第16話拒絶
弁当を食べ終わり俺が人と関わらない理由について話し始めることになった。
「俺が誰とも仲良くならない理由は人は簡単に他人を裏切るからだ」
「どういうこと?」
「なにか優れたものを持ってるやつとかが持て囃されるがそいつがそれを失ったらパッと手のひら返すように見限るってことだ。例えば神谷が女優じゃなくなった場合のあいつらの態度想像すればわかる」
「あー、なんとなくわかった。今は女優だから話しかけてきてるけどそれがなくなったら私の人気が一気になくなるってことでしょ?」
そう、神谷は女優だからクラス全員が近づいてきている。
そして女優である神谷と仲良くしてるように見える俺に妬みやらの視線が来たり口撃をしてきたりするのだ。
だが、これは神谷が女優というステータスを持っているから起きていることだ。
そのステータスを失えばあいつらの興味をひくことがなくなるわけだ。
つまりは今までと対応が変わり近づいてくることがほとんどなくなるだろう。
まぁ神谷はそれでも美少女っていうステータスがあるからあんま変わらん可能性もあるんだが、それを話すとややこしくなりそうだから黙っておこう。
「そういうことだ。これで満足出来たか?」
「んー、気になったんだけどそれっていつから?」
いつからとか気にしなくてよくない?
それ知って神谷はどうすんだろうか。
「小学生の途中だけど?」
「……じゃあやっぱりあの頃から」
何か小さな声で呟いてるようだが俺には何を言ってるのか聞こえない。
「なんて?」
「あ、えっと、その頃の友達に裏切られたの?」
友達いた前提で話してるな、今いないのに。
その頃のことは思い出したくもないがどうしても記憶に残ってしまう俺の人生を変えたであろう親の離婚に関係する記憶ばかりを思い出してしまい他のことはあまり思い出せなくなっている。
当時誰かと仲がよかったのか、どんなことをしていたのかなどそういったことを忘れているから神谷の質問に対する答えも俺にはわからない。
いたとしても今更関係のない話だろうから気にして思い出そうとしてもいなかった。
「わからん。子供の頃のことだから覚えてない」
「え、覚えてないの?」
隣に座っていた神谷が驚き声を上げ上半身だけで近づいてきた。
近い、ちょっと上目遣いで覗きこまないで。
それ絶対わざとだろ。
別に覚えてなくたっておかしくないだろ。
小学生の頃のことなんてほとんどのやつが忘れてるだろうに。
「覚えてないから離れろ」
そう言っても神谷は離れないでいる。
というか睨んでいるように感じるんだけど。
睨まれるくらいなら上目遣いの方がいいです。
なんで睨まれてるんだろうか。
そんな強くは睨まれてないけど、なんか怒ってる雰囲気あるな。
覚えてたらその過去の問題解決すれば友達にってことか?
俺は今のままで困ってないから解決しようと思わないし解決しても神谷と友達になるとは限らないんだけどな。
「覚えるほどのこともなかったってこと?」
「まぁそうかもな」
覚えてないから実際にそうなのかはわからないので聞かれても困る。
だが覚えてないということは言ってることが本当なのかもしれない。
「じゃあ相馬くんは昔も友達いなかったんだ……」
なんで悲しみと哀れみが含まれたような言い方なんだろうか。
俺は別にそれでもいいんだけど。
友達いないのってそんなダメなの?
「友達ほしいって思わないの?」
「思わない」
「いたかもしれないのに?」
さっきいなかったって言われたばっかなんだけど。
いたとしても今まで会ってないのに会いたいと思うものだろうか。
俺にそんな友達がいたと思うか?
「思い出すために私が友達っぽい演技いっぱいしてあげるよ」
いないでいいと思うんだけど。
それは俺の考えで神谷からすればダメなようだ。
「思い出す必要ないからやらなくていい。つーかやるな」
こいつの場合拒否っても勝手にしてくるんだろう。
今までがそうだしな。
この提案今まで演技とそんな大差ないよな。
「さっそく何しよっか」
やっぱ聞いてくれない。
こんな嫌がってんのになんでこんな絡んでくるんだろうか。
友達いないやつがほっとけないタイプ?
「やっぱり友達なら放課後寄り道とか?」
それ演技関係ある?
ただ遊びたいだけじゃない?
俺そんなのには付き合いたくないんだけど。
「俺は行かないからな」
「えー、相馬くん来ないと意味ないよ」
「それでも俺は行かない」
「じゃあ今日のところは一緒に帰るだけでいいよ」
「……は?」
え、なんで決定事項みたいに言ってんの?
遊び行かないのに帰るのはいいなんて俺が言うわけないだろ。
「昨日約束したじゃん」
そんな約束してないけど。
昨日は一緒に帰ったけどそれだけで毎日ってなるのはおかしい。
俺が抗議の視線を神谷に送る。
「今日は木曜日。図書委員のある曜日」
「だから?」
「はぁ……相馬くん記憶力ないの? 昨日帰る前に図書委員のあるときとかはいいって言ってくれたでしょ」
あー、それは言っちゃってたけど今日関係なくない?
もしかして、とかってそういうこと?
「……それで木曜は毎回ってことじゃないよな?」
「そうだけど?」
そうだけど?ってこいつ頭おかしいだろ。
完全に騙してるのに仲良くなれると思ってんのかよ。
そう考え俺が神谷を跳ね除けようとしたとき
(ソウマは私と帰りたくないの?)
なんだこの声。少し寂しそうな女の子の声だった。
神谷が喋ったのかと思い見てみると先程までと変わらず何を当たり前のことを聞いてくるのかと不思議そうにしていた。
神谷の声ではないのか。
じゃあいったい誰なんだ。
ここには今俺と神谷しかいないはず。
深く考えそうになったが今の問題は神谷だ。
神谷は俺を騙してたわけだ。
そんな奴と関わっていこうなど思うわけがない。
「神谷、俺はお前とは帰らない。もう話しかけてくるな」
神谷の態度にもイラついたが謎の声の内容が神谷の気持ちを代弁しているようで余計に低い声で冷たく言い放った。
八つ当たりのようにもなったが、まぁいいだろう。
実際神谷にはこれくらいすべきなんだろう。
それだけ言って俺はその場から立ち去る。
神谷は追ってこない。
あれだけ強く言ったのだからそうなってもらわないと困る。
そうして歩きながらふと思い出す。
あ、弁当置いてきた。
一応作ってくれたわけだから洗って返すべきだよな。
でもなー、さっきあんな態度したからなー。
どうしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます