第24話代償

お化け屋敷での脱走作戦が失敗に終わり俺は再度神谷に連れ回される。


散々連れ回されて俺の体力がなくなってきた。

インドア派にはこれは辛い。

神谷の体力は無尽蔵なのか?と感じるほど平然としておりかなり楽しそうだ。

役者の仕事って疲れるからやっぱこんだけ動くのも慣れてんのか?


俺がそろそろ休憩したいと思っていると丁度お土産売り場を見かける。

なのでそこでお土産見ながら休もうと考え立ち寄る。


あー、お土産売り場でも人そこそこいるな。

休憩できるかわかんねーな。

あれ? 神谷いないな。

少し周りを見回してみたが見当たらない。


なんでかわからんけど神谷から離れることができた。

これは人が多かろうが休憩になる。

なんならこのまま時間潰せば一人で帰れるんじゃないか?


とりあえず適当にお土産を見ながら休憩をして時間を潰すことにした。

お菓子にぬいぐるみ、ストラップか。

明日の休みのためにお菓子でも買っとくか?


そう考えてるときだった、背後から声をかけられたのは。


「相馬くん、勝手にどっか行かない!」


もちろん声をかけてきたのは店員さんとかではなく神谷である。

いや、どこがもちろんなんだろうか。

話しかけられるなら神谷より店員さんの方がいい。

まぁ店員さんに話しかけられるのも苦手なんだけど。


(ソウマはまた一人でどっか行くんだから。探すのも大変なんだよ)


神谷の怒った声を聞いたかと思えば今度何度か聞いた女の子の呆れたような声だった。

またってのもよくわからんけど別に探さなくていいです。一人にさせてください。

と、よくわからん声に反応してると神谷からも呆れた声が聞こえる。


「全く、もう子どもじゃないだよ?」


それぐらいわかってる。

なんならお前より大人な自信がある。


「子どもみたいにはしゃぐやつに連れ回されたからな、休憩しようかと」

「まだ高校生でしょ」


なにその高校生でしょって。

高校生って疲れないの?

というか高校生って大人?子ども?

子どもだったら神谷の発言矛盾だよ。

俺高校生で子どもってことになるからね。


「もうお土産でも買って帰らね?」

「そんな帰りたいの?」

「帰りたい」

「じゃあ最後に観覧車でも乗って」

「いやいい。もう帰る」

「もう……」

 

俺がさっさと帰ろうと歩いていると神谷も一緒に帰るようだ。

いや、お前は別にまだ遊んでてもいいよ。

俺だけ帰るのでいいから。

なんで一緒に帰るの?


と、そんなことを考えていても駅まで一緒に歩いている。

一緒の電車乗るのはいいけど別の車両乗れよ。

そんで痴漢でもされて明日の新聞の一面でも飾ってろ。


電車に乗ると運良く人がそれほど多くなく座席が空いている。

俺が座ることにすると神谷も当然のように隣に座ってくる。

ですよね、なんとなく予想出来てました。


「ね、相馬くん。ゴールデンウィークって空いてる?」


電車が進み出すと神谷が聞いてきた。

この前はこんな感じのをちゃんと聞いてなかったから今日こんな目にあったんだよな。

だが今回は聞いている。

大丈夫、これを断ればいいんだ。


「空いてない」

「ほんとに?」

「ほんとほんと」


疑ってそうな目でこっちを見てくる。

んー、信頼ないのか?

まぁ嘘というか神谷のための日は空いてないってことだから疑われてもおかしくはないか。


「じゃあゴールデンウィーク会ってくれるならほとんど学校では話さないであげる」


学校で話しかけられない、これはとても魅力的な提案だ。

それはいつも望んでいたこと、喉から手が出るほど欲しかったもの。

けれどやはりそれを手に入れるには何らかの代償が必要なようだ。

今回の代償はゴールデンウィーク。


果たしてどちらが俺にとっていい結果になるのか。

つーか学校で話さないのできるならいつもしないでくれよ。

俺の望みは学校も休日も一人になることなんだよ。


なんとなくだが、この選択肢を出した時点で神谷にはもう譲る気はないのだと思う。

神谷が珍しく俺の意見を聞き入れようとした結果がこれなんだろうな。

ここで俺がどっちも話しかけるなって言ってどっちも話しかけられたら本末転倒だよな。

いや、言いたいけども。


なら、ここで考えるべきはどちらが俺にとって有益か。

ゴールデンウィークまでは今から二週間程。

つまりゴールデンウィークを選べば日程の少ないが休日ということで何をさせられるかわからない。

学校を選べば日程が多くさらにクラスメイトなどの目がある。神谷がどこで話しかけてくるかわからない。

どっちだ、どっちがいいんだ。


「ゴールデンウィークでいい」


俺はクラスメイトの前だと今後の生活にも支障をきたすと考え断腸の思いでゴールデンウィークを選んだ。

神谷にされることも今日みたいなことだろう。


「わかった」


そう言い神谷は俺の肩に頭を乗せてきた。

そんなことまで許したつもりは全くないんだが。


「おい、離れろ」


もう既に寝ているようで揺すっても起きない。

……はぁ、こいつ遊園地ではしゃいでたときも思ったけどこどもか。

俺は神谷から離れ神谷を座席に横にする。

そして目的の駅に着いたので神谷を放置して一人帰るのだった。

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