なしひとの書く小説のお題は、『夕方』『親友』『虚構世界』です。

 親友は虚構だった。

 虚構だったというのはつまり、徹頭徹尾そうだったということで。

 名前は文字化けで、たしか譁 ュ怜喧縺 とかそんな感じ。年齢は虚数。顔には終始死にチャンネルのノイズがかかっていて、声はボイスチェンジャーがかかっていた。

 詳しく話を聞いてみたことはないけど、じつは彼女らこそ虚構世界からの侵略者だったのだ。

 とは、彼女らが撤退したあとに判明した事実だ。

 撤退。すでに彼女らは、例外なくこの世界から去ってしまっていた。

 結局侵略を諦めたのか、現実世界のヒーロー戦隊にやられたのか、あるいは実家の内戦がのっぴきならなくなったのかは知らないけれど。

 まぁ、それはともかく。

 一昨日くらいのことだったと思う。あるいは半年前。そのへんの情報にも破壊工作が行われていて、正確な日付はわからない。

 ともかく今日より以前のある日。夕方の屋上に一人呼び出された僕は、彼女と向き合わされて。

 さよなら、と。

 そう別れを告げられた。

 2日経って(あるいは半年経って)思うことには。

 彼女らにとっての現実というものはどういう重さを持ったものだったのだろうか、と。

 もしそれは僕らにとっての夢のような位置づけだとしたら。

 そんな世界のたかが一人物にすぎない僕のために、わざわざ別れを告げてくれたことが、僕はたまらなく嬉しかったり。

 寂しかったり。

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