なしひとへのお題は『離れないで、離さないで・君の存在が苦しい・解けたリボン』です。
傷跡がなくとも強い痛みを感じる。
僕はその想像における痛みを、すでにそこにあるものとして強く感じることができる。
それは君を失う痛みだ。
かつて、僕を傷付けられるものはこの世界に一つたりともなかった。
身体的な痛みはただの神経発火だ。
精神的な痛みはただの社会慣習だ。
しかし君を失う痛みは、僕自身の大きな部分を失う痛みに他ならない。
それは想像すらできないほどの喪失だ。
たとえばそれは輪郭のない顔だ。たとえばそれは尾のない蛇だ。
僕はその痛みをこれ以上ないほどに恐れる。君を失えば、僕は心臓の動かし方すらすっかり忘れてしまうに違いない。
そうなのだ。誰にも欠けさせられることのない完璧で無垢で純粋だった僕は、いま失われようとしているのだ。
だからこそ僕は、君をひどく嫌うのだ。
僕に触れないで欲しい。僕に微笑みかけないで欲しい。
僕の内側に染み込まないで欲しい。僕の表面に根を張らないで欲しい。
世界でただ一人、君だけが僕をこんなにも傷付ける。
あぁしかし、どうか願いが叶うなら。
君が死んだそのとき、僕は君の硬い亡骸に咲く最初の花でありたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます