3

〇培養室

培養槽に入れられるサーシャ、中に青い液体が溜まっていく。

サーシャ「ごめんなさい、許して。いい子になるから」

力なく呟くサーシャ。

液体が満杯になり、意識を失うサーシャ。

部屋を出ていくRAT。

xxx

イゴールが入ってきて、スイッチを操作する。

培養槽の底が開き、サーシャが流されてゆく。


〇ゴミ集積所

汚水とともに流されてくるサーシャ。

辺りはゴミとヘドロの山になっている。

泥まみれになり立ち上がるサーシャ。

よたよたと歩いてゆく。

xxx

アンドレイが鼻歌を歌いながらやってくる。

倒れているサーシャにつまづくアンドレイ。

アンドレイ「いてっ、なんだこの・・・ひぇっ」

泥だらけのサーシャを見て驚くアンドレイ。

アンドレイ「泥人形!」

腰が抜けるアンドレイ。

サーシャ「う・・・う・・・」

アンドレイ「生きてる!!」

アンドレイ、汚水を組んでサーシャの泥を落とす。

アンドレイ「あら、綺麗なお顔」

サーシャ「あ・・・あ・・・」

アンドレイ「ひどいな、身体がボロボロだ・・・どうしよう」

サーシャ「ひとりに・・・しないで・・・」

アンドレイを弱弱しく掴むサーシャ。

アンドレイ、サーシャを抱き上げる。

アンドレイ「駄目だ、放っておけない」


〇アンドレイの部屋

アンドレイ「ただいま」

アンドレイがサーシャを抱いて入って来る。

1DKの部屋には色々なガラクタやおもちゃが置かれている。

サーシャを椅子に座らせるアンドレイ。

アンドレイ「今拭いてあげるからね」

濡れたタオルでサーシャを拭くアンドレイ。

アンドレイ「よし、綺麗になった」

サーシャをベッドに寝かせるアンドレイ。

アンドレイ「あちこちボロボロだ、でも治りかけてる傷もある。自己修復機能があるなんて、珍しいな」

サーシャを観察するアンドレイ、サーシャに掴まれていることに気付く。

アンドレイ、サーシャの頭をポンポンと撫でる。

アンドレイ「よしよし、どこへも行かないよ」

そっと椅子をひきよせて、サーシャの傍に座るアンドレイ。

アンドレイ「誰かに必要とされるなんて、いつぶりだろう」

安心したように眠るサーシャ。

xxx

目を覚ますサーシャ。

傍にアンドレイが居る。

サーシャ、起き上がろうとする。

アンドレイ「動いちゃ駄目だよ、酷い怪我なんだ」

サーシャ、取り乱して。

サーシャ「ここはどこ?帰らなきゃ」

アンドレイ「後で連れて行ってあげるから、とりあえず落ち着いて」

サーシャ「マザーが怒っているんだ、早く帰らないと」

無理に起き上がろうとするサーシャ、足が動かず転んでしまう。

アンドレイ「マザー?君はマザーのところに居たのかい?」

サーシャ「僕が役に立たないから、マザーが怒っちゃったんだ」

うずくまるサーシャ。

サーシャ「どうしたらいいの?帰りたい・・・」

アンドレイ「とりあえず傷を治そう、その後謝りに行こう。オイラがマザーに知らせてあげるよ。きっと今頃心配してるよ」

サーシャをベッドに寝かせるアンドレイ。

苦しそうに目を閉じているサーシャ。

アンドレイ「とは言ったものの、捨てられた身であるオイラにはマザーに連絡する手段が無い・・・」

アンドレイ、歩き出す。

アンドレイ「考えてても仕方ない。危険だけど行ってみようか」

xxx

装備を整え、部屋を出ていくアンドレイ。


〇ゴミ山

歩くアンドレイ。


〇バンカー・外観

高いコンクリートの壁に囲まれた、ゴミ山の中にそびえ立つ要塞のような建物。

見上げるアンドレイ。

アンドレイ「ふええ・・・いつ来ても恐ろしいな」

入口を探してうろうろするアンドレイ。

そこに、ぎょろぎょろとした目玉に羽虫のような羽をつけたドローン(以下、羽虫)が飛んでくる。

羽虫に囲まれるアンドレイ。


アンドレイ「あの・・・オイラ、男の子をここで見つけて、マザーに知らせに来たんだ」

羽虫、金属をこすり合わせたようなけたたましい音を立てる。

アンドレい「うわー!頭が!爆発する!!」

息も絶え絶えによたよたと逃げるアンドレイ。


〇ゴミ山

トボトボと歩くアンドレイ。

アンドレイ「やっぱりオイラみたいな捨てられたロボットが近づくとああなっちゃうんだよな・・・」


〇アンドレイの部屋

ボロボロになったアンドレイが入って来る。

ベッドに横たわるサーシャ。

アンドレイ「ただいまー」

返事もせず、虚ろな目をしたサーシャ。

アンドレイ「今日はマザーに会えなかったよ、ごめんね」

反応しないサーシャ。

アンドレイ「きっとマザーも君を探しているよ。また行って来るから、待っててね」

椅子に座るアンドレイ。

F・O


〇同・アンドレイの部屋

アンドレイが入って来る、

さらにボロボロになっている。

アンドレイ「ただいま・・・」

荷物を降ろすアンドレイ。

アンドレイ「固形タンパク質を探してきたよ。君はバイオロイドだから、食べた方がいいよ」

サーシャに黄色いチーズのような塊を差し出すアンドレイ。反応しないサーシャ。

アンドレイ「食べたら早く治って、マザーに会えるよ」

反応しないサーシャ。

アンドレイ「駄目か・・・」

部屋を出ていくアンドレイ。

xxx

薄暗い部屋の中、サーシャが起き上がる。

ベッドや椅子につかまりながら、よろよろと歩き出す。

サーシャ「どこへ行ったの。ねえ、独りにしないで」

フラフラと部屋を出ていくサーシャ。


〇ゴミ山

フラフラと歩くサーシャ、羽虫が飛んでくる。

バランスを崩して転がり落ちるサーシャ、ゴミの影に汚れたアンドレイが潜んでいる、

アンドレイ「シー!」

ドローンはしばらく辺りを飛び回り、行ってしまう。

アンドレイ「大丈夫かい?フラフラじゃないか」

サーシャ「帰りたい・・・」

アンドレイ「中に入れそうな場所を見つけたんだ」

サーシャに肩をかして歩き出すアンドレイ。


〇バンカー・外壁

高い壁に小さな搬出口があり、掃除用多脚ロボット(以下、クモ)がゴミを外に運び出して、壁の穴に戻っていっている。

アンドレイ「あれに乗って中に入れるかもしれない」

近づくアンドレイ、クモが中に入るタイミングで、サーシャを乗せる。

驚いたクモ、サーシャの顔を確認すると大人しくなる。

アンドレイ「中に入れてやって、頼んだよ」

サーシャを乗せて中に入ってゆくクモ。

扉が閉まる。

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