第18話呼出
神谷の行動に目を光らせてたのだが神谷が何かアクションを起こすことはなかった。
落ち込んでるのが直るわけでもなく逆にそれずっとしてて疲れない?と心配しそうになる。
それが狙いなんだろうな。
本気で落ち込んでる可能性もあるんだが俺の予想である話しかけさせようとしているというのが当たっている気がする。
そうなんだとしたら心配しそうになっているのが神谷の思惑通りということになる。
だが俺はまだ話しかけていない、これは神谷の作戦が失敗したことを意味する。
けどこんだけ神谷のこと気にしてたら失敗とも言えないかもな。
神谷に注目していると今日の学校はあっさりと終わる。
誰とも関わってないからとても楽に感じる。
さあ、帰ってこの休日は何して一人を謳歌しようかと考えているとお呼びがかかった。
「相馬、ちょっといいか」
SHRを終えた菅谷先生だ。
何の用だ? この人の話いいことあったかな?
とりあえず呼ばれてしまったので先生の方に向かう。
「なんですか?」
先生は荷物をまとめている。
先生が呼んだのに何やってんですか。
「ここじゃなんだ、職員室でいいか?」
「いいですけど」
生徒と話すのにここじゃダメってなんなの?
職員室呼ぶとか生徒萎縮しちゃうよ。
俺なんかやらかしました?
いいと言ったけど本音はついていきたくない。
それでも昨日先生のこと頼っちゃったからなぁ。
だからこれは仕方ない、恩返しなのだ。
恩返しって言っても神谷についてこられてたからあんま恩感じないけど。
なんで頼っちゃったんだろうか、昨日の俺。
というか、今歩きながら話すのダメなんですか?
仲よさげに話してないと周りから叱られた悪い奴みたいに見えない?
そんなことを考えると職員室にたどり着く。
菅谷先生はさっさと入っていく。
俺あんま呼び出しとかないから職員室入り慣れてないんだけど。
なんで置いてくんですかね、一緒に入れば先生に連れてこられたってわかるのに。
あ、俺が立ち止ったせいか。
菅谷先生を待たせるわけにもいかないので中に入ることにする。
「失礼しまーす」
ちゃんと挨拶しとかないとな、俺礼儀正しい生徒だから。
あれ? 先生どこだ?
キョロキョロすると机に向かって座っているのを見つける。
入ってすぐキョロキョロして挙動不審って思われてないよな?
先生のところにたどり着き話し始めるのを待つ。
俺から話すと話したいって思われるからな。
や、さっさと話して早く帰りたいわ。
「で、何の用ですか?」
少し不愛想に感じるだろうが菅谷先生は気にしていないようだ。
「今日なんかあったか?」
はい、主語がないので聞きたいことが全然伝わりませんでした。
数学の先生って国語できなくていいんだっけ?
まさか会話が長引くようにわざとしてるんじゃなかろうか。
そんなに俺と話したいんですか。
俺は早く帰りたい。
冗談はその辺にしてしっかり話進めないとな。
「何のことですか?」
「神谷のことだ」
んー、わかるようでわからない。
やっぱり言葉足らずだな。
神谷のことってなんだろう。
あいつ色々やらかしてたからなぁ。
はっ、まさか神谷に対する俺の愚痴?
なわけないか。
「詳しくお願いします」
はっきり物申せ会話進まねえだろ、って感じだけど一応先生だから仕方なくへりくだって聞いている。
聞きたくもない話になんでこんな態度しなきゃならんのだ。
「今日落ち込んでるようだったことについてだ」
あー、それね。
そんなこと気にするなんて生徒思いですね。
「……俺に聞かれても」
あいつの考えなんて俺にはわからない。
心配なら神谷に直接聞けばいい。
先生も女優として特別扱いしちゃう人?
「お前が一番わかってそうだと思ったんだけどな」
「それはないですね」
神谷のことを一番わかっているのは当然神谷だろう。
本人よりもわかるわけがない。
「それなら相馬にはもう用ないな、帰っていいぞ」
そう言うともう仕事を始める。
え、それだけのことで呼び出されたの?
しかも終わったらこの扱いですか。
まぁ無駄な会話しないのはいいんですけどね。
それじゃあお言葉に甘えて帰らせて頂きます。
そうして職員室を出ていく。
結局これも神谷のせいで起きた面倒事だな。
いつ解放されるかと不安になったが来週への期待からすぐにこれが最後だろうと考え学校から帰る。
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