第二章 JKと幼なじみ人妻教師

第17話 かき氷は何味が好きか問題

 スク水を着た琴子ことこが、店内にいた。



「コトコト、なにやってんのオマエ?」

 孝明こうめいは傘の水気を切り、畳む。


「あのね、今日からプール開きだったの! でも台風で学校休みに!」

「だから着てるってワケか?」


「へへーん」

 見せびらかすように、琴子はクルクルと回ってみせる。


 こうしてみると、琴子のスタイルの良さが際立っていた。

 名札に隠れているが、Cカップはあるだろう。

 着痩せするタイプだったか。

 新型スクール水着という格好も背徳的である。

 だからといって、相手は琴子だ。

 中高生ならまだしも、いい大人が見ても、ちっとも興奮しない。

 室内でスクール水着というシチュエーションも、バカっぽさを強調しているだけ。


「コメくん、今すっごい失礼なことを考えていませんか!?」

「いんや」

「バカみたいって思ってたでしょ!」

「それは思ってた」

「んもー!」


 プンプンと、琴子がマンガのように怒り出す。

 


「コメくんも、お仕事休みなの?」

「そうだよ」


 窓の外では、いつ止むとも知れない雨が、扉を叩いていた。


 今日は台風が来るという。

 逸れるという予報だが、電車が止まっている。



「有休消化も兼ねて、休みを取るように」と社長の若菜から言われた。

 ムダに出社させて、帰れなくなると問題が起きるそうだ。

 家から出てここまで来たら、会社から連絡が入ったのである。




 ふってわいた休日。朝だけしか、ココで食べられないだろう。



「でも、暑いからこのカッコウがちょうどいいや。おじさーん」


「はいはい」

 面倒くさそうに、大将がデザート皿をドンと置く。


 皿に盛られているのは、真っ赤な氷の山だ。


「わーい。いっただっきまーす」

 シャクッといい音を鳴らしながら、琴子がかき氷の山を崩していく。


「かき氷か。いいな。大将、オレも」

「はいはい。味は?」

「みぞれ」


 琴子がガクッとなった。

「もっと色を楽しもうよー。色を」


「いいんだよ、オレはみぞれが好きなの」


 ガッカリしたような表情を見せると、急に琴子の表情がハッとなる。

「ねえねえコメくん知ってた? かき氷のシロップって、イチゴ以外は全部、同じ味なんだって」


「うん、知ってる。ちなみにイチゴも同じだ」


「えーまじで?」


「知らなかったのかよ」


 視覚と嗅覚で、味を誤作動させているらしい。


 同じ味だと公言しているメーカーだっている。

 味覚センサーを研究開発している会社が、実際に検証したくらいだ。


「だから、ちょっと一口ってのはナシな」


「えーっ」

 もう既に、琴子のデザートスプーンは、みぞれに迫ろうとしていた。


「味は一緒なんだから、もう一杯頼めばいいだろうが」

「もー。コメくんからもらうから、いいんじゃーん」

「餌付けじゃねーんだから。自分のを食えよ」


「はーい」

 あきらめたのか、琴子が渋い顔で、赤い山を攻略し始める。


「ごちそうさま! さてと、お腹も膨れたし、外に出てみよっと」

 スク水姿のまま、琴子ははしゃぎ出す。


 今は早朝で誰も見ていない。

 かといって油断は禁物だ。 

 けれども、いやらしい視線は感じなかった。


 雨に濡れたまま、琴子はクルクルと回る。

 クツに水が入るのも忘れて、楽しそうに。


 孝明がもう少し若ければ、琴子に合わせて踊っただろうか?

 いや、無理だ。孝明は学生の頃から、陽気な女性は苦手だった。

 琴子だから付き合えるが、他の女性ならどうだったか。



「さてと。楽しんだし帰ろ……あーっ!」

「どうした?」

「パンツ忘れた」

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