第37話 海の家のラーメンはなぜか食べてしまう問題

 砂浜で、琴子の着替えを待つ。 


 水着に着替えた琴子が、更衣室から出てきた。


 オレンジのビキニ姿で、髪はポニーテールにしている。

 スク水の時から思っていたが、琴子はスタイルがいい。


「ん? 見とれちゃった?」

「まあな。それより行くぞ」

「つれないなぁ」


 脱力した琴子を連れて、砂浜にパラソルを立てる。


「じゃあ、泳いでくるねー」

「おう、気をつけてな」


 パラソルの下で、孝明はペットボトルのスポーツドリンクを飲む。


 泳ぎは得意ではないようだが、琴子の様子は楽しそうだ。


 孝明は、荷物番をしているわけではない。

 単に動きたくないだけった。

 手荷物はスマホと、首に提げているICカードだけ。


 一通り遊んだ琴子と共に、海の家へ。

 琴子はラーメン、孝明は焼きそばだ。



 海の家の経理は、民宿とも連動しているらしい。

 驚いたのは、キャッシュレスだったことだ。

 バスでも使ったパスカードで決済できるらしい。

 クレジットだけでなく、その場で支払い完了ができる。自動販売機も同様だ。



「おお、すごいね文明の利器」

 会計をしながら、琴子が感動していた。



「発言がオヤジ臭いな」



 店員にカード決済を徹底させた理由を聞いてみると、

「お札だと、海水やシャワーで濡れちゃうでしょ?」

 とのこと。

 繁忙期の小銭管理が面倒とも言っていた。


 ICカードなら、首などに提げておけば肌身離さず持ち歩ける。

 財布管理の必要もない。貴重品の盗難対策か。

 なるほど、合理的である。


「海の家のラーメンって、おいしいよね」

「何の効果なんだろうな」


 焼きそばも悪くない。


 琴子が、辺りをキョロキョロしている。




「なんか、カップルばっかりだね」



 よく見ると、男女二人連れが多い。

 その次にいるのは、家族連れか。



「気にするな。オレらには関係ない」

「そうだね。あたしたちも、何かカップルっぽいことする?」

「例えば?」


 やるとは言わず、ひとまず聞いてみる。

 きっとろくでもないことだろうけど。


「ああいうのが、あるんだけど」


 二人で飲むタイプのメロンソーダを指さす。ストローがハートになっている。


「炭酸だから、意外と腹にたまるぞ。結局男が全部飲むハメになるんだよ」

「誰情報よ、それ?」

「建一」

「ああ。この間の人」


 昔付き合っていた彼女と、建一は無理をして飲んでいたそうだ。

 酒好きなので、甘いものが苦手なのに。


 その後も、孝明と琴子は色々な話をした。


 だが、孝明には聞けないことがある。 




 琴子は、海外での話を一切しない。





「そういえばさ、あたし、学校でコメくん見たよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る