから……本当に、すぐ行くから待っててね!」
かなり慌てた様子でその場から離れていく菊池斗真
その姿を確認して、日向萌香は唖然としてしまう。
しかし、先ほどまでの暗い感情はもうそこには無かった。
「……人違い……だった? えっと……じゃあ……あの人は……」
「…………そう……違ったの。でも……だから何だって言うのよ」
菊池斗真が死んだと思って悲しんでいた萌香は、実際は菊池斗真が生きていたということに混乱する一方、奈月にとっては菊池斗真が探していた人物だったかどうかはどうでもよかった。
ただ、彼女にとっては探していた人物が目の前で死んだというショックの方が大きかったのだ。
「……あいつは死んだ。
もう、戻ってこない」
「奈月ちゃん…………ごめんなさい、私が……あの人の足を引っ張って」
「それは違うポム。あれは萌香のせいじゃないポム」
“下僕”が死んだ(と思っている)時のことを思い出し、自責の念に駆られた萌香を、降りてきたパロンが即座に否定する。
「彼の行動は最後まで謎だったポム。
しかし、間違いなくこの場にいた誰よりも人々を守るために動いていたポム。
そして彼も萌香と同じように、あの時、あの場にいた子どもを守ろうとしたポム。
……だから…………萌香があの時どうしようと、結果は変わらなかったポム」
「それは……」
キツイ物言いだったかもしれない。
だけど、ここではっきりと彼女に罪はないということだけはパロンは奈月に理解してもらいたかった。
そうでなければ、彼女たちの絆に取り返しのつかない亀裂が生じると思ったのだろう。
故に、彼女たちから嫌われることを覚悟でこんな言い方を選んだ。
「誰かが悪かったなんて、そんなことは絶対に無いポム。
もし悪者が存在するというのなら、それは間違いなく、ネビュラシオンだけポム」
その時、奈月の中で何かがピースに嵌った気がした。
パロンとしては、ただ萌香は悪くないということを強調するという意味合いだけの言葉だったのだろうが……しかし、今、その言葉が決定的な、それでいて意図しない方向へと奈月の感情を昂らせる。
「……そうよ。悪いのは、あいつらじゃない」
「奈月ちゃん?」
今まで力なく俯いていた奈月が、拳を握りしめながら立ち上がった。
同時に、パロンは自分が迂闊な発言をしてしまったのだと悟るが、後の祭りであった。
「私から全部を最初から奪って……また私から奪った。
――許さない……絶対に、あいつらを……許さない……!」
強い怒りのこもったその言葉が口から出た。
同時に、彼女の服の内側に隠れていたネックレスが光を放ち、一瞬にして魔法少女の服装に変わった。
見た目に変化はないが、身にまとう雰囲気は先ほどとは異なる。
むしろ――ネビュラシオンの一員として活動していた時に近いエナジーを発している。
「ネビュラシオンを……駆逐してやる」
――復讐の魔法少女が、動く。
ちなみに…………
「……これ、僕は絶対に悪くないよね。うん、戦犯はあのマスコットだ。
いつかあの首引きちぎってやろ」
離れた位置に止まっている車の影からその様子を眺めていた菊池斗真ことゲイザーがパロンを抹殺対象に加えた瞬間である。
流石に今はやらないが、魔法少女たちに不可欠な存在ではなくなったと判断したら殺そうと考えるのであった。
パロンさんチョー逃げて、こいつマジでやる奴。
■
関東某所自衛隊基地は今、大混乱の真っただ中にいた。
「撃て、撃て、撃て!!」
「ここで止めろ、絶対に先へ行かせるな!!」
銃火器を構えるのは基地にいた自衛隊員
火薬の臭いが周囲に充満し、マズルフラッシュが紫煙の中で光る。
そして発射される無数の銃弾が、たった一人に向けられていたのだが……そのすべてが、見えない壁によって阻まれる。
「初歩的な障壁すら突破できないか……温いは!」
銃撃の雨を放たれ続けながらもまるでそよ風の中を歩いているかのように悠々と進むイフリート
手を軽く上げると、銃が赤熱し、爆発。
銃を持っていた隊員のほとんどがその爆発を受けて負傷する。
中には手首から先が無くなった者までいた。
「感知もできないか」
その場は阿鼻叫喚となったが、イフリートはそんな彼らの悲鳴など歯牙にもかけずに前へ前へと進む。
その先にあるのは巨大な格納庫。
そこには大量の銃火器があるのはもちろん、戦車や装甲車、迫撃砲といった、この基地においての最大戦力がある。
「……中で待ち構えているようだな」
格納庫の扉の前で中にいる熱源を察知するイフリート
「……ふむ、どれ、この世界の陸戦兵器の火力を見せてもらおうか」
待ち伏せのことを承知で、イフリートは目の前の扉を一気に炎で溶かす。
鋼鉄製の分厚い扉が数秒で溶解するその様にはもはや恐怖を通り越してただただ驚愕を覚える事実。
現に、扉の向こうにいた自衛隊員も数名が唖然としていた。
しかし、全員がそうではない。
「
合図と同時に轟音が響き渡る。
物凄い衝撃は倉庫の中へと伝わり、あまりの爆音に周囲の音が何も聞こえなくなる。
――戦車砲
陸戦兵器において最強に数えられる壁が、たった一人の炎を魔人に向けて放たれたのだ。
分厚い装甲を丸くくりぬいた様に穴を開けられるその砲撃を受けて、まともに形を保っていられるはずがないと、その場にいた誰もが勝利を確信した。
「――なんだ、この程度か」
しかし、そんな中でもつまらなそうなその声は嫌によく聞こえてきた。
べチャッという、まるでペンキでもこぼしたかのような音がし、おそらく、砲弾だったであろう鉄の塊が地面に落ちる。
「奴と同じ出身だからと少々警戒していたが……やはり奴が異常すぎるだけか。
魔力も無く、障壁も熱も次元干渉すらすべて突破するあの理不尽な拳と比べれば、赤子の駄々と同じようなものだ」
心底落胆した問わんばかりの表情で、イフリートは手を前にかざす。
そこから放たれる炎は、格納庫の中にいた人も、戦車も、装甲車も銃火器も一切に分け隔てなく高熱で包み込む。
鋼鉄を即座に溶かしてしまうその炎の前に、人の姿は数秒で崩れていき、銃火器や燃料にも引火を引き起こし、爆発を引き起こす。
「制圧完了、か」
格納庫から出てきたイフリートはそう呟いた。
そして、その炎はすでに格納庫だけでなく、その周囲全体をとっくに焼き尽くしていたのだった。
火の海とは、この光景をいうのだろう。
「……さて、予定よりだいぶ早いが、どうすべきか」
もう少し粘られると思って気合を入れていたイフリートにとっては肩透かしを受けたような気分で、周囲の光景とは裏腹に不完全燃焼な気分であった。
「――これ、あんたがやったの」
「む?」
本来人間ならば呼吸をするだけで喉が焼けるような中で、少女の肉声が聞こえた。
赤い、自分と同じ気質のエナジーを放出する少女の姿を見て、イフリートは目を細めた。
「……なるほど、なるほどな。
奴が執心していた理由が、今欠片くらいは理解できたぞ」
ガーディアンズは利益などではなく、純粋な善意で協力してくれる物質文明の旧人類を味方にしたがっていた。
下手に自分たちの技術を公開してその世界の文明へと影響を与えることを恐れたからだ。
なおかつエナジーを高出力で発生させられることも重視され、温和な少女が選ばれやすい傾向にあるという。
その事実を知っていたイフリートは内心でガーディアンズという存在を軽蔑していた。
他者に戦わせるだけでも恥だというのに、戦を知らぬ少女を戦場へと唆す等言語道断と。
故にイフリートは積極的に前線に出るということはしてこなかったのだが…………目の前の少女はどうだろうか?
過程はどうあれ、結果的にはガーディアンズに良いように利用されている操り人形――そう思っていた。
だが、その実物は今、自分と同質――最も好ましいエナジーを放出しているという事実に口角が吊り上げっていくのを実感した。
「何一人で意味の分からない納得してるのよ。
これ、あんたがやったのかって聞いてんだけど」
勝気な雰囲気のある少女の目には、明確な怒りが見えた。
手足を見れば、武道の心得など一切無い素人だとわかるが、それでも下手な行動をすれば目の前の少女は間違いなくこちらを攻撃してくる。
「然り。我以外に、ここまで短時間に制圧が出来るものは精々……総帥のくらいだろか。
いや、奴がもっとも本気でやれば地形が変わるか」
「――ふざけないで! ここにいた人たちはどうしたの!!」
「それならば、ちょうどお前の足元にあるぞ」
「……は?」
イフリートの言葉の意味がわからない少女は、足元を見てもそこには人などいない。
あるのは精々、燃えた真っ白な灰があるくらいだろう。
「あまり死体を残すなと言われていたのでな、すべて焼き尽くして灰にした」
「――っ……あんた、よくも……!」
「なんだ、知り合いでもいたのか?」
「そんなの関係ない! 人の命を、なんだと思ってるのよ!!
絶対に、私はあんたを許さない!!」
そう叫んだ少女から放出されるエナジーがさらに濃くなった。
「ふっ……――ネビュラシオン四天王が一人・イフリート!
名を名乗れ、魔法少女とやら!!」
「あんたみたいな奴に名乗る名前なんてないわよ!
っていうか何よ魔法少女って!」
そう叫び、炎の魔法を行使する高坂茜。
手には炎を纏った剣が出現する。
今、二つの炎がぶつかり合う。
■
「はいはいはーい、TV局のみなさんは動かないでくださいねー!
食べちゃうぞー!」
ワニのような頭部をもつ怪人の言葉を受けたTV局の関係者たちは、何が起きたの変わらない顔のまま自分のデスクに座っていた。
「まぁ、動けないんですけどね~」
より正確に言えば、座らされ続けていた。
突然、変な動物マスクの集団が侵入してきたかと思えば、その場にいた全員が金縛りにあって誰も椅子から立てなくなったのである。
最初の驚きはなくなり、今は不安と恐怖に呑まれていた。
「ほーほーほー、なるほど、これをこう使うのか……へぇ」
もう一方でイルカ頭の怪人は先ほどから動けなくなっている者たちの頭に触れている。
触れられた者は何をされているのかわからずに震えている。
彼らは今、イルカ頭の怪人に記憶を探られているのだ。
そして、それらの記憶の中からとある情報をぬきとり……!
「な、なにぃ!?」
突如、驚きに声を上げてその場に崩れ落ちた。
「お、おいどうした?」
ワニ怪人が心配そうに声をかけると、イルカ怪人は声を声を震わせる。
「――楽しみにしてた、月9ドラマのネタバレ食らった……!」
イルカ怪人・趣味 ドラマのリアルタイム鑑賞
「………………すっげーどうでもいー」
「……ちなみに、お前が好きなあの対決番組、8割やらせだった」
「はぁああああああああああああああああああああ!?」
「金曜日に見てるバラエティー番組の女子アナ、このオフィスに不倫相手いた」
「いやだ、やめろ、そんなの聞きたくないいいいいいいいーーーーーーーーーーーーー!!」
ワニ怪人・バラエティー番組大好き。女子アナも好き。
「って、何暴露してんだてめぇ!?」
目を血走らせてイルカ怪人に掴みかかるワニ怪人。
「俺たち、仲間だろ?
辛いことも分かち合おうかなって思って」
「そんな誰も幸せにならないのは分かち合いっていうか一種のテロだろうがぁ!!」
「ははははは、ナイスジョーク! 俺たち今、テロリストだからな!」
「かけてねぇしうまくねぇんだよ!!」
『――おいこら』
低くうなるようなその声に、ワニ怪人もイルカ怪人も動きが止まる。
姿はこの場に無い。通信魔法を使用しているのだろう。
『さっさと仕事を進めろ』
「「あ、はい」」
局員たちには何が起きているのかわからないが、イルカ怪人は先ほどより手早くオフィスにいる者たちの記憶を探っていく。
そして、一方でTV局の入り口と一階フロアに待機していたライオットは一人、腕を組んで待つ。
周囲には人がいない。
――より正確に言えば、生きている者はいない。
TV局に不審者がいるという通報により駆けつけた警察官は、文字通りにライオットは首を一捻りして殺してしまったのだ。
そのすぐ後に応援もやってきたが、どれも瞬殺だった。
死体に関しては、血痕位はいいけどそれ以上にグロイのは残すなと念押しをされていたので、わざわざ首の折れた死体を元に戻しておいた。
「はぁ……イフリートに変わってもらった方がよかったか?
いや、あいつじゃ絶対にこの建物ごと破壊してたか」
面倒な役を押し付けられたと内心腹を立てていた時、今この状況でこちらに近づいて来る者がいることを察知したライオット。
見れば、青と緑の衣装の少女がいた。
「……来たか。
一応、決まりごとなんで名乗ろう。
ネビュラシオン四天王が一人、ライオットだ」
「っ……四天王……!」
「じゃあ……ネビュラシオンでもかなり強いってことじゃ……」
名乗りを聞いて青い少女は驚愕し、緑の少女には怯えの色が見える。
しかし、すぐに眠っているように見える警察官の死体を見て敵意を向け直してきた。
「その人、どうしたの」
「殺した」
青い少女――皆瀬蒼の問いに淡々と答えるライオット
そしてその返事を聞いて、意外にも緑色の少女――小緑風花が強い怒りのエナジーを放出する。
「あなたたちは……そうやって、簡単に人の命を奪うんですね……!」
「普段大量に殺した家畜の死体を貪り食う旧人類が命を語るか。
命を奪ってきた総量で言えば、俺はお前らよりはるかに善良だぞ。
それとも、人間の命だけは特別だと思っている口か?」
「――そんな詭弁に耳を貸すつもりはない」
そう答えた蒼の手に、青い弓が出現し、風花の手には緑色の槍が出てきた。
「おいおい、話題振ってきたのはそっちだろ」
相手は多感な思春期の少女。
相手の言葉を論破して精神的な揺さぶりをかけようと思っていたライオットは蒼を面倒くさそうに見る。
だが、その脳裏につい先日の、寸止めされた拳を思い出してため息をついた。
「まぁ……あの野郎と比べれば全員ザコか」
組んでいた腕を解いて構えを取る。
「かかってこいよ魔法少女ども
格の違いを教えてやる」
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