お仕立て セレモニードレス その1

お姉ちゃんとカイさんが王都に旅立つ少し前。騎士団の方々が到着した。


けど、なんだか様子がおかしくて、詰所から出てこない。


よって私への話も来なくて、私はのんびり店で繕い物していたんだけど、お客様が新たに来てくれたの。


忙しいわね、本当に。




「えっと…採寸シマス…」


恐る恐る私は手をとる。げんこつ握った小さな手がビクッと動くので、私も思わずそーっと手を離す。


いっこうに進まない様子を見て、お客様のお母様はクスクス笑っていた。


「多少泣いても大丈夫ですよ。それにこの子良く寝るの」


今回のオーダーは生まれたばかりの赤ちゃんのお披露目着。


すみません、私請け負ったことがないのがバレバレですね。毎回お姉ちゃんにお任せしてましたぁ!


いや、歩き出すくらいはお相手出来るのよ?


これは、新生児。壊れそうで怖い!


そろそろしながら、途中結局赤ちゃん泣かせちゃってお母様にあやしてもらいながら、なんとか採寸を終えた。頭なんて小さいよ、35センチくらいしか頭囲ないのよ。


メモに書き留めつつ、お母様にだっこされて寝てくれた赤ちゃんを見やった。


「お披露目着、どのようなモチーフにしますか?」


「そうねえ…」


お母様は赤ちゃんのおしり近くをポンポンしながら、少し辺りを歩く。あやすときにこうすると赤ちゃんが落ち着くんだそうだ。


「この子ね、次男なんだけど、長男も家族みんなで仲良く元気に暮らせますように、って思いを込めてもらえる?」


「…もちろんです。赤ちゃんも家族みんなで過ごしたいですもんね」


うん、お父さんもお母さんもかつてはそう思ってたはず…もう前の事だし、そのときは小さかったから思い至らなかったけど。


「お気持ち、お洋服にしっかり込めさせていただきますね!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ステータスはお洋服で決まります 髙邑洋史 @gloria176

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ