第25話連絡先

神谷とゴールデンウィークの約束をしてからそれが正しかったのか考え、わけもわからずベッドの上をゴロゴロする日曜日を過ごしてしまった。

あー、俺のゴールデンウィークがー。楽しみだったのになー。


月曜の朝になり今日から今月は神谷が話してこないことになっているので気が楽だがその後には苦痛が待っている。

楽あれば苦ありとはこのことか。

なんで俺嫌なこと後回しにしたんだろ。


そんなことを考えながらマンションを出るとかなり不機嫌そうな神谷が待っていた。

なんでそんな怒ってんだ?

というかなんで待ってんの?

話しかけないんじゃないの?

え、もしかして話しかけなかったら一緒に登校はオーケーとか?


「なんで起こしてくれなかったの!」


何のことだ。

俺が朝こいつを起こしに行くってことか?

あるわけないだろ。

そもそもお前が先に待ってんだからお前の方が先に起きてんじゃねーの?


「遊園地の帰りの電車!」


あ、あれのこと?

話しかけられないと思って気にせず放置したんだよな。

元から俺が起こすとは思えないしそれで寝てたこいつが悪くない?

一般的に考えたら起こすのが正しいだろうが俺らはそんな関係じゃない。

裏切られること経験したら俺の考え理解してもう関わってこないかと思ったけどそうはならないか。

関わられたくないからやったけど裏切るのってそんなやりたいことじゃないんだよな。


まぁ今日から話しかけられないって約束だから俺じゃないやつに言ってるんだろう。

え、それ本人目の前にしての陰口みたいなもんじゃん。

普通そんなことするか?と思って文句を言いたくなったがそれをしては元も子もない。

無視をすることに決めた。


「おかげで余計お金かかったんだから!」


元から俺にご飯奢るつもりだったんだから別に問題ないだろ。

そんなこと気にしないくらい稼いでんじゃないの?


「ちゃんと聞いてる?」


俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。

これはやっぱり俺に言ってるんだろうか。

流石にそろそろ反応しないとウザい。

このまま学校はほんとウザい。


「……話しかけないんじゃなかったのか?」

「まだ学校じゃないよ?」


話しかけなければオーケーとかではなく学校じゃないからオーケーでした、予想の斜め上です。

いや、ダメだろ。

そんな約束じゃないだろ。


「今日は学校だ。話しかけるな」

「んー、まぁそれでいいけど。目的はそれじゃないだよ」


は? 目的?

話しかけることじゃないのか?

電車で起こさなかったことの文句じゃないのか?


「ゴールデンウィークの予定話さなきゃいけないし、どうせまた約束忘れるんだから連絡先交換しとこ」


連絡先か、俺の連絡先には長期休暇の度に連絡をするための父親の連絡先しか入っていない。

そこに神谷を入れるのか。

はっ、なんでそんなことしなきゃならん。

そんなことしたらいつでも神谷から絡み放題じゃねぇか。

どうせ「今起きた」とか「今から寝る」みたいなクソつまんねぇこと送ってくんだろ。

聞きたくもねぇわ。


「それはやめろ。ちゃんと約束守るから」

「……ふーん、まぁそれでいいよ。ダメだったら絶対交換してもらうから」


マジかー、絶対忘れられん。

まだ約束のことなんも知らんけど決意だけはしっかりと固まった。

神谷との連絡先交換とかマジ地獄しか見える気しねぇ。


「じゃあこのまま一緒に行こっか」

「いや、先行って。つーか話しかけんな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る