第26話自由

学校についても神谷から話しかけられない。

学校だけなら俺らは先週から喋ってないのでクラスメイトは誰も気にしていない。

どちらかと言えば今までがおかしかったのだろう。俺もそう思う。


「おいアイバ、もう神谷さんを脅すのはやめたか」


それでも俺と神谷のことを気にしてるやつはいるようで蓮くんが話しかけてきた。

何こいつ、初っ端から失礼な奴だな。

こういうやつは無視に限る。

そもそも俺が神谷脅してないってのも信じないようなやつと話しても時間の無駄。

俺の話聞かないのになんで俺に話しかけてきたんだ?


「前と変わってないよ」


俺に話しかけていたはずなのに神谷が答えるから俺は頭を抱えそうになる。

やめて、なんでそんな言い方すんの?

言ってることは合ってるんだけどな。

神谷から絡んできて俺が嫌がるってのは変わってない。

けどその言い方だと絶対勘違いされんだろ。

こいつは俺が脅してるって思ってんだから普通に脅してないでいいだろ。


もうこいつらのこと無視しようと決め机に突っ伏して寝ることにした。




 × × ×




神谷が話しかけてこない久しぶりの自由を手に入れたはずなのに危うく初っ端から手放すことになるとこだった。

だが俺は無視をすることで逃げ切ることができた。

どんな会話になってるかなんて知らん。

何か問題が起きてても気にしない、そんときはそんときの俺が対処しているだろう。

任せたぞ、未来の俺よ。


という風に今を優雅に過ごしている俺だが、ちょっと待ってほしい。

今週はどうやっても神谷と接触しなければならない日があることを覚えているだろうか。

そう、木曜日、図書委員。

もしかしたら先生や委員長がいるかもしれないがあまり期待はできないだろう。


この機会を神谷がみすみす手放すだろうか。

ないな、さすがにない。

この機会逃したら次は三週間後、いやゴールデンウィークあるから一か月後か。

さらにはほぼ二人きりの状況、それが我慢できるなら今までだって我慢できているはずだろう。

どうせなんやかんやで話しかけてきて図書委員だったからねとかなんとか言って言い逃れもしくはうやむやにしようとするはず。

今までの行動からしてそうだろう。


最近神谷の言動がわかってきたようだけどこれは信頼関係によるものだろうか。

いや、これが信頼関係なわけないか。

俺は神谷を信用しているわけじゃない。

嘘と疑念だらけだしそもそも信用じゃなくただの予想でしかない。


いかんいかん。

神谷のことばっか考えてどうする。

せっかく神谷と話してないのに神谷のことばっか考えてるんじゃ結局神谷といるのと変わらない。

神谷を追い出すんだ。

俺は神谷に興味ないなんてない。


とりあえずこれも未来の俺に任せよう。

もう俺は何も考えない。

一人の時間を大事にするんだ。

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