第2話 エリート会社員、知る
目はクリッとして大きく二重、うす汚れた長袖の白いシャツと、ぼろぼろの長ズボンを履き、見える首は折れそうなほど細い。その少女を見た瞬間、幸太は前に見たニュースを思い出した。
『近年増加傾向にある捨て子を保護する団体が...』
まさか。
「ねえ、お兄さん、1人ぼっちなの?」
言われて、ハッと気づいた。俺は、1人ぼっちなのか。
「君もそうなの?」
恐る恐る聞いてみる。
「ううん。私はお母さんいるから」
「...そっか」
内心、ホッとするのと同時に、少しだけ悲しい様な、虚しい様な気分になった。結局は誰しも、1人では無いのだ。
「またね」
そう言って少女はまた橋の下へと小走りで駆けて行った。
「またね...か」
お母さんがいるとは言っていたが、あの身なりを見ると、やはり何かの事情があるのでは無いかと思ってしまった。
次の日も、そのまた次の日も、少女は幸太に声をかけた。その度に、
「今日も1人なの?」
と少女は聞き続けていた。
そんなある日、幸太は思い切って聞いてみた。
「君は、本当にお母さんがいるの?」
少女は、一瞬戸惑った様な顔をしてから、口を開いた。
「うん。だって、お母さんは言ったの。あの橋の下で待ってれば迎えに来るからって。だから、お母さんが迎えに来るまであそこからどこにも行っちゃいけませんよって」
背中に氷を入れられた様な悪寒が走った。まさか、そんな訳はない。そう思っていた幸太の嫌な予感は、的中した。
「...いつから?」
「んとね、10日くらい」
「食べ物は」
「通りすがりのおじちゃんがくれたの。最近は来なくて、お腹空いてきちゃった」
どうする。どうする。どうする。こういう時は、とりあえず警察だよな。そう思いつき、幸太は早速警察に電話をかけた。
『はい。こちら〇〇県警です。どうされましたか?』
「あ、あの、捨て子がいまして。保護して頂けないかと」
『...近年、税金が増加しており、捨て子や孤児が急激に急増しています。実際に、こちらでも身寄りのない子供を多数預かっており、これ以上は厳しい環境にあります。最寄りの大きな病院で検査を受け、今後について話して下さい』
「そうなんですか...。じゃあ、一度病院で検査をという事ですね」
『はい。申し訳ありません。警察の方も最近、その手の通報が急増しておりまして...』
「分かりました」
幸太は電話を切り、少女に向かった。
「君、名前は?」
「
「苗字は分かる?」
「分かんない」
「そっか。えっと、ちょっと言いにくいんだけどね、未来ちゃんのお母さんはもう...」
そう言いかけた所で、未来は言った。
「知ってる」
「え?」
「お母さん、もう来ないんだよね」
そして少女は、衝撃の過去を話し始めた。
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